マレーシアのデジタルトランスフォーメーション
コロナウイルス感染症の大流行から、世界的にデジタルトランスフォーメーションが進んでいる。東南アジアもその例外ではない。Facebook社とベイン・アンド・カンパニーは、’Digital Consumers of Tomorrow, Here Today’(明日のデジタル消費者は今日ここにいる)と題した調査結果を発表した。
この調査では、デジタル経済の急速な加速と、それが東南アジアの電子商取引の将来にどのように影響するかを調べている。インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの東南アジア6カ国の約16,500人のデジタル消費者と20人近くのCEOを調査している。
マレーシアのデジタルトランスフォーメーション
著者:gram 福田 さやか
公開日:2020年09月30日
3億1,000万人のデジタル消費者がさらに増加の見込み
それによれば、東南アジアでは、現時点で3億1,000万人のデジタル消費者(eコマースで定期的に買い物をしている人)がいるが、これが2020年末までに数百万人規模で増加すると予想している。2019年の調査「Riding the Digital Wave」において2025年に到達すると見込まれていた数字であるとのことだが、コロナ禍でデジタル化が加速した形である。これにより、東南アジア主要6カ国の消費者の70%近くが、今年中にデジタル化することになる。
調査によると、マレーシアは15歳以上の人口の83%がデジタル消費者であり、割合が6カ国の中で最も高いという。そのうち48%が、過去1年間に主にオンラインでの購入に切り替えている。
東南アジアのオンライン支出は5年後には3倍に
マレーシアのオンライン小売総商品売上高(GMV)は、2025年までに40億米ドルから約90億米ドルへ倍増すると予想されている。多くのマレーシア人はオンラインで購入するだけでなく、より多くのカテゴリーで購入するようになっている。2020年には平均5つのカテゴリーで購入しているという。
東南アジアのデジタル消費者の数は指数関数的に増加しており、今後、オンライン支出は2025年までに3倍に増加し、1,500億ドル近くに達すると予想されている。
マレーシアは、Huaweiのグローバル・コネクティビティ・インデックスで、東南アジアで2番目にデジタル化が進んだ国とされている。マレーシアの銀行や電子商取引の分野は、香港、中国、シンガポールを抜いて、アジアで最も発展している国の一つとなっており、現在、デジタル経済はマレーシア経済の5分の1を占め、その価値は2700億リンギットを超えている。
加速するマレーシアのデジタル化
このようなデジタル化は政府のイニシアチブで更に加速されそうである。
首相が2020年8月29日発表したJalinan Digital Negara (Jendela)と呼ばれるイニシアチブは、第5世代(5G)移動通信システムへの移行に向けたデジタルインフラ整備計画である。政府はこの計画を次期5カ年計画「第12次マレーシア計画(12MP)」(2021~25年)に基づくデジタル通信網構築事業の行動計画と位置付けている。
首相は、「モバイルブロードバンドネットワークの速度は25Mbpsから35Mbpsに引き上げられ、750万の施設がギガビットの固定ブロードバンドアクセスを得ることになる。これには、5Gのプラットフォームとして4Gを設置するために、2021年までの段階的な3Gネットワークの終了も含まれる。」と述べている。 マレーシアでは、他国と同様に都市部と地方のデジタルデバイドも拡大していたが、このJendalaでは東マレーシア、特にサバ州とサラワク州でより多くのデジタルインフラのアップグレードが行われる計画であり、このデジタルデバイドが縮小することが期待される。