マレーシア新車販売:5月に前月比33%増、好調の背景を探る

マレーシア

マレーシア新車市場の活況が続く背景には、国内メーカーの力強い存在が。5月の販売台数は前年同月比22.9%増で、2023年通年も期待される成長。また、マレーシア自動車産業の歴史と国民車プロジェクトの影響も明らかに。
そこで今回は、国内メーカーを中心に自動車の新車販売が好調なマレーシアの自動車産業について解説します。

マレーシア 5月の新車販売 前月比33%増加  

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2023年8月10日

販売が好調な国産メーカー2社

5月の販売台数は前年同月比でも22.9%増、2023年の新車販売総数(1月から5月)は30万978台となり、前年同期比で12.3%増を記録。また、1月から5月までの国内の生産台数は30万4484台で、前年同期比で18%増とも発表されました。

マレーシア自動車協会は「この新車販売の好調は、滞留していた注残を履行したこと、新モデルが発売されて予約がふえたことによる」と評価し、「国産メーカー2社の好調な販売が、新車販売台数の急激な増加に大きく起因している」と述べています。

さらに協会は「国内の経済環境が現在は堅調に推移しているため、2023年6月の新車販売台数も引き続き増加する」との見通しを示しています。

2023年通年では微減の見通し

2022年のマレーシア国内の新車販売台数は過去最高の72万658台となり、前年比で41.6%増を記録しています。

コロナ禍が終了して消費者の需要が回復し、あわせてサプライチェーンの寸断も緩和されたことや、売上税の免税措置の終了に伴う駆け込み需要が好調の原因として指摘されています。

2023年は売上税の免税措置期間が終了することの影響を受け、さらに、世界経済の減速や原材料の不足が継続することなどから販売台数は微減の見通しで、前年比約1割減の65万台に落ち込むと予測されます。

産業構造

マレーシアは、近年ではGDPに占める工業の割合は低下傾向にあり、製造業は23%、サービス業が55%を占め主力産業となっています。第一次産業(農林業)中心から第二次産業(製造業)中心の経済へと移行して経済発展を支え、既にサービス業中心の第三次産業が中心の経済に移行しています。

製造業の中でも自動車産業は主力産業であり続け、GDPの10%近くを占めています。

国民車プロジェクト

マレーシアでは、1980年代、当時のマハティール首相が「国民車プロジェクト」を提唱して、日本の三菱自動車と技術提携することにより「プロトン社」を立ち上げ、1985年から三菱自動車のランサーをベースとした国民車「プロトン・サガ」の生産を開始しました。その後「プロドゥア社」を設立し、さらに自動車産業を育成していくために輸入車の関税を200%に設定し、競争力を高めることを目指しました。

このプロジェクトによりマレーシアは自動車の組立地から生産者へと変容し、自動車産業の発展は関連産業の成長を加速させ、その他の産業の技術の発展にも貢献していきます。

マレーシアの一大産業に

その後ホンダやトヨタ、日産などの日本企業や、メルセデスベンツやBMWといった世界有数の自動車企業がマレーシアに工場を持ち、現在ではローカル、日系、外資を合わせて主要14社が操業しています。

「地域自動車産業のリーダーに」

アンワル首相は、2023年5月のプロトン40周年記念祝賀会で「マレーシアは地域の自動車産業のリーダーになる可能性がある」と述べ、現在プロトンの株式の49.9%を所有する中国の自動車メーカー「吉利」などからの外国投資を受けて、地域のハブに発展させる計画を進行中であると発表しました。

さらに、世界的に激化する競争に対応するため、国内自動車産業の国家施策「NAP(The National Automotive Policy)」を発表しました。

マレーシアをエネルギー効率の良い自動車のハブ化することで、自動車産業を強化されるだけでなく、環境保護やローカル企業に新しい経済機会の創出につながることが期待されています。

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