マレーシアとシンガポール 経済特区設立で合意 

マレーシア

マレーシアとシンガポールの両国の政府は、2024年1月に両国が覚書に調印した「ジョホール・シンガポール特別経済特区(JS-SEZ)」の設立で合意しました。
この経済特区の面積は約3,500キロ平方メートル、シンガポールの約5倍の広さとなり、中国・深圳地域のほぼ倍の大きさです。

今回はこの経済特区の合意に至るまでの背景や経緯、そして今後への期待について深掘りします。

マレーシアとシンガポール 経済特区設立で合意  

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年5月8日

国境を越えた経済特区への投資誘致

マレーシアのアンワル首相とシンガポールのウォン首相が、マレーシアのプトラジャヤで行われた首脳会議で合意文書に調印して交換しました。
両国はこの国境を越える経済圏への投資の誘致と、ヒトやモノの移動を円滑化することを目指します。
この経済特区にはイスカンダルの開発地域も含まれていて、マレーシアにとっては懸案の「フォレストシティ金融特区」もカバーされます。

2万人の雇用創出

この経済特区は、5年以内に50件の付加価値の高いプロジェクトを達成し、2万人の熟練者の雇用を創出することを目指します。さらに、以下の点でジョホールとシンガポールの相互補完的な強みを活用の予定です。

  ・国境を越えた物品の移動の円滑化
  ・人々の自由な移動を推進
  ・地域内のビジネスエコシステムを強化

そしてシンガポールおよびその他の国から、11の経済分野への投資を促進します。

両国関係の背景

シンガポールが1965年にマレーシアから独立して以来、両国は地理的、そして経済的に密接な関係を築いてきました。
シンガポールはマレーシアにとって第2位の貿易相手国であり、2023年にはマレーシアの直接投資額の23.2%を占め、トップの投資国となっています。
また、マレーシアはシンガポールの第3位の貿易相手国であり、ジョホール州はシンガポール企業にとって重要な投資先でもあります。

経済特区の規模と可能性

この経済特区は、ジョホール州南部の6つの自治体、9つの「フラグシップ・エリア」を対象としています。
特区内では、以下の「11の経済セクター」への投資誘致が計画されています。

 ・製造業
 ・物流
 ・食料安全保障
 ・観光
 ・エネルギー
 ・デジタル経済
 ・グリーン経済
 ・金融
 ・ビジネスサービス
 ・教育
 ・医療

特に、データセンター関連の投資が増加しており、2023年にはデジタル投資が605億リンギット(約2兆1,560億円)と、2021年と比べて17.8倍に拡大しています。

アジア地域への影響

この経済特区の設立は、東南アジア地域における経済活動の活性化に寄与すると期待されています。特に、シンガポールの資本と技術力、ジョホールの土地や労働力、エネルギー資源を組み合わせることで、AIやテクノロジー分野の製造などへの投資を引き付けることが可能になると期待されています。

両国の期待感

マレーシアとシンガポールの両政府は、この経済特区を通じて経済的な相互利益を追求する計画です。特区内の企業には、税制での優遇措置(特別法人税率や、知識労働者への特別所得税率)などが提供される予定です。
アンワル首相はこの取り組みを「国際的にもユニークな取り組み」と評価し、ウォン首相も「双方の強みを生かし、経済特区を競争力ある魅力的な活動の場にできる」と期待感を表しています。

今後の展望

この経済特区の設立は、グローバルなサプライチェーンの多様化や貿易の不確実性に対処するためのモデルケースとなる、と期待されています。 経済特区の設立は両国の経済的な結びつきを強化し、地域全体の発展に寄与する重要なプロジェクトとして位置付けられ、今後の進展が期待されています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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