マレーシア 東南アジアの観光ランキングでトップに

マレーシア

コロナ禍を経て、観光の風景が大きく変わりつつある今。

マレーシアが東南アジアで最も多くの観光客を迎えた国として注目を集めています。

2025年の第1四半期には、実に1,010万人以上の外国人旅行者がマレーシアを訪れました。

今回は、その背景と意味を深掘りしてみましょう。

マレーシア 東南アジアの観光ランキングでトップに   

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年 9月18日

観光大国タイを抜いて1位に

ベトナムの英字メディア VnExpress Internationalの報道によると、マレーシアは第1四半期に1,010万人の外国人観光客を受け入れ、長年観光王国として知られてきたタイを抜いて、東南アジアのトップに立ちました。

以下は各国の観光客数の比較です:

国名観光客数
マレーシア1,010万人
タイ955万人
ベトナム600万人
シンガポール431万人

この結果は一過性のブームではなく、戦略的な取り組みの成果といえるかもしれません。

(引用:ベトナムの英字メディア VnExpress International https://e.vnexpress.net/news/travel/why-malaysia-beats-thailand-to-become-southeast-asia-s-tourism-champion-4905467.html

なぜマレーシアが1位に躍り出たのか?

マレーシアが東南アジアの観光市場で突出した理由はいくつかあります。

1. ビザ緩和の積極展開
中国人観光客に対するビザ免除、インド人観光客へのビザフリー制度の拡大が、大きな呼び水となりました。この柔軟な対応が、観光復興の追い風となっています。

2. 近隣諸国からの強い支持
特にシンガポールからの訪問者は490万人超と圧倒的。続いて中国から112万人、インドネシアから108万人と、周辺アジア諸国からの訪問が目立ちます。

近距離で手軽に行ける上、文化的にも馴染みやすい点が、リピーター獲得にもつながっているようです。

3. インフラ整備と情報発信の強化
空港の拡張や観光地の整備といったハード面に加えて、デジタルマーケティングを駆使して”多様なマレーシア体験”の発信を強化しており、都市、自然、食、文化、多民族共存など他国にはない“幅広さ”が評価されています。

観光業はマレーシアにとってどんな存在か

観光業は、マレーシアの経済と社会を支える“静かなる主役”とも言える存在です。

2024年には、観光業が国内総生産(GDP)に占める割合は約10.5%に達し、2034年には12.1%にとさらに拡大する見込みです。

2023年の観光収入は1072億リンギ(約3兆6,000億円)と、前年から26.3%もの増加を記録。これは製造業や石油関連に次ぐ主要産業としての地位を確立しつつあることを示しています。

また、観光業が支える雇用は約240万人にのぼり、これはマレーシア全体の労働人口の約15%を占めます。都市部はもちろん、地方でもサービス業や交通、小規模な飲食・宿泊業など、多くの人々の生活を支えています。

成長をけん引する新しい分野

近年ではマレーシアならではの強みを活かした観光分野も存在感を増しています。

たとえば、医療ツーリズム。高水準の医療を先進国よりもリーズナブルに受けられるという理由から、アジアや中東の富裕層に人気が高まっています。

また、世界的に注目されているのがムスリム・フレンドリー観光です。ハラル対応や礼拝施設の整備など、イスラム教徒が安心して旅行できる環境づくりに早くから取り組んできたマレーシアは、この分野で世界でもトップレベルの評価を得ています。

一方で課題も

観光資源の多くがクアラルンプールやペナンなどの都市部に集中している一方で、サバ州やサラワク州といったボルネオ地域では観光開発が遅れています。

観光客の急増に伴う環境負荷や地域住民との摩擦も、今後の課題として見逃せません。

こうした地域格差をどう是正し、持続可能な形で観光を育てていくかが、これからの焦点となります。

成長エンジンとしての観光業

マレーシアにとって観光業は、単なる稼ぐ手段ではなく、国の文化を世界に伝え、人と人をつなぎ、地域を元気にする力をもった“成長エンジン”です。

これまで以上に重要になるのは、”数を追う観光”から”質と持続可能性を重視する観光”への転換です。

稼ぎながら、自然や文化を守る。このバランスが、マレーシアの観光業が次のステージへ進むための鍵になるでしょう。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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