2時間ごとに1人が交通事故で死亡   マレーシア

マレーシア

マレーシア政府の交通渋滞と道路安全に関する内閣委員会は、国民の交通安全への意識を高めるために、昨年から毎日事故統計を公開し始めました。

この統計によると、マレーシアでは1時間56分に1人が交通事故で命を落としていることになります。

今回は、マレーシアの交通事情について詳しく解説していきます。

2時間ごとに1人が交通事故で死亡   マレーシア

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年7月21日

50秒ごとに交通事故

マレーシアの交通事故による死亡率は、まさに「憂慮すべき」という言葉がぴったりです。

2024年3月から今年3月までの1年間の公式統計によると、交通事故で1時間56分に1人が命を落としていて、さらに憂慮すべきことに、約50秒に1回交通事故が発生しています。

ハリラヤの前に事故が急増

昨年事故件数が最も多かった上位の3日は、いずれもハリラヤの1週間前であり、4月5日に2,185件、4月4日は2,160件、4月6日には2,156件となっています。

ハリラヤの期間中の事故件数は一時的に減少しましたが、ハリラヤ後には再び急増し、4日後の4月15日には2,146件の事故が報告されています。

月曜日に交通事故が最も多い

事故件数が最も多い曜日は月曜日で1,803件、次いで金曜日(1,802件)、火曜日(1,796件)となっています。一方、日曜日の平均事故件数は1,451件で最少でした。

しかし、交通事故による死亡者数に関しては、日曜日と土曜日が最も多く、それぞれ1日平均15人が死亡しています。

マレーシアの交通事情

マレーシアは、東南アジアでも有数の車社会です。

車社会の根本原因は、都市計画と公共交通の未整備にあります。特にクアラルンプールやセランゴール州などの都市圏では、自家用車が移動手段の主流となっています。

一家に数台の車を保有する家庭も多く、渋滞・排気ガス・事故のリスクを高める要因ともなっています。

マレーシアの自動車保有率は1,000人あたり約450台(日本は約610台)と、東南アジアでも比較的高水準です。

また、バイク(モーターバイクやスクーター)は庶民の足として広く浸透しています。安価で機動力があり、都市部の渋滞でもすり抜けが可能という利点がある一方、安全意識の低さ、特にヘルメットの未着用やスピード違反などが事故の温床になっています。

バイク事故による死者は全体の60%以上を占めていて、社会問題にもなっています。

道路設計の脆弱性

マレーシアの交通事情としては、道路の設計がスピード重視で、歩行者やバイクに対する配慮が乏しい設計が多いことがあげられます。

都市郊外や田舎では、照明が暗かったり、信号が少なかったり、横断歩道が整備されていなかったり、ガードレールがないといった問題が顕在化しています。

一部地域では道路の陥没や舗装のひび割れなども深刻で、これもバイクを中心に交通事故の一因となっています。

渋滞と違法駐車

首都圏では渋滞と違法駐車による慢性的な渋滞が社会問題になっています。

特に朝夕の通勤ラッシュ、祝日前後の帰省による大移動の時には、高速道路が完全に止まることも普通となっています。

違法駐車も多く、路肩にずらっと車が停まっている光景は日常的になっています。

世界3位の交通事故死亡率

マレーシアの交通事情は、車社会であること、公共交通の未発達さ、道路インフラの課題、そして運転マナーの問題などが複合的に絡み合っています。

死亡事故の多さは世界的にも深刻で、現状では世界3位の事故死亡率です。

政府は複数の施策を打ち出していますが、交通文化全体の変革が必要でまだまだ時間がかかると見られています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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