銀行口座の代わりにもなる!?フィリピンの電子決済サービス「Gcash(ジーキャッシュ)」

フィリピン

銀行口座の保有者数が成人全体の56%と少ないフィリピン。そんな中、身の回りの金融関連のお世話をしてくれる電子決済アプリ「Gcash」が登場。少額から貯金可能な銀行口座代わりの役割を果たすほか、クレジットカード機能、投資、ローン貸与、求人情報の確認などが利用できるアプリです。日本でも「PayPay」加盟店であれば利用可能な本アプリについて、どういった機能が利用できるのか、そして日本で導入した際のフィリピン人需要を得られる可能性についてご紹介します。

銀行口座の代わりにもなる!?フィリピンの電子決済サービス「Gcash(ジーキャッシュ)」

   著者:フィリピンgramフェロー たこ坊
公開日:2023年 10月30日

「Gcash」とは?

フィリピンの大手通信会社「Globe Fintech Innovations, Inc.」が運営する電子決済サービスで、日本でいう「LINE Pay」や「PayPay」のようなものです。本サービスの運営には中国のAlibaba Groupも携わっており、海外決済サービス「Alipay+」のパートナー電子決済サービスとなっています。

2023年5月時点で、「GCash」 のアクティブユーザー数は約8,100万人、ビジネスに導入している加盟店や個人事業主の数は250万以上となっています。フィリピン国内の人口の約80%が利用しており、日本で最もユーザー数の多い「PayPay」利用者数(6000万人)よりも多いことから、国内浸透率の高さが伺えます。

(引用元:ABS-CBN NEWS :GCash urged to explain glitch in order to regain public trust
https://news.abs-cbn.com/video/business/05/10/23/gcash-urged-to-explain-glitch-to-regain-public-trust

(引用元:Philstar :GCash monthly gross transactions hit P300 billion
https://www.philstar.com/business/2021/08/19/2120923/gcash-monthly-gross-transactions-hit-p300-billion

(引用元:PayPay :PayPayが実施した主な取り組みと、それに伴う主要指標の推移について(2023年度上期)

PayPayが実施した主な取り組みと、それに伴う主要指標の推移について(2023年度上期)

フィリピン生活4年目の筆者にとっては、すでに無くてはならないツールのひとつとなっています。

決済関連はすべてこれひとつで解決するので、とても助かっています。

ただ、通信状況の不安定さやシステムの不具合が多発するなど、インフラが整っていないフィリピンならではの課題も多々あります。いざ「Gcash」で決済しようと思ったら、システムダウンで使用不可ということもあるため、現金も併せて持ち歩く必要があります。ネットワークまわりのインフラが整えば、より一層快適なツールとなるでしょう。

「Gcash」の便利な機能

実際にどういった機能が利用できるのでしょうか。
筆者が利用するサービスを中心に、便利な機能を抜粋してご紹介します。

・クレジットカード
「Gcash」アプリ内でアメリカンエキスプレスの電子カードを発行できます。

また、物理的なカードとして250ペソ支払うことでMastercardブランドのデビットカードを入手することができます。余計な審査や手続きなど必要なくクレジットカード・デビットカードを手に入るので、使用の有無に関わらず所有している人は多いです。

・銀行口座
フィリピンでは銀行口座を開設すると、口座維持費として数千~数万ペソを常時預けておく必要があります。しかし、その口座維持費さえ用意できないという方が多いのも事実。多くのフィリピン人は銀行口座に預ける必要があるほどの十分な資産を保有していないので、口座を持つ人は少ないです(成人のうち56%)。「Gcash」は少額から貯金が可能な銀行口座代わりにもなっています。

「Gcash」カード(デビットカード)があれば、ATMで「Gcash」残高から直接お金を引き下ろすことが可能です。手数料の相場は15~18ペソ(約40~50円)。数百ペソ程度の取引でも可能なため、多くのフィリピン人ユーザーから重宝されています。また、上記の仕組みを利用してビジネスにしている方も多々いらっしゃいます。

手持ちの現金がないので、「Gcash」から今すぐ引き下ろしたい、という方向けの両替商です。サリサリストアというフィリピンのローカル店(コンビニの小さいバージョン)でよく見かけますが、手数料は出金額1000ペソにつき15ペソとなり、ATMを探すのが面倒な場合や交通費がかかってしまう場合にはこちらを利用される方が多いです。

(引用元:Philstar :Filipino adults with bank accounts jump to 56%
https://www.philstar.com/business/2022/08/24/2204606/filipino-adults-bank-accounts-jump-56

(引用元:Bangko Sentral ng Pilipinas :FINANCIAL INCLUSION SURVEY 2019(PDF)
https://www.bsp.gov.ph/Inclusive%20Finance/Financial%20Inclusion%20Reports%20and%20Publications/2019/2019FISToplineReport.pdf

・投資(仮想通貨・株式売買)
仮想通貨の売買・送金、フィリピン株の取引も可能です。2023年11月現在では未対応ですが、世界の株式取引の準備もすでに行われています。人口の約80%が利用するアプリ上で手軽に投資ができるため、フィリピン国内全体の賃金が上昇するにつれ投資家人口も一気に増加していきそうです。

・求人情報
フィリピン国内の求人情報を確認することも可能です。また、求人に自身で応募するだけではなく、他人に求人を紹介することで成約時に紹介料がもらえるという就職エージェントのようなお小遣い稼ぎサービスも提供しています。フィリピンでは横のつながりがとても広いので、家族や親戚、近隣住民などに求人を紹介して小遣い稼ぎ、というのは彼らにとって収入を得る手段のひとつとなるでしょう。

・ローン
最大125,000ペソ(約336,000円)のローンを借りることが可能です。金利は貸付金額や返済能力によって異なり、月利1.59%~6.57%となります。フィリピン国内にはBombay 5-6というインド人による有名な金融業が存在しています。ただし、彼らは高利貸しとして知られ、月利はなんと20%。一般的なフィリピン人は、よほど追い込まれた状況でない限り借りる人はいないでしょう。

フィリピンでは拳銃の所有が許可されています。よほど追い込まれた人間がどういった精神状況かを考えれば想定するのも易いと思いますが、「金貸しインド人射殺」というニュースをよく見かけます。フィリピン国内での金貸し業は諸刃の剣ともいえますね。

このような事情から、国民の約80%が使用するアプリ「Gcash」上でローンが借りれるのであればユーザーからの信用・信頼も高く、また「Gcash」側としても特定の人物が担当するわけではないので狙われることもなく、平和に収めることができるわけです。

日本でも利用可能

ここまで見てきたように、フィリピン国内で重宝されている電子決済アプリ「Gcash」ですが、実は日本でも使うことができます。日本最大の電子決済サービス「PayPay」およびフィリピン最大の電子決済サービス「Gcash」、どちらもAlibaba Groupが提供する海外電子決済サービス「Alipay+」と連携しているので、日本の「PayPay」加盟店に訪れた際には、「PayPay」のQRコードを通して「Gcash」決済が可能です。

(引用元:PayPay :新たに3カ国4つの海外キャッシュレス決済サービスと連携。「Alipay+」経由で延べ10億人以上が利用可能に!
https://about.paypay.ne.jp/pr/20230615/01/

日本国内に滞在するフィリピン人の数は約30万人。

OFWと呼ばれるフィリピン人海外就労者は、故郷の家族へ毎月欠かさず送金を行っています。そんな送金の際にも利用されているのがこちらの「Gcash」。つまり、フィリピンからの訪日観光客だけではなく、すでに日本在住のフィリピン人たちも「Gcash」を利用する機会があります。

(引用元:出入国在留管理庁 :令和4年末現在における在留外国人数について
https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00033.html

フィリピンからの訪日観光客数はコロナ禍前の2019年が過去最大で61万3,114人。

日本国内で「Gcash」を導入することで、訪日観光客および日本在住者で合計100万人近くのフィリピン人をターゲットとすることが可能です。

2023年11月には岸田首相がフィリピンを訪問し、お互いの国への観光を促進するため、観光に関する協定を締結しました。今後は更に日本とフィリピンとの関係が深まり、観光客の増加も見込めるのではないかと予測できます。

(引用元:訪日ラボ :データでわかる訪日フィリピン人観光客
https://honichi.com/visitors/asia/philippines/data/#:~:text=%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E5%89%8D%E3%81%AE2019%E5%B9%B4,%E3%81%A7%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82)

(引用元:Department of Tourism(フィリピン政府観光省) :Philippines, Japan ink deal on tourism cooperation
https://beta.tourism.gov.ph/news_and_updates/philippines-japan-ink-deal-on-tourism-cooperation/

まとめ

フィリピン最大の電子決済サービス「Gcash」の利便性、日本で導入した際の更なるフィリピン人需要の獲得可能性についてご紹介しました。現在ではまだ解決すべき課題が多いものの、インフラがしっかりと整備されれば、フィリピン人の金融環境を変換させる一大サービスとなること間違いなしです。

平均年齢が24歳と若く、今後の人口増加も見込めるフィリピン市場をターゲットに、将来の約束された需要に向けて今から準備しておくのはいかがでしょうか。

今後のビジネスの参考になりましたら幸いです。

たこ坊

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フィリピン在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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