シンガポール   世界のトップのAI都市に 

シンガポール

2025年8月、リサーチ機関Counterpoint Researchが発表した「Global AI Cities Index」において、シンガポールが世界のトップAI都市に選ばれました。

この調査は世界各国の主要100都市を対象に、AIの導入や活用の実態を評価したものであり、シンガポールが技術面・制度面の両方で高い水準にあることが改めて浮き彫りとなりました。本稿では、シンガポールがなぜAI先進都市とされるのか、その背景や今後の展望を掘り下げていきます。

(引用元:Singapore Named World’s Top AI City in Counterpoint Research’s 2025 AI City Index
https://www.counterpointresearch.com/insight/singapore-named-worlds-top-ai-city-in-counterpoint-researchs-2025-ai-city-index/#:~:text=Singapore%20Named%20World’s%20Top%20AI%20City%20in%20Counterpoint%20Research’s%202025%20AI%20City%20Index,-0&text=Singapore%20ranked%20first%20globally%20in,out%20the%20top%20five%20cities.

シンガポール   世界のトップのAI都市に  

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2025年 9月24日

官民一体で進めるAI戦略

シンガポールが評価された最大の要因は、政府と民間企業、そして教育機関が一体となってAIの活用を進めている点です。AIを特定の産業にとどまらせず、都市全体の仕組みとして捉えているところに特徴があります。通信インフラや教育制度、起業支援の枠組みまでが連動して整備されており、それぞれがAIの成長を後押しする構造になっています。

国家戦略としての取り組み

この取り組みの中核にあるのが、「AI Singapore(AISG)」という国家プロジェクトです。政府が主導して設立したこの機関は、大学や民間企業と連携しながら、産学協働による研究や社会実装を進めています。また、「スマートネーション構想」では、交通や医療、行政サービス、都市インフラにAIを横断的に導入し、日常生活のあらゆる場面でAIが活用される都市づくりが進められています。

シンガポールならではの強み

都市国家であるシンガポールは、国土や人口規模が小さい分、政策決定や実行が非常に迅速です。この“機動力”は、AIのような変化の早い分野では大きなアドバンテージになります。また、技術開発だけにとどまらず、実際のサービスとしてどう展開するか、「社会への実装」に力を入れている点も特筆すべきところで、今回のランキングでも高評価につながりました。

人材・研究・起業のエコシステム

教育と人材の面でも、シンガポールは国内外からAI人材を積極的に誘致し、大学や研究機関では高度な教育プログラムが整備されています。起業環境も整っており、AI関連のスタートアップが次々と誕生していて、国際的なイノベーション指数でも常に上位にランクインしており、持続可能な成長に向けた基盤が着実に築かれています。

他国との比較

東京は世界第7位にランクインしています。大阪や福岡なども評価はされているものの、シンガポールと比較すると、都市単位での統合的な戦略や導入のスピード感にやや差があると見られています。特に、行政の複雑さや制度的な制約が、実装を妨げる要因になっていることは否めません。

またマレーシアは現在のところランキング上位には入っていませんが、クアラルンプールを中心にICTインフラの整備やスタートアップ支援が進んでいます。とはいえ、AIを国家戦略としてどれだけ具体的に進めているかという点では、シンガポールとの差は依然大きいといえるでしょう。

これからの展望と広がり

今後、シンガポールはAI都市としての地位をさらに強固なものにしていくと考えられます。スタートアップの数や質が向上するだけでなく、MicrosoftやGoogleなどのグローバル企業との連携も一層深まるでしょう。データセンターや研究施設の拡充も進み、アジアのAIハブとしての役割がより明確になっていくはずです。

教育分野では、AIに特化したプログラムがさらに整備され、国内外からの人材が流入することで、より多様で高度なスキルを持つ労働市場が形成されていきます。

地域連携によるさらなる成長

さらに注目すべきは、ASEAN諸国を中心とした地域連携の可能性です。スマートシティの共同開発や、研究機関同士のネットワークづくりなどを通じて、シンガポールは地域全体のAI推進役となるポジションを築いていくでしょう。単独の成長にとどまらず、アジアのテクノロジー全体をけん引する存在としての役割が、これからますます重要になっていくことは間違いありません。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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