シンガポールチキンライス:国民的料理が危機!?

コロナ時代

日本の食卓でも人気のレシピ「シンガポールチキンライス」が、現地シンガポールにて危機的状況に。
パンデミックによる供給混乱と、ウクライナ戦争による飼料不足で飼料のコストが高騰しており、マレーシア国内での安定供給を強化するための措置により、マレーシアが6月1日から鶏肉の輸出をストップしました。
シンガポールは、鶏肉をマレーシアからの輸入に頼っているため、今後価格の高騰が避けられそうにない模様です。
そこで今回の記事では、シンガポールの鶏肉事情について解説します。

国民的料理「チキンライス」が危機 

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2022年6月日

マレーシアの鶏肉輸出禁止措置

マレーシアは6月1日以降、月間360万羽分の食用鶏肉の輸出を停止しました。
国内での供給と価格が安定するまでの措置としていますが、具体的な期限は現在のところ未定です。5月23日の閣議で決定し、イスマイル・サブリ首相が発表しました。
今回の禁輸措置は、国内の鶏肉の供給不足を解消するためのものです。

シンガポールの鶏肉事情

シンガポールは食料やエネルギーなどの大部分を輸入に頼っており、鶏肉はほぼ全てを輸入しています。政府機関によると、マレーシアからの輸入が34%、ブラジルが49%、米国が12%を占めています。 
ほとんどすべての輸入鶏肉は、シンガポールで屠殺され冷蔵される生きた鶏です。 
シンガポールは2021年、マレーシアから約73,000トンの鶏肉を輸入しています。これは、鶏肉供給量の3分の1以上です。
鶏肉はシンガポールで最も広く消費されている肉であり、2020年の一人当たりの消費量は36kgです。
 (出所:シンガポール食品庁 SFA)

鶏肉の価格高騰

鶏肉の価格はこの1ヵ月ですでに上昇しています。
今年4月の鶏肉(ホール)の平均価格は1kgあたりS$ 7.21で、3月の1kgあたりS$6.60から上昇しました。
手羽先の冷蔵価格も、3月の1kgあたりS$8.75から4月の1kgあたりS$9.45に上昇しています。
 (出所:シンガポール統計局のデータ)
シンガポールの鶏肉輸入業者は、マレーシアからの輸入ストップが鶏肉のさらなる価格上昇につながる可能性があると懸念し、冷蔵鶏肉のコストが最大30%上昇、鶏肉料理の価格が高騰する可能性があると予測しています。
そして、冷蔵や冷凍鶏肉といった代替供給源への転換を模索していると述べています。
ただ、通常生鶏肉の流通がほとんどなだけに、冷凍鶏肉との味・食感の違いといった品質についても心配しているようです。

政府アナウンス

シンガポール政府は、消費者に冷凍鶏肉やその他の代替肉への切り替えを促すとともに、新鮮な鶏肉の代替の生産地を模索しています。
5月26日、環境大臣のDesmond Tan氏は、マレーシアの鶏肉輸出禁止に先立ち、シンガポールには十分な供給があるので、冷凍鶏肉を買いだめしたり、買いすぎたりする必要はないと述べ、国民を安心させることを目指しました。
シンガポール最大のスーパーマーケットチェーンであるNTUCフェアプライスは、4ヵ月分の冷凍鶏肉を備蓄しており、さらに2ヵ月分の供給が「間もなく」行われると述べています。

国民食「チキンライス」への影響

海南鶏飯(ハイナンチキンライス)は、中国の海南島出身の人々が移住とともに伝えた料理といわれ、茹で鶏と、その茹で汁で調理したごはんを皿へ盛り付けた料理です。
マレーシアやシンガポールの庶民料理・屋台料理で、シンガポールの名物料理のひとつであり、国民のソウルフードでもあります。
スパイシーな料理の多いシンガポールで、チキンライスは辛くなく、子どもも食べやすいのでファミリーで食事するのにぴったりで人気料理です。
今回のマレーシアからの鶏肉の輸入禁止が、名物料理へも大きな影響を与えそうです。

次は魚?

世界的な食料価格の高騰で、マレーシアでの鶏肉の価格上昇は氷山の一角に過ぎません。
国内の魚の供給も70%減少し、過去2ヶ月間の天候不順も影響し、月の供給量は100万トンから約30万トンに減少しています。
生魚の輸入の多くをマレーシアに頼っているシンガポール。
鶏肉の次は魚では?と国民に不安が広がっています。


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