急速に少子高齢化が進むシンガポール

シンガポール

2022年9月に発表された「年次人口概要報告書(Population in Brief)」によると、シンガポールでは高齢化が急速に進んで、2012年には11.1%であった65歳以上の国民の割合が、2022年には18.4%に急上昇(2021年は17.6%)、2030 年までにシンガポール人の約4人に1 人、23.8% が65歳以上になると予想されています。

日本同様かそれ以上に少子高齢化が進み、社会問題化しているシンガポールについて解説します。

急速に少子高齢化が進むシンガポール   

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2023年4月8日

顕著な高齢化

日本や韓国などアジアで少子化に直面している国では、同様に高齢化の傾向が見られます。

シンガポール市民の年齢中央値は、2021年の6月から翌2022年6月の1年の間に42.5歳から42.8歳へ上昇しました。また、80歳以上の国民の数は2012年から70%以上増加し、13.2万人になり人口の3.7%を占めています。

シンガポールの65歳以上の市民人口の割合は2020年には17%と韓国の16%とほぼ同じで、日本の29%よりは低い数値でしたが、この数年で急速に高齢化が進んでいることを示しています。

歴史的に低い出生率

シンガポール市民の出生数は 2021 年には31,713人 で、前年の31,816 人からわずかに減少しました。居住者の合計特殊出生率は、2020 年には 1.1 という歴史的な最低値でしたが、2021 年の出生数は 1.12 とわずかに回復しました。

総人口はコロナ禍の影響で2年連続減少でしたが、2022年6 月には 564 万人に達し、過去 1 年間で 3.4% 増加しつつ、コロナのパンデミック前の2019年に記録された570万人をわずかに下回りました。わずかな人口増の理由は、コロナの徹底した安全対策と旅行制限の緩和によって、12 か月以上継続して海外に滞在していたシンガポール市民と永住者の帰国が増加し、外国人の労働許可証保持者の雇用も促進されたことにあります。

シンガポールの少子高齢化対策

日本同様かそれ以上に少子高齢化が深刻なシンガポールですが、様々な対策を講じています。

シンガポールは積極的に外資を誘致して経済成長を押し上げてきましたが、コロナ危機により事態は一変しました。多くの外国人人材がシンガポールを去り、それに伴い外国からの投資を含めた経済が縮小し、企業はリストラを余儀なくされました。

現在のシンガポールは、外国人人材を呼び戻すのではなく、自国民、その中でも40~50代のスキルアップに注力しています。政府も「スキルズフューチャー」と呼ばれるキャリアサポート制度を開始し、国民の生涯学習とスキル獲得の支援を目的に、スキルを生かした再就職をサポートしています。

2020年の高齢者の就業率は25.1%と、9年連続で前年に比べ上昇しており、年齢階級別では65~69歳は9年連続で上昇し2020年に49.6%、70歳以上は4年連続で上昇し2020年は17.7%となっています。働くシニアの増加が非常に顕著に表れています。

少子化対策としては子どもの出生時に現金給付される「ベビーボーナス制度」というものがあります。第1子、第2子は3,000シンガポールドル(約30万円)、第3子以降は6,000シンガポールドル(約60万円)が支給されます。

欠かせない移民

日本では外国人人材の受け入れには非常に高いハードルがありますが、シンガポールでは外国人の移民は継続的に行われており、人口に占める移民の比率も38%と世界的にみて高水準にあります。また政府も、移民が高齢化と出生率の低下が与える影響を緩和し、長期的な縮小を防ぐのに役立つと考え、「シンガポールに溶け込み、シンガポールに貢献することができ、シンガポールを故郷にすることに尽力する個人に、毎年新しい市民権を付与する」と移民政策を積極的に進めています。

一方、増え続ける外国人移民に対して、多くの学者や市民が大きな懸念を表明しています。

強力な政府のもと、小さな都市国家の壮大な社会的な実験はさらに続いていきます。

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