外資企業が最上位所得層の6割を雇用
シンガポール人材省(MOM)は先日、シンガポールの所得の上位10%以上の労働者の実に6割が外資企業によって雇用されていることを明らかにしました。
今やアジアでも群を抜いて高所得層が多いシンガポールですが、シンガポールの中でも格差が顕著になっています。
今回はこの記事を中心に、シンガポールの労働市場と経済構造について解説します。
外資企業が最上位所得層の6割を雇用
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年 1月18日
外資系企業が大きな役割
人材省が発表したデータによると、シンガポールの企業の約20%が外資系で、月間所得が12,500シンガポールドル(約141.5万円)を超え、所得の上位10%に入るシンガポールの現地労働者の非常に大きな割合(6割)を外資系企業が雇用しています。
あらためて、非常に特殊なシンガポールの労働経済構造が明らかとなりました。
労働力を外資企業が補完
人材省がこのような雇用の比率を公表するのは初めてのことですが、国民の間で地元住民の雇用の見通しについて不安が根強く残っているため今回発表されました。
またこのデータを公表することで、外資企業がシンガポールの地元住民の労働力の増加を補完していて、しかも労働者の大半を雇用している地元の中小企業向の事業を創出しているという事実を述べ、国民にとっても良い雇用を創出し、労働市場において非常に重要であることを強調しました。
失業率は減少傾向
直近(2024年6月)のシンガポール人の失業率は2.8%、居住者の失業率は2.7%、全体の失業率は2%でしたが、これは2024年3月の数字からいずれも減少しています。
2024年の上半期は国内の雇用が堅調だったため、国民の就労者数も外国人の就労者数も増加しています。さらに「ワーク・パミット」と呼ばれる低熟練外国人労働者向けのビザの保持者も113万8,200人に増加していることが(2023年12月は111万3,000人)明らかにされています。
就労者数は増加を維持
人材省は、経済成長に伴って就労者数は短期的には増加傾向を維持していくとの見通しを示しました。地元の労働者は、金融・保険サービスや情報通信などの専門的なサービス部門での雇用が増加すると予測しています。
一方、国民の労働への参加率がすでにかなり高いことから、就労者数の増加傾向は長期的には鈍化していくという見通しを示しています。
そのうえで「国民に良い雇用を創出するには、外国からの投資を誘致して、引き続き海外の人材を受け入れる必要がある」と強調しています。
非常に高い労働参加率
シンガポールの労働参加率は非常に高く、特に高齢者や女性が多いです。
しかし日本以上に少子高齢化が進んでいて人口の自然増加が鈍化しているので、国内の労働力だけでは現在同様の経済成長を維持するのが難しい状況です。
デジタル経済や高度な技術を要する産業が発展しており、これらの分野で必要とされるスキルや知識を持つ人材を国内だけで賄うことも困難になっています。
国民は複雑な反応
このような政府の政策に対して、シンガポール国民の反応は複雑です。
多くの国民は、外国人労働者の受け入れが経済的に必要であることは理解していますが、一部では地元住民の雇用機会を奪っているのではないかという懸念も存在しています。
特に高所得層の職が外国人に占められていることが、一部で反発を招いています。
バランスの良い政策
今後の見通しとしては、シンガポール政府は引き続き外国投資の誘致と、専門的で優秀な外国人人材受け入れを進めながら、現在も推し進めている地元住民のスキルアップや教育改革を通じて、国内労働者の競争力を高める施策も強化すると考えられます。
外国人労働者に対する規制を強化する動きが強まっており、バランスの取れた労働市場を目指すための政策がとられると予想されています。