家が買えない国シンガポール、それでも人が集まる理由

『シンガポールの住宅価格が高い』という話は、いまや前提条件のようなものです。
HDB(公営住宅)ですら簡単には手に入らず、民間コンドミニアムに至っては現実的ではないと感じる人も多いでしょう。賃貸にしても家賃は年々上がり、外国人にとっても決して住みやすい国とは言えなくなっています。シンガポールが住むには覚悟が要る国になったことは間違いないでしょう。
それでもなぜ人が集まってくるのか?今回はその謎に迫ろうと思います。
(引用元:Singapore million-dollar flat sales hit record in Q2, market data shows | Reuters
https://www.reuters.com/world/asia-pacific/singapore-million-dollar-flat-sales-hit-record-q2-market-data-shows-2025-08-13/)
家が買えない国シンガポール、それでも人が集まる理由
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年 03月02日
「家を持つ国」ではなく「都市を使う国」

シンガポールで12年暮らし、親戚も多く住んでいる私が強く感じているのは、家がシンガポールの人々の人生の中心に置かれていないということです。
生活の重心は常に街のそばにあります。食事はホーカー、移動はMRT。仕事も学びも出会いも、家の外にあります。家は生活の拠点ではあっても、人生の到達点ではないと感じています。
この国では持ち家かどうかが人生の成否を決める問いになりにくく、これは日本ともマレーシアとも、かなり異なる感覚です。
それでも人が集まる理由①――予測できる日常
シンガポールの魅力を一言で表すなら、私は”予測できること”だと思っています。
制度、ルール、治安、行政の動き。どれもが比較的読みやすく、極端な変更が少ないのが特徴と言えます。
確かに家は非常に高いです。それでも、明日が極端に変わってしまう不安が少ないと思える国です。この安心感は、住んで初めて実感するものだと思います。
それでも人が集まる理由②――永住しないという前提
もうひとつ印象的なのは、一生住むつもりはないと言い切る人の多さです。
3年、5年、10年と、期限を決めてこの国を選ぶ人が増えています。
そう考えると高い家賃は家そのものの対価ではなく、安全で効率的な都市を一定期間使うためのコスト、つまり都市の使用料とも言えるでしょう。住む場所というより、機能する環境を選んでいる感覚に近いのかもしれません。
マレーシアとの違い
一方、私が15年暮らしているマレーシアは、家が買いやすい国です。
広さも価格も選択肢は多いです。家=安心という感覚も、日本の家に対するイメージと近いでしょう。
ただしその分、制度や先行きの不確実さと向き合う場面もかなり頻繁にあります。
どちらが良い、悪いではありません。安心をどこに置くかが、国ごとに大きく違うのだと思います。
家を求める人と、時間を選ぶ人
シンガポールに集まる人たちは、必ずしも家を買いに来ているわけではありません。
多くの人はこの都市でどんな時間が過ごせるのかを確かめに来ているように思えます。
家が買えない国。
それでも人が集まる国。
それは決して矛盾ではなく、この国が家だけではなくあらゆることにおいて、所有よりも使い方を重視する場所だからなのだと思います。
シンガポールが人を引き寄せる本当の理由
シンガポールは住まいの豊かさを約束する国ではありません。
時間の密度や選択の明確さをわかりやすく提示する国です。
だからこの国を選ぶ人たちは、家を買いに来ているのではなく、いまの自分に合った生き方を、納得や満足度が高い暮らしを一定期間試しに来ている――そう感じるのです。
シンガポールは住まいの価値ではなく、時間の密度や選択の明確さで人を引き寄せる場所なのだと、私は感じています。





















