活況を呈するペット業界の経済成長は今後も好調予想

スペイン

COVID-19のパンデミックを機にペット所有者が世界的に急増し、空前のペットブームが訪れた。US bank Morgan Stanleyの調査によると2019-2022年の間に米国だけでペットを所有する人が少なくとも500万人増加、2030年までに更に14%増加すると予測されており、ヨーロッパも同様のパターンが見られるとされる。またペットの増加に伴いヨーロッパの獣医市場も急速に成長しており、最大の市場のひとつにスペインが挙げられている。本記事ではスペインを含むヨーロッパのペット業界の経済動向、特にアニマルヘルスの分野について詳しくみていく。

活況を呈するペット業界の経済成長は今後も好調予想

   著者:スペインgramフェロー 北田ミヤ
公開日:2024年1月10日

ペット所有者急増による社会の変化と取組

ビーチで遊ぶ犬たち

ペットはうつ病を緩和し、不安を軽減することで知られている。STAY HOMEが叫ばれたCOVID-19によるパンデミックで人々は動物に癒しを求め、世界的なペットブームが訪れた。

ここスペインでは子どもの出生率が年々低下している中、毎年ペットの数は増加し、過去5年で40%増加している。現在国内には1300万匹(うち1200万匹以上が犬)のペットが飼育されていて、スペインの家庭には子どもの2倍以上のペットがいることになる。筆者も愛犬と一緒にスペインへ移住したので、毎日の散歩でたくさんの犬連れの方々と出会う。地元の方の肌感覚でもここ数年で犬が急増しているそうだ。

ヨーロッパ全体でみても2020年に犬と猫の数のCAGR(Compound Annual Growth Rate=年平均成長率)が2倍以上と歴史的な増加をみせ、2022年にはペットフードの生産数が1178万tで世界1位となった(北米は1120万t)。

ペットの増加と共に高まりを見せているのが動物たちのQOL(Quolity Of Life=生活の質)向上に向けた取り組みである。

2023年9月から新しく施行されたスペインの動物福祉法ではペットを飼うには「responsible pet ownership course」(責任あるペット所有コース)の受講・証明書が必須となり、店頭での犬・猫の販売は禁じられた。他にも動物の保護を促進し、放棄を防ぎ、虐待を罰するなど、動物を初めて権利の対象として認識し尊厳を守る内容となっている。これまでペットに関するルールは地方自治体レベルで規制されていたため、これはスペインで可決された最初の法律となる。

(引用元:Exploring the Veterinary Industry In Europe https://www.eurodev.com/blog/veterinary-industry-in-europe-trends

(引用元:These are the 10 most important changes that Spain’s new animal welfare law will bring about from September onwards
https://www.surinenglish.com/spain/these-are-the-most-important-changes-that-20230822143759-nt.html

急速に成長するヨーロッパの獣医市場

近所の動物病院

過去2年でヨーロッパの物価は上昇、生活費が急騰している。にも関わらず、ペットフード・グッズ・サプリメントなど、ペットに関連する支出は大幅に増加していて、中でも獣医医療サービスの需要が高まっている。飼い主にとってペットの健康問題は最優先事項であり、自分自身の医療や健康診断よりもペットの医療を優先する人も少なくないという。

その証拠に獣医市場が急速に成長している。2023年現在、ヨーロッパには約3億4000万匹のペットがいて、その市場は3652億ユーロと評価されている。

予防接種や定期健診などを含む予防ケアも獣医医療分野でますます重要になっている。病気のリスクを下げ、ペットの健康を維持するための予防接種クリニックやウェルネスプログラムなどの予防ケアサービスの需要が高まりをみせている。

特にドイツにはバイエル、ファイザーなど主要な獣医薬会社が多くあり、革新的な獣医研究開発でヨーロッパの獣医ケア業界を牽引している。

Renub Researchの2022年の調査によると、ヨーロッパの獣医市場は世界で2番目に大きく、2027年までに6.4%成長すると予想され、投資家からも注目が集まっている。

(引用元:Brain surgery for pets: How our furry friends could drive the next investment trend
https://www.msn.com/en-za/health/other/brain-surgery-for-pets-how-our-furry-friends-could-drive-the-next-investment-trend/ar-AA1kDVfk

スペインでは犬のペット保険加入が義務化

ペットの医療費支出増加に伴い、ペット保険のニーズも高まっている。スペイン国内では Mapfre, AXA, Santa Lucia, Liberty などの企業がメジャーだが、2017年、犬の保険では世界的リーダーのPetplanがスペイン市場に参入した。

先述の新動物福祉法で新しく定められた要件の最大の注目点は、これまで特定の品種の飼い犬にのみ義務付けられていたペット保険への加入が、スペイン全土の全ての品種のペット犬の飼い主に義務付けられたところである。

2023年9月29日以降、保険未加入の飼い主には500€~10,000€の罰金が科せられる。この政策により、市場は2027年までの間に11.6%成長すると予想されている。

また、Blue Weave Consultingの報告によると、ヨーロッパ大陸全体で見てもペット保険の市場は急速に成長しており、2021年には29億ユーロの価値だったものが毎年9.2%成長し、2028年までに54億8000万ユーロに膨らむと予測されている。

(引用元:Spain’s new animal welfare law up in the air due to political differences
https://www.surinenglish.com/spain/animal-welfare-law-stalls-20221215114429-nt.html

(引用元:Spain Pet Insurance Market
https://www.kenresearch.com/blog/2023/01/spain-pet-insurance-market/

まとめ

ペットブームで動物のQOL向上に関心が高まる一方で、残念ながら一部の無責任な人間による飼育放棄が後を絶たないなど、目を背けてはならない社会問題も表面化している。ヨーロッパ各国では保護関連の法律の更新など様々なペット動物保護のための取り組みが行われている。

他方、ペットの健康への関心の高まりから欧州政府は動物の獣医ケアを強化した。また、病気に対する効果的な予防対策や治療・手術は日進月歩の勢いで進化しており、ペットの平均寿命は大幅に延びている。そういったペットケア薬や医療処置は高額になるため、ペット医療保険のニーズも今後ますます高まる方向だ。よって欧州のアニマルヘルス業界は今後も成長し続けると考えられる。

北田ミヤ

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スペイン在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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