シンガポール・マレーシア間の高速鉄道、日本勢が参入断念

シンガポール

シンガポールとマレーシアの首都クアラルンプールとを結ぶ高速鉄道計画について、日本の新幹線システムの導入を目指していたJR東日本を中心とする日本勢が参入を断念したとの報道がありました。

今回は、この記事を中心にシンガポール・マレーシア(クアラルンプール)間の高速鉄道計画について紹介します。

シンガポール・マレーシア間の高速鉄道、日本勢が参入断念

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2024年 2月27日

参入を断念

2015年、当時の国土交通大臣が新幹線システムを関係者に売り込むためにシンガポール・マレーシアを訪問していましたが、JR東日本とともに住友商事も当初提案の段階でこのプロジェクトへの支援に関心を示していました。

このプロジェクトは総工費が1,000億リンギ(約3兆1395億円)にものぼると予想され、マレーシア政府は債務保証や財政支出をせず民間資金のみで進める意向を示しています。参入を目指していた日本企業はリスクが大き過ぎるとして、参入を断念したと報じられました。

中国勢が有利か?

日本勢のライバルと思われた中国勢はすでにインドネシアで2023年に高速鉄道を開業し、現在タイでも建設を進めています。

今回の高速鉄道計画を受注すれば、中国勢は東南アジア市場での優位が確立しそうです。

ただ、中国側も総工費がかさむことと、マレーシア政府が財政支出しないことによる過度の財務負担を警戒していて、計画はまだまだ紆余曲折する可能性も残っています。

紆余曲折の高速鉄道プロジェクト

この高速鉄道プロジェクトは、2013年のシンガポールとマレーシア両国の首脳会談で初めて提案されたところからスタートしました。当初はシンガポールとマレーシアの首都クアラルンプール間の全長約350キロを、わずか90分で結ぶ計画として注目されました。

2016年以降は詳細な調査と検討の段階に進み、技術的、経済的、および環境面から考慮されルート選定されました。

そして2017年、シンガポールとマレーシアの両政府はこの計画に合意し、契約が締結されました。

しかし、2018年6月にマレーシアで政権交代があり、当時のマハティール首相が高コストによりプロジェクトの延期を決定し、2021年1月にはシンガポール側が計画の中止を発表しました。

2023年7月に再び計画が復活しました。

マレーシア側に罰金

2018年9月の1度目の延期の際、シンガポール運輸省はマレーシア政府に対して補償金を支払う必要があると通達し、マレーシア政府はシンガポール政府に対して1,500万シンガポールドル(約16億6,000万円)の補償金を支払っています。

シンガポール政府は今回の高速鉄道計画の復活に際して「誠意を持って」協議する用意があると述べています。

ジョーホール間鉄道運行開始予定

シンガポールとマレーシア南部のジョホールバルとを結ぶ高速輸送システム(RTS)鉄道の建設工事は、現在までに約5割以上が完成しており、予定どおり2026年末までに完成し運行する見通しになっています。

また、今年初頭には国境の陸路で出入国審査する場合、車に乗ったままで自動審査が可能になる「自動化乗用車審査システム」を段階的に導入していく予定になっています。

さらに、陸路国境においてパスポートなしでの往来の実現に向け両国が検討に乗り出したとの報道がありました。

シンガポールとマレーシアの結びつきはますます密接になっていくようです。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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