なぜエストニアに在留?多角的に理由を分析してみる

エストニア

エストニア、ラトビア、リトアニアのいわゆるバルト三国で人口が最も少ないエストニアではあるが、在留邦人の数を見ると他の2ヶ国よりも多い。在エストニア邦人は何を目的としてここへ来たのか、その理由を複数面から考察していく。

なぜエストニアに在留?多角的に理由を分析してみる

著者:エストニアgram fellow さえきあき
公開日:2024年2月26日

エストニアの在留邦人数

バルト三国というくくりで比較して語られるエストニア、ラトビア、リトアニアの人口を見てみよう。人口の多い順から、リトアニア282万人、ラトビア189万人、エストニア136.5万人となっている。しかし、在留邦人数(その地に旅行以外の目的で留まっている日本人の数)をみると、その数は人口と逆になる。エストニアが一番多くて214人、次点がリトアニア125人、最下位がラトビアの69人である。ラトビアは他の2ヶ国のようなワーキングホリデービザが2022年までなかったため、調査時の2022年に在留邦人数が少ないのは納得できる。だが、エストニアは2倍の人口を抱えるリトアニアより在留邦人数が多くなっている。

なぜエストニアの在留邦人数が多いのか、結婚等によるパートナーの出身国への移住を除いて考えてみる。

(参考:外務省 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/estonia/data.html

(参考:外務省 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/latvia/data.html

(参考:外務省 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/lithuania/data.html

世界的に有名なIT産業

日本だけでなく、他の国でもエストニアはITの国として知られている。自身のIT技術を活かして働きたいという人や、後述の学業とも内容が少し重複するが、エストニアで最先端のITを学びたいという理由でエストニアに来る人もいる。

学生として来てそのまま就職

エストニアの大学の修士課程は英語で開講されているものがかなりあり、これを目的にエストニアに滞在している人もいる。あまり知られていないが、EU内で英語の習熟度・運用能力をテストするとエストニアは上位に入るため、学生生活を送る分には英語で充分という側面がある。2023年のEF(Education First)の調査によれば、英語の運用能力を、かなり高い~かなり低いまでの5段階に分けたところ、エストニアは5段階中の4にあたる「高い」にカテゴライズされている。順位でいうと23位にランクインしており、近年英語の語学留学先としてメジャーなフィリピンが20位であることを考えると、かなり英語が通じる国と言っていいだろう。

学費の面でも魅力的である。外国人でも学費が無料であるドイツ等他のEU加盟国には負けてしまうが、エストニアの学費は日本の大学と同程度、もしくはそれより安く済む場合がほとんどだ。入学金制度がないのも嬉しい。

卒業後に日本に本帰国せずそのまま現地企業で就職し働いている人もいる。

(参考:Education First https://www.ef.com/wwen/epi/

スタートアップに挑戦しやすい環境

スタートアップを登記したいEU域外の人間にとって、エストニアはチャンスを提供している国である。もちろん申請後に審査はされるが、オンラインで申請可能なうえEU加盟国という利点もあるため、EU進出の第一歩として選ばれている。

北欧に近いという地の利

エストニアの海を越えた先にある国はフィンランド。フィンランドは「世界一幸せな国」として有名で、隣のスウェーデンと並ぶ日本人に人気が高い国である。在北欧の日本人からは「北欧にも問題はたくさんあるし、日本での生活の方が何でも手に入り幸せだ」という意見がSNSで散見しているが、依然として日本メディアでは北欧のいい点ばかり紹介されるので人気は衰えていない。

そんな人気のある北欧に滞在してみたいという思いから、北欧に近い気候や国民性(なんならフィンランドとは兄弟的関係)を持つエストニアへのワーキングホリデーの申請をした、という人の話を聞いたことがある。エストニアは2020年から日本とワーキングホリデー制度の締結をし、ビザ発給に人数制限なし、申請時点でエストニア語が話せる必要なし、フィンランドやスウェーデンより物価が控えめという点から、北欧の文化や雰囲気を体験してみたいという人にはうってつけの場所である。

ノルウェーやスウェーデンもワーキングホリデー制度があるのだが、生活コストが高いことや住宅探しが現地人ですら困難なこと、特にスウェーデンは近年移民が増えてきており職探しも倍率が高かったりと大変な様子。フィンランドには以前ワーキングホリデー制度がなかったため、エストニアは丁度いい場所だったのだろう。

しかし、2023年からフィンランドでも日本人向けにワーキングホリデービザが発給されることが決定したため(年間200人の制限あり)、今後は北欧に近いという理由のみでエストニアにワーキングホリデーに来る人の人数は減少すると思われる。

まとめ

これらは200人いるエストニア在留邦人の滞在理由を大きくカテゴライズしたものであり、これに当てはまらない特有の理由を持った人もいる。総じて、エストニアはそのIT産業、教育機会、地理的な魅力を通じて日本人を惹きつけている。もう少し世間に国の名前が知られるようになれば、エストニアへ来たいという人が増えるのでないだろうか。

エストニアの位置関係

さえきあき

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エストニア在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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