アジア首位のスマートシティ・シンガポール|ビジネスチャンスを探る

シンガポール

2024年のスマートシティランキングで世界5位、アジア首位に輝いたシンガポール。その背景には、2014年から始まった「Smart Nation Singapore」構想がある。政府主導の政策、充実した技術インフラ、教育への投資、そして市民参加を促す取り組みが、シンガポールをスマートシティの最前線へと押し上げた。
本コラムでは、シンガポールのスマートシティ戦略から、ビジネスチャンスと今後のグローバル都市のあり方を探る。

シンガポールのスマートシティ戦略:政府政策と技術革新が生み出す競争力

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2024年 7月12日

アジアでは首位

IMDは世界142の都市を対象に調査を実施しており、シンガポールは世界で5位、アジアでは前年に続き首位でした。昨年の7位から2ランクの躍進です。

アジアでは北京が13位、16位に台北、17位のソウルが上位に入っている都市でした。
日本では東京が86位、大阪が95位でした。

「スマートシティー・インデックス」

スマートシティ・インデックスとは、IMDが毎年発表しているスマートシティのランキングです。市民からの調査の回答と各種の経済データを組み合わせてインフラの充実度を示す「構造」分野と、技術やサービスなどの成熟度を示す「技術」の2つの分野において、デジタルアクセシビリティ-、大気汚染や衛生設備・医療、緑地や交通などを総合的に評価して、スマートシティ指数を導き出しています。

最高ランクの「AAA」から「D」までの10段階で各都市を評価して格付けし、その結果をランキングにして発表しています。

「スーパーチャンピオン」

シンガポールは「構造」「技術」の両部門で、上から3番目に高い格付けの「A」でした。

「構造」分野では衛生状態や医療サービスが非常に高い評価を得ており、「技術」分野ではインターネットの接続環境の良さや、監視カメラを活用した治安維持などが高い評価を得ました。

一方で、手ごろな価格や賃料で住宅の確保が困難な点や、交通渋滞の多さでは評価が低くなりました。

シンガポールは、チューリッヒ、オスロ、などの5都市とともに「スーパーチャンピオン」に選ばれました。

「スマート国家」

では、シンガポールはどのようにして世界をけん引するスマート国家になったのでしょうか?

その答えは、政府の政策、技術の充実、教育、市民の参加の組み合わせによります。

政府の政策

2014 年、シンガポール政府は交通渋滞や少子高齢化を解決するため、国民生活の向上を目指すために、スマートシティ政策である「Smart Nation Singapore」を開始しました。

以来、国を挙げてスマートシティ実現に向けて取り組み、数々のプロジェクトを実施して、生活のあらゆる側面がテクノロジーによって強化されています。

技術の充実

政府が政策を決定しても、強固な技術やインフラが整備されていなければ効果を発揮しなかったでしょう。

シンガポールはスマート国家構想を成功させるために、この分野へ多額の投資を行ってきました。例えば、大規模な光ファイバーネットワークを国中に構築し、ほぼすべての家庭や企業で高速インターネットへのアクセスを可能にしています。

教育

教育にも注力していて、必要なスキルや知識を国民が確実に身につけられるように科学や技術分野での教育に多額の投資を行っており、これがスマート国家としての成功の重要な要因となっています。

市民の参加を促す

政府はスマート国家を成功させるために、国民が積極的に参加できるように計画し、フィードバックやアイデア、提案などを提供することを奨励しています。

また「Skills Futureプログラム」を通して、いつでもスキルアップが可能になる取り組みを開始しており、生涯学習への経済的な支援も積極的に進めています。

まじめで向上心が高く勤労意欲も高いシンガポールの国民性と、政府の的を射た支援策で、シンガポールのスマートシティ化は加速していくでしょう。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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