豪雨によりシンガポールで大混乱が発生
先日9月17日にシンガポールを襲った豪雨は、わずか1時間あまりでしたが街に大きな混乱をもたらし、国全体に多くの痕跡を残しました。
赤道の1.5度北に位置しているシンガポールは、熱帯雨林気候気温のため、雨季には突然の強いにわか雨(スコール)や雷雨が発生する可能性が非常に高く、今回の豪雨も雨季特有の嵐とみられます。
今回の記事で、シンガポールの雨季の特徴と、どのように雨の対策を行っているかについて詳しく解説します。
豪雨によりシンガポールで大混乱が発生
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2023年 11月22日
多くの木が倒れる
去る9月17日の夜、強風と大雨がシンガポールを襲いました。
多くの木々が倒れ、交通にも混乱をもたらし、UOBプラザの外にあるガラスの天蓋が損傷して落下する事故もありました。
わずか1時間あまりの突然の豪雨でしたが、街全体に大きな被害を残しました。
スマトラ島の突風
シンガポール気象局は、今回の豪雨はスマトラ島のスコールが原因であると確認しました。
この嵐はマラッカ海峡で発生し、午後7時から8時半頃にかけてシンガポールを襲い、イーストコーストの公園では最大風速83.2kmを記録しています。
気象局によると、マレーシアとブルネイでも強風と大雨の影響を受け、マレーシアのペナン島では2日間で200本以上の木が倒れ、ブルネイでも72件の倒木に関する緊急通報があったということです。
気象局は、今後2週間はスマトラ島を中心に広範囲で雷を伴う雨と突風が吹き荒れる恐れがあり、月末にかけてさらに降雨量が増加すると予想し、注意喚起しています。
シンガポールの雨季とモンスーン
シンガポールは熱帯気候のため降雨量が多いですが、平均して毎月約100~300 mmの雨が降り、1年間の平均降雨量は約2,340 mmです。特に11月と12月が最も降雨量が多い「雨季」とされていますが、シンガポールに影響を与える南西モンスーン期(4月から5月、10月から11月)は 、同国で最も雨の多い時期で、しばしば激しい豪雨をもたらし洪水を引き起こします。
シンガポールの豪雨対策
シンガポールは豪雨による被害を軽減するため、いくつかの効果的な対策を講じています。以下でその主な対策を紹介します。
1. 先進的な排水システム
都市開発が進む中で頻繁に起こる豪雨に対処するため、排水システムの整備を進めています。特に地下排水トンネル(Deep Tunnel Sewerage System:DTSS)は、都市全体で雨水を効果的に流すための大規模なインフラで、これにより洪水リスクが大幅に軽減されています。
2. Polders計画
シンガポールはオランダの技術を参考にした「ポルダー」という低地排水システムを採用して、雨水を管理する新しい取り組みが進んでいます。このポルダーシステムは、特に将来的な気候変動に対して有効な手段として期待されています。
3. 公園・緑地を利用した雨水管理
「ABC Watersプログラム」は自然を活用して雨水を管理するプロジェクトで、公園や緑地を雨水の貯水場所として活用し、排水システムにかかる負担を軽減しています。
4. 警報システム
高精度の気象予測技術を導入しており、豪雨が予測されると早期に警報を出し、住民や企業に対して早めの準備を促しています。
5. 建築基準の強化
シンガポール政府は、洪水対策として建築基準を強化しています。特に新たな建物やインフラは豪雨時にも耐えられるように、建物の低層部分に水が入りにくいように設計したり、駐車場や地下施設に水の流入を防ぐ仕組みが取り入れられています。
6. 住民の意識向上
住民に対しても豪雨に備えるための教育や意識向上が進められています。TVで説明したり、洪水のリスクが高い地域では、砂袋の利用や排水口の定期的な清掃といった自主的な対策を奨励しています。
気候の急激な変動への対策が急務
これらの対策によって、シンガポールは頻発する豪雨に柔軟に対応し、都市機能を維持し、住民の安全を確保するように努力しています。
しかし、気候変動の影響で今後さらに豪雨が激化する可能性があるため、インフラのさらなる拡充と技術の向上が課題となっています。