シンガポールIR戦略の成功と進化:観光収入50%増の実績と今後の展望
シンガポールの観光業が急速に回復しています。2024年3月の訪問者数は前年比45%増の148万人を記録し、コロナ禍前の95%まで回復。中国からの観光客は4倍に増加し、テイラー・スウィフトのコンサートも大きな集客要因となりました。しかし、シンガポールは「乗り継ぎ地」というイメージからの脱却を図り、統合型リゾート(IR)戦略や新たな観光パッケージの開発に取り組んでいます。
本コラムでは、シンガポールの観光復活の背景と今後の展望を詳しく解説します。
スウィフトノミクスが牽引するシンガポール観光業:コロナ前の95%まで回復
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年 8月16日
1位は中国
2024年の3月にシンガポールを訪れた外国人の数は前月比3.1%の増加、コロナ禍前の2019年の3月と比べても95%の水準まで回復したことがわかりました。
国別では中国が24万7,724人で、前年の同月比では4倍となりましたが、2月と比べると24%の減少でした。2月は旧正月の大型連休があるため、中国からの入国者数は急増していました。
以下、2位はインドネシアの20万5,033人で、前年同月比で20%増えていて、3位のマレーシアも23%増の12万256人でした。
日本からの訪問者は、5割増の5万4,891人で、9位にランクインしています。
「スウィフトノミクス」
2024年の3月の外国人訪問者数はコロナ禍以降では最高を記録していますが、これは、人気歌手のテイラー・スウィフトさんが6日間にわたりシンガポールで公演を開催したことも起因したようです。
30万人以上のファンがアジアを中心に世界中からコンサートに訪れて、観光収入にも大きく寄与しています。
コロナ禍前の約8割まで回復
シンガポール観光庁は2月に、2023年に訪れた外国人来訪者数が1,360万人にのぼり、コロナ禍前の2019年の71%まで回復したことを発表しました。2024年の訪者数は1,500万~1,600万人で、コロナ禍前の約8割まで回復するとの予測も明らかにしています。
これには、記事で紹介した「中国との相互ビザ緩和」も大きく影響すると期待されています。
観光パターンの変化
旅行者は、今、休暇をより「目的意識」を持って過ごすようになっていて、数ヶ国を周遊するのではなく1つの国をじっくりと旅行する選択をしている、と観光専門家は見ています。
シンガポールは多くの観光客から中継地と考えられているため、少なからず影響を与えると危惧しています。
シンガポールは価値のある目的地であり、自らもそうであると自負してきたにもかかわらず、中継地とされてきました。
IRで観光目的地へと進化
独自の統合型リゾート(IR)がゲームチェンジャーとなって観光客を引き付けることに成功し、マリーナベイとセントーサのカジノがオープンした2010年の観光収入は、約188億シンガポールドル(約2兆1,700億円)、前年比約50%も増加し、観光収入の増加にも大きく貢献しました。
新たな観光パッケージ化が必須
シンガポールが観光客を引きつけ続けるためには新たな観光施策が必要だと、専門家はみています。
新たな観光スポットを建設することは解決策ではなく、むしろ現在ある観光名所を効果的にパッケージ化して、より効果的にシンガポールをマーケティングすることが、旅行者に少しでも長くシンガポールに滞在してもらうための鍵となるでしょう。
乗り継ぎ目的地としてのイメージを払拭し、魅力的な観光目的地であることを、継続的に、機能的に宣伝し、優れた体験を訪問者に確実に提供することが必須となります。
何度も大胆な施策を果敢に実施してきたシンガポールは、必ず解決策を見出していくでしょう。