地方創生再出発!デジタルで挑む海外マーケット
新型コロナは世界のあり様を一変させました。その中でも、人と常に距離を持って接する新しい生活様式を迎えたことは最も大きな影響と言えるでしょう。
地方創生再出発!デジタルで挑む海外マーケット
著者:gram代表 谷村 真
公開日:2020年12月21日
国としての地方創生の取り組み
2015年頃から地方創生が声高に語られるようになり、国は地方創生のために毎年数千億という莫大な予算を投じてきました。
また、現状でも、内閣府よりコロナ対策地方創生臨時交付金として一次補正予算1兆円、2次補正予算2兆円が公表されています。
具体的な活用事例としては、インバウンドの減少による需要減退等の影響を受けている地域の産品など、毀損した輸出商流の回復にかかる費用や、販路開拓のために必要なプロモーション、仕向け先変更のための商品開発に必要な経費の一部を地域の実情に応じて支援することを発表しています。
つまり、コロナ前後で同じ地方創生予算でもその活用目的は大きく変わってきているのです。
これまでの取り組みの課題
まず、地方創生の取り組みのメインとして、地域コミュニティの活性化が挙げられます。
長年地方創生に取り組んでいると、すべての起点に“集まる”という考え方があるということに気づきます。地方では何を始めるにも、人が集まるということを中心に考え、物事が進んでいきます。この“集まる”という考え自体は、コミュニティを作るといった目的において重要な要素ですが、コロナの影響によってその考え方は軌道修正せざるをえなくなりました。
また、海外輸出促進においても同様に、今まで行ってきた手法は困難になってきました。海外輸出促進とは、人口や消費減少により日本の既存マーケットが縮小していくといった背景の中で、地方にある産品の販路を日本だけでなく海外にも積極的に広げていき、経済を活性化することを目的とした取り組みです。
海外輸出促進の中で最も成約につながるキラーコンテンツは海外バイヤーの招致にありました。これは海外で地方産品を広めてくれそうな企業や人を地元産地に招き、実際に見て、触って、食べて、感じてもらうといった体験を通じてその地域や商品を好きになってもらい成約につなげていくといった方法です。
しかし、この取り組みもまた、コロナの影響で方向転換を余儀なくされています。
人が集まれないから地方創生のためのコミュニティ作りができない、実際に来てもらうことができないから、地方の魅力を伝えることができない、売れない、効果が出ないとなれば、国が投じた莫大な予算は、その活動や効果において期待とは大きなギャップが生んでしまう可能性すらあります。過去の取り組みの延長線上でなく、ニュー・ノーマルな社会に適合した新たな取り組みを改めて再考する必要があると思います。
海外とのオンライン通信事例から学べること
先日、ある取り組みでオンライン上の3か国周遊ツアーを実施しました。
中国・韓国・台湾の最新事情を知るために、1日8時間かけてオンラインで現地と繋ぎ、それぞれの国の現状を知るとともに、現地の食材を食べながらコミュニケーションを図りました。
1日で3か国周るというのはオンラインならではの取り組みでしたが、8時間という長時間にも関わらず、参加者の反応は非常に良いものでした。コロナによる各国の規制が緩和し、人々の往来が可能になった際には、ぜひ皆で行こう、というような話が飛び交っていました。
私はこの小さな取り組みに、今後の地方創生のある姿を感じています。
リアルには集まることは難しいですが、オンライン上で集まることの効果はリアルに集まることと同様、もしくはそれ以上の波及効果を生む可能性を秘めていると思います。
例えば、地方産品の輸出においても、今までは来て、食べて、感じてもらうといったリアルな体験を提供することによって販売という目的を達成していました。しかし今後は、情報を共有して、そのコミュニケーション自体をコンテンツとして波及していくといった取り組みに変えていくことが考えられます。
具体的には、売りたい人と買いたい人がオンラインで繋がり、同じ食材を使って地元ならではのレシピを中心とした料理セッションを行い、そのコミュニケーションの様子を料理をしている人のファンやその地域にいる料理好きの人、日本好きの人に伝えていくような取り組みが必要になるのではないでしょうか。そんな人々が、渡航制限が緩和したときに一番にリアルに接する人になるのではと思います。
地方創生のその他の課題
地方創生には、これ以外にも多岐にわたる課題が存在します。それはコロナによって起こったものでなく、それ以前から存在する課題です。
例えば、地方創生を推進する組織の課題です。大きな目的を達成するためのロードマップが描けなかったり、進捗やノウハウが継承できなかったりすることで、施策が一過性のイベントになってしまうという問題があります。
次に、第三者から見た魅力の課題です。慣れ親しんだ地元だからこそ見落としがちな視点で、これを解決するには外から見た客観的な意見が必要です。
最後に、売買を継続するスキームの課題です。本来のゴールは、継続的に販売活動を展開できる恒常的な収益の確保、更には地域経済の発展を目的として実施する施策なのでプロモーションで終わらせずビジネススキームまで構築していかなければなりません。
まとめ
このように地方創生一つを例にとっても、コロナ後の世界は今までの環境と大きく異なります。今まで行ってきた事業ができなくなったと嘆くのではなく、どのような発展を目指しているのか改めて考え、デジタルという新しい手法を取り入れながら、コロナ前以上にスピードをもって展開していく方法を模索してみてはいかがでしょうか。
また、この事業を見直す機会はデジタルの活用といったテーマだけでなく、地方が有する根本的な課題に取り組むチャンスと捉え、大きな変革を実行し、地方から活力を取り戻し、元気な地域があちこちにでてくる姿を期待したいと思います。