フランス:コロナ禍にみるフランスの本質と変化

コロナ時代

春⽬前にやってきたコロナウィルス流⾏後のフランスはどの様な変貌をもたらすのか︖
安易に予測するのではなく、フランス国⺠が外出禁⽌令を経験したからこそ特定できる傾向があるのかもしれない。

フランス:コロナ禍にみるフランスの本質と変化

著者:gramフェロー 福本しのぶ  
公開日:2020年09月2日

国別概要情報 フランス(France)

E-life

最も明⽩なものから始めましょう。
「外出禁⽌令」と「社会的距離」に対する、公的機関の差し⽌め命令は、ネット社会に恩恵をもたらした。すでに広く使われているが、NetflixやAmazonが先駆者となった。 e-コマースから、e-会議、e-飲み会など、電⼦化は⽬まぐるしい進化を遂げることになるだろう。
とはいえすでに 2019 年には、Netflix などのオンデマンド・プラットフォームは 24%のフランス⼈に⽇常的に⾒られていたし(15-24 歳の 50%)、Deezer や Spotify などの⾳楽ストリーミングは22%が使⽤していた(15-24 歳の 58%)。
今後は、オンライン会議、オンライン診断、テレワークやオンライン授業、デジタル・メディア、オンラインショップ、宅配…デジタル化が進展するであろう。
しかし注意しなくてはならない。この電⼦化に早く結論つけるのは良くない。外出禁⽌令解除後は、
社会的接触の爆発や、物理的な集まりなどが多くなるかもしれない。なんだかんだ⾔って、フランス⼈は家族やら友⼈と集まり⼀緒にいたいのだ。あとはこの間に、ライフスタイルの電⼦化が魅⼒的な進歩を遂げてくれるのを祈るばかりだ。
なお新型コロナウイルス感染症予防対策国家指導委員会によれば、6月29日6時の時点で、ベトナムは74日間連続で市中感染者が出ていない。これまでのベトナムの感染者数は355人でそのうち330人が完治し死者はゼロとなっている。医療施設で治療を受けている25人の患者の内、10人が1度目の検査で陰性となっている。

フランス⼈にとって本質とは何か?

強制的に隔離されることは別の効果もあった︓多くの⼈が「⾃分にとって本当に必要なものは何か」に焦点を当て始めた。少なくともじっくりと考える時間が与えられたのだ。
2019 年フランス⼈の 73%が 「基本に戻り、本当に⾃分が必要としているものは何かに焦点をあてたい」と⾔っていた。2018 年より 3 ポイントも上がった。これまで時間のなさでなかなか実現しなかったものの、今回の隔離処置で失われた時が戻された。というのも誰にも邪魔されない時間がたっぷりと与えられたからだ。

しかも⾃分⾃⾝や家族、家に費やす時間がたっぷり与えられた。家族で隔離された場合は、お互いを⾒つめあい近づく時間(その反対もあるが…)になるし、⼀⼈で隔離されても、離れ離れになっているからこそ愛する⼈に連絡してみようと思う時間ができる。すでに Facebook や WhatsApp で、おじいちゃん、おばあちゃんと会話を楽しんだり、オンライン・ディスカッションなど始まっている。

ここで⼀つ⾔えるのは、80年代末に⽣まれた “cocooning”(マイホーム主義)という⾔葉が、これから主流になっていくということだ。2000 年より、インターネットが⼀般化しだして、多くの活動が遠隔になった(コミュニケーション、買う、売る、借りる…)。2019 年より、フランス⼈の 66%が “家族や友⼈とは外で会うより、ゆっくり家で会いたい” と⾔った。
隔離⽣活が、家を再発⾒させ、リノベーションなど、家を中⼼的な存在価値にするかもしれない。

消費合理化がつづく

最近の進展を確約する第3の要素は消費であろう。
2009 年より、フランス⼈の習慣はだいぶ変化しさらに合理的になった。消費の喜びは失われていなくとも、フランスの⼈⼝増加している層の経済的衰退が消費の⾏動に変化を与えた。
今では、消費者はもう少し注意深くなり、より多く批評しより安い価格を探し、消費を決定するまでに時間をかける様になった。
2008 年の中古市場が 47%だったに対し、2018 年には 60%となり中古市場ブームが起きた。さらに、価格以上に消費者が考えるのが ”中⾝” になった。
過剰消費と物質主義の蓄積の時代は、もう過ぎ去ったこと。今では情報通になり専⾨家より知識を得てフランス⼈はより多くの透明性を求め、健康の保証とクオリティーを求めるようになった。
とはいえここでも、緊縮とミニマリズムの未来を早く結論づけてはならない。
不本意な隔離により我々が精神的に保てるには唯⼀、喜びが必要だとわかった。⼩さな⾷の喜び(アイスクリーム、チョコレート、家庭料理…)やゲーム(ビデオゲームやボードゲーム)など、この試練を乗り越えるのに役⽴つだろう。数週間にも及んだ禁⽌令、この衛⽣緊急事態解除後フランス⼈は爆発するだろう。そしてしばらくは忘れられた時を戻すように消費の爆発も起こるかもしれない。

集団的需要の増加

2010 年、社会学者のシェリー・タークル著「Alone Together(つながっているのに孤独)」に︓「テクノロジーが益々増えると、どんどん⼈間関係が少なくなる」との⼀節がある。すっかり参考書となったこの本は、インターネットの出現により世の中に⽭盾が起きていると⽰した : ⼈間は⾁体的には⼀ 緒にいるが、事実上孤⽴している。しかし、フランス全⼟が隔離状態になってからは反対の現象が起こった : ⼈間は物理的に孤⽴したが、事実上⼀緒にいた。素敵な機動修正だが、コロナ禍には⽣き延びないだろう。やはり⼈と繋がっていたいのだ。

しかし、集団的需要は現実で、ますます社会で主張されている。
毎年⾏われている”個⼈的に⼼に残る⾔葉” アンケートを⾒る限り, 2014 年-2019 年の間、22 ある⾔葉のリスト内で ”結束” “友愛” という⾔葉のポイントが伸びた。 同時期、個⼈的な⾔葉となる ”喜び” “成功” はポイントを下げた。集団的価値の上昇は、フランス⼈が今⽇感じている集団の⽋如を物語っている。これらの⾔葉は集団的価値を測るものだからだ : 連帯という価値観が失われていくと、守らなければならないという気持ちになるのだ。
この危機から抜け出した時、”集団” は政府の優先事項になるだろう。

健康は環境保護的意識を⾼める要因になるだろう

この 2 年ほど “崩壊論” に追い⾵が吹いている。コロナウィルスの蔓延、そしてコロナによる国家的影響が「我々の⽂明はまもなく消滅する」というフランス⼈の 42%がすでに共有している確信を強めることは間違いない。
明確なのは、この 2 年の間に主張されてきた環境保護的意識の衛⽣⾯は、この危機により強化されることだ。環境破壊、特に環境汚染においては感⼼が増した(環境汚染に感⼼を持っていたフランス⼈は、2017 年は 24%だったが、2019 年には 46%となった)。それにくわえ、”購⼊するものが健康に与える影響” を考えるフランス⼈も多くなった(2012年には 76%、2019年には 82%)。
また⾷品分析アプリ「Yuka」(2020 年 4 ⽉時点で 22%が使⽤)など、消費者にとっての強い味⽅となっている。

仕事との関係は変化し続ける

最後に当然のことながら仕事は変化するであろう。
実⽤部分だけでなく、もう既にわかっていることだが21 世紀の働き⽅で常識化されるのがテレワークになるであろう。⼀部の上層部には、まだ理解されていない部分もあるかもしれないが、今⽇、2 ⼈に1 ⼈は、仕事場以外での仕事が望ましいと⾔っている。年⾦改⾰デモが続き、コロナ禍が終息してもなお、この数字は上がるだろう。
しかし、物事が劇的に変化する可能性があるのは、⾃分の仕事のやり⽅にもあるのだろう。
この 10 年、フランス⼈は、仕事とプライベートをバランスよく保つことに重点を置いた。彼ら以前の世代は、このバランスを無視していた。
これからのフランス⼈はきっと、アイデンティティーの構築のために仕事の役割を感じ、かつ私たちが突⼊した不確実なこの期間、完全に満たされた⼈⽣に勝るものはないと感じただろう。
“封じ込め” は、燃え尽き防⽌兵器になるのだろうか︖

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