最新ビジネスモデル:急成長する中国のAR・VR市場
数年前から深圳、上海、北京、広州などの一級都市で、VRゲームが話題となった。流行に敏感で入れ替わりの速い中国では熱は徐々に冷め、ブームは過ぎ去ったように思えた。しかし、現在またVRゲーム人気は返り咲き「未来戦場」など体験型ゲームが盛り上がっている。また、ネット上の仮想空間「メタバース」も注目を集めるなど、中国におけるAR・VR市場の成長率は世界一となる見込みだ。
急成長する中国のAR・VR市場
著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2022年7月4日
AR・VR市場を身近に感じる中国
日本人の感覚でVRゲームと聞くと、お台場や池袋サンシャイン60などの観光スポット、アミューズメント施設にある特別なアトラクションというイメージではないだろうか。
しかし、中国では観光スポットでも何でもないモールの中で、VRゲームを体験できる場所を目にすることが多い。筆者が住む近所のモールにはVR体験施設があるが、そこから徒歩10分圏内の他のモールにも競合他社のVRゲーム施設が存在する。価格は約100元(2,000円)~300元(6,000円)と決して安いわけではないが(筆者調べ)、子どもから大人まで気軽にVRゲームを楽しんでいるのだ。日本人と比較するとVRゲームは中国人にとって身近な遊びの1つとなっている。VRゴーグルを装着してただ映像を楽しむ単調な遊びではなく、戦場をテーマに体験型対戦ゲーム「未来戦場」など、臨場感やリアルを味わえるVRゲームがここ最近は人気のようだ。
積極的にAR・VR技術を活用する中国
最近人気といえば、中国版TikTokでメタバース系アイドル(バーチャルヒューマン)がものすごいスピードでバズった。また、VRを使いテレサ・テンと現代に存在する歌手とのコラボ復活ライブを実現させるなど、中国人にとってAR・VR市場は幅広い層に知れ渡り、話題性が高い。
中国ではVR技術を活用し、飲食店やモールの店内を見てまわったり、物件の内見までもが可能だ。また、中国の電気自動車(EV)の車内にAR・VR機能を搭載したり、上海市や北京市、広州市など多くの都市の自動車免許教習所ではVRを導入し、運転練習や違反ドライバーの講習を実施している。中国のスマートシティ産業でもメタバースを用いるなどAR・VR技術の活用方法は多岐に渡っている。
世界で最も高い成長率 中国のAR・VR市場
2021年10月にフェイスブックが社名を「メタ」に変更。インターネット上の仮想空間「メタバース」事業を構築する意向を固めたことは世界に衝撃を与えた。メタバースが話題となったことで、AR(拡張現実)VR(仮想現実)市場に注目が集まり、VRゲームなどの業界にも追い風となっているという。
VRはメタバースへの入り口
動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する中国IT大手のバイトダンス(字節跳動)は、現在、仮想現実(VR)分野に多額の資金を投じ、米国市場でメタ(旧フェイスブック)に挑もうとしている。米テック系ニュースメディア「Protocol」によると、バイトダンス傘下のVR(仮想現実)デバイスメーカー「Pico Technology(小鳥看看科技)」がすでに、米国西海岸でスタッフ募集を開始しているという。巨大な仮想空間「メタバース」が大きな注目を集める中、VRはメタバースへの入り口として有望視され、再び脚光を浴びている。
(引用:36Kr Japan https://36kr.jp/190834/)
中国のVR市場 成長率は世界一
米調査会社IDCは26日、2022年初の「世界の拡張現実・仮想現実(AR/VR)支出ガイド」を発表し、世界の21年のAR/VR関連支出額が146億7千万ドル近くになったことを明らかにした。また、26年には747億3千万ドルまで増加し、22~26年の5年間の年平均成長率(CAGR)は38.5%に達するとの見通しを示した。中国市場の5年間のCAGRは43.8%で、世界で最も高い成長率を示すという。
VR技術は26年までの5年間、依然としてユーザーの主要注目分野であり続け、AR/VR市場関連投資の約70%を集める見込みだ。21年から、新製品の発表や、頭部に装着するヘッドマウントディスプレー(HMD)メーカーのマーケティング方式転換により、個人向けHMD市場が徐々に拡大しており、非常に大きな潜在力を秘める。IDCは、中国の個人向けAR/VR市場が26年までの5年間に安定成長を続け、市場規模は中国市場全体の4割に迫ると予測している。
(引用:36Kr Japan https://36kr.jp/188614/)
個人向けHMDは、筆者の周りでも購入する人が増えている印象だ。SNSには自宅でVRゲームをする動画の投稿が増え、若者を中心に面白いと人気を集めている。また、最近ではメタバースに現実世界を再現したリアルなオフィス街が話題となっている。
仮想現実オフィスプラットフォームがリリース
中国上海市に本社を置くIT企業「花動伝媒(Huadong Media)」がこのほど、今年2月に公開した中国初の仮想現実(VR)オフィスプラットフォーム「ARK1.0」を「ARK2.0」にバージョンアップした。同社はARK2.0を、人材採用から会議までオフィスの日常業務のほとんどを実行できるオールインワン型の「MaaS(メタバース・アズ・ア・サービス)」として提供する。ARKを運用している企業は今年4月時点で700社以上。すでに約1万人がARKを利用して働いている。最新のVRを使ったビジネスモデルとなっている。
(引用:36Kr Japan https://36kr.jp/188289/)
日本国内もメタバース事業への転換期
日本国内ではパナソニックやキヤノン、セガ、携帯大手三社など続々とメタバース事業に参戦している。また、世界に目を向けてメタバースで提案営業を実施する日本企業もでてきた。
旭川家具のカンディハウスはメタバースで提案営業を行う。カンディハウスの染谷哲義社長は「2021年12月期の売上高で海外販売比率が初めて1割を超えた。中国市場をメタバースのような新ツールで開拓したい」と語った。
(引用:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFC131ID0T10C22A6000000/)
まとめ
日本の国産VRゲーム新興企業が今年の春以降、世界市場に参入する予定で、ソニーはVRゲーム用機器の新商品を開発中だ。2D、3Dアバターを使い活動するVTuber (バーチャルYou Tuberの略)や世界に誇る日本のゲーム、アニメなどのカルチャーは中国でもヒットしているものが多い。日本企業の存在感を示すことができる市場の1つといえる中国AR・VR市場を、今後も注視する必要があるだろう。