世界が注目する中国のインテリア・家具市場

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不動産不況などを背景に今年の中国の景気は減速している一方、中国のインテリア・家具業界は世界中から注目されている。スウェーデン家具販売大手のIKEAは中国市場に力を入れており、多額の投資を行ったことが分かった。また、日本のニトリも中国に100店舗目の出店を達成し、中国で日本企業が成功した事例と言えるだろう。
本記事では、世界から注目される中国のインテリア・家具業界について、昔と現在のトレンドや市場規模についてご紹介する。

世界が注目する中国のインテリア・家具市場

   著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2024年9月4日

メンツを重んじる中国人

(出典:小紅本)

数年前、中国人が好むインテリア・家具といえば高級感のある豪華な物だった。筆者が中国上海市でオーナー物件を探した時、ダイニングテーブルの上にギラギラ輝くシャンデリアや毛皮の絨毯、皮のソファー、大理石風のテーブル、高級そうな壺や絵画などを設置している住宅が多かったように思う。

上海人の不動産業者は「日本人は清潔さを求めてシンプルな家具や内装を選ぶが、中国人はメンツを大事にしているから高級感のある豪華な物件を好む」と言っていた。

不動産業者が言う通り、中国人は名誉や世間体を気にする傾向が日本よりも強いかもしれない。例えば、筆者の友人は遊びに行くとき化粧はしないが全身を様々なブランド物で身に纏う。服はロエベ、アクセサリーはシャネル、バッグはヴィトン、靴はグッチなど、本物もあれば偽物もある。個人差はあれど日本人よりもブランド物が好きな中国人が多いように見受けられ、そういった価値観がインテリア・家具にも反映されているような時代だった。

しかし、昨今は若者の間で好まれる生活様式が変化しているという。

伝統と現代を融合した新しいスタイルが人気

(出典:小紅本)

「高級で豪華な生活スタイル」から、現在は「シンプル」「ミニマル」が若者の間で好まれるようになった。

今の中国の住宅はスマート化が進んでいる。さまざまな機能をまとめて余計な物はカットし、シンプルでミニマルな家を目指している若者が増えた。例えば、昔主流だった棚の取っ手は無くなりプッシュ式の家具が好まれるようになったり、昔流行った模様付きの床は現在無地が好まれ、クリーム色など全体的に明るい色がトレンドとなっている。

さらに、昨今は伝統と現代を融合した「新中国スタイル」が注目されているという。新中国スタイルとは、シノワズリなど東洋の美を感じさせる家具や内装と「スマート化」「シンプル」「ミニマル」などといった現代のトレンドも取り入れたスタイルのこと。日本でいえば、住宅の一室に和室を取り入れる感覚に近いかもしれない。伝統を100%反映させるわけではないため、個性的で且つ好きな物に囲まれ癒しを求める若者から支持を得ている。

数年前から、国潮など中国の伝統や文化の魅力が中国人の若者の間で人気を博しており、インテリア・家具業界においても中国の雰囲気を感じる空間作りは注目度が上がっている。

中国人の日本ブランドに対する反応と家具市場規模

(出典:小紅本)

昔は日本製品の価値が高く、中国人の間で需要が高かった。しかし、コロナ以降経済が悪化した中国では、消費することへの意欲が低下。「日本製品は値段とクオリティに対してコスパが良いとは言えない。物にもよるが、淘宝などネットで探すといくらでも安くてそこそこ良い品質の商品が売っているからそれを買う。劣化したらまたすぐ買い替えられるぐらいの値段が丁度良い」と上海人の友人は言っていた。

彼女の言う通り、インテリア・家具であればネットでさまざまなデザインや性能を持ち、なおかつ安価で比較的良い商品を手に入れることができる。日本企業が同じように競合したところで勝敗の予想は容易につく。

しかし、2014年に中国本土1号店のオープン以来出店を加速させたニトリは、不況を追い風に遂に100店舗の達成を実現した。ニトリの商品はインテリア・家具だけでなく生活雑貨など幅広く取り扱っているので中国企業との差別化を図ることができ、さらにリーズナブルであることが中国人に受け入れられた要因だろう。

また、中国のインテリア・家具市場の規模は今後増加すると予測されている。

中国建築材料流通協会が今年初めに発表したデータによると、23年の全国の一定規模以上事業者の建材・家具売り場での販売額は前年比33・5%増の1兆5500億元に上った。

調査会社、艾瑞諮詢集団(アイリサーチ)は先ごろ発表した「2023年中国インテリア業界研究リポート」で、消費高度化や住宅需要の多様化、産業のデジタル化・スマート化が進む中、25年には中国のインテリア・家具市場の規模が5兆元に、30年には7兆元に膨らむと予測している。

(引用元:AFP BB News  https://www.afpbb.com/articles/-/3514882

まとめ

(出典:小紅本)

中国経済を成り立たせていた不動産業界が不況に陥り、部屋が空いても次の入居者がなかなか決まらないことで住宅価格は徐々に下落している。上海市のあるマンションには日本人駐在員の他、多くの中国人の家族世帯が住んでいる。3LDKの間取りの価格は、3年前までは月25,000元(約50万円)で物価は少しずつ高騰していたが、現在は22,500元(約45万円)と落ちている。住民が引っ越したあともリフォームせず、劣化した家具はそのままにするオーナーが多いと聞く。

また、不動産バブル前に建築を始めたビルが途中で工事をストップすることを余儀なくされ、もし完成したとしても、入居テナントが見つからずいつまで経ってもビルがオープンしないという状態を見かける。

不動産業界がうまくいかなければ、建築や家電、家具業界にも影響が及ぶことので楽観的に見ることはできないが、中国のインテリア・家具業界の将来性は十分にあり、引き続き注目すべきマーケットと言えるだろう。

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