中国で月餅市場が規模拡大 Z世代が新たな消費者層となるか

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中国の旧暦8月15日は「中秋節」という日本ではお月見にあたる日となっている。今年は9月10日~12日までが国民の祝日で、家族で集まり「月餅」という甘い菓子を食べる風習がある。月餅の市場規模は新型コロナウイルスの影響で2020年は若干低迷したものの、2015年から売上は増加傾向にあり、Z世代が主な消費グループと変化してきているという。中国の祝祭食品で幅広い世代と業界から関心の高い月餅市場について紹介する。

中国で月餅市場が規模拡大 Z世代が新たな消費者層となるか

   著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2022年7月15日

中国の月餅商戦

スーパーの月餅売場(ほんの一部)

中秋節とは家族や愛する人と集まり再会できたことへの感謝や、豊作と幸福を祈願するという意味がある。そして中秋節に欠かせない月餅とは丸い焼き菓子で、家族団らんの意味が込められている。様々な伝統的な風習があり、中国では祝日となるほど重要な祭典だ。

中秋節には月餅を持って帰省をしたり、会社から従業員へ配布したり、お中元のように取引先に贈答品として立派な箱に入った月餅をいくつも準備するなど、中秋節の時期は月餅が欠かせない。月餅を購入する人の8割以上が家族または個人で食べるため、約6割が贈答用が目的だと現地メディアは伝えている。

中国スターバックスの月餅

中秋節の1カ月以上前からデパートや各飲食店は月餅を販売、宣伝、予約を開始する。中秋節に入る前の週末は月餅商戦と言っても過言ではない。呼び込みや試食などを駆使して至る所で月餅を販売し人気店では行列も。9月は特に月餅の入ったショッピングバッグを何袋も持っている客をよく見かける。中国のハーゲンダッツやスターバックスも毎年中秋節に合わせて高級月餅を販売している。中国の食品業界にとって中秋節で月餅を売ることは重要なイベントのひとつなのだ。

中国の月餅市場とZ世代

(出典:小红书)

iiMedia Researchによると、2015年から2021年にかけて中国における月餅の売上は増加傾向にあり、131億8000万元から218億1000万元へと成長した。2022年の中国における月餅の売上は243億8000万元に達すると予想されている。

「Z世代」の消費者が月餅を選ぶ際、新しいフレーバーが最初の選択肢となると回答した人は76.5%を占めたという。 広東風月餅を好む人は62.3%。月餅メーカーが異業種連携で投入する限定商品や新要素は、この層が求める可能性が高い。月餅業界ではより健康的で斬新なフレーバーが好まれる傾向が顕著になってきている。

(引用:艾媒咨询 https://www.163.com/dy/article/H61NKDSD0511A1Q1.html

DiorやTiffany、Gucciなど高級ブランドや、高級茶チェーンのTWG TEAや、ファーストフードチェーンのShakeShack、お茶専門カフェ奈雪の茶なども月餅を販売しており、様々な企業が市場に参入してきている。

先日筆者は中国人の友人から卵黄の塩漬けが入っている月餅や、ナツメ餡・蓮の実餡、日本人にも馴染みのある小豆餡の月餅をもらった。月餅は想像以上に甘くてずっしりと重い。かなりボリュームがあるため1つ食べただけで女性だと他は何も口にしたくなくなるほど腹が膨れるという人も居る。筆者はコーヒーを何度も飲まないと食べきれないぐらい甘く感じたが、最近販売されている若年層向けフレーバーの月餅は本当に美味しいと感じる物が多い。

Z世代と見受けられる女性たちが購入していた新フレーバー月餅。1つ16元~330元(約320元~600円)

チーズヨーグルト味やパッションフルーツマンゴー味、赤ワインクランベリー味など洋菓子のような月餅を、最近は特に多くの店で販売しているように見受けられる。また、サクサクのパイ生地で餡を包んである物や、豚肉とザーサイが入ったおかずのような月餅は新しいが、慣れ親しみ易い素朴な味でとても美味しく人気店となっている。また、Z世代の利用者が多い中国のSNS「小红书」では低糖質月餅やいろいろな店の月餅カロリー数をまとめた投稿なども注目されているようだ。

「高級月餅」に中国政府が販売抑制

Gucciの高級月餅(出典:小红书)

見えを張りたい心情や自分のステータスの象徴、さらには取引先への贈り物として「豪華すぎる月餅セット」が例年登場する。1万元(約20万円)する高級ワインや貴金属とセットにするのは珍しくなく、31万元(約620万円)の「住宅付き月餅」、18万元(約360万円)の「純金の仏像付き月餅」も登場した。こうなると月餅はもはや「おまけ」にすぎず、こうした商品は「天価月餅」と呼ばれている。

(引用:AFPBB News https://www.afpbb.com/articles/-/3419862

市場規模が拡大するにつれ、中秋節で欠かせない月餅は高級化が明白になってきた。

中国政府は月餅の価格表示、過剰包装、高価な材料の使用、抱き合わせ販売などに問題がないかを調査。単価500元(約1万円)以上の箱詰めの月餅を問題視し、現地確認とコスト調査を実施、監視を強化している。

統計によると、中国における月餅の包装コストは年間平均25億元を超えるという。包装を主業務とする上場企業の発表資料から、月餅包装業界の粗利率は27.5%と高いこともわかった。

(引用:艾媒咨询 https://www.163.com/dy/article/H61NKDSD0511A1Q1.html

まとめ

中国政府から高級月餅販売の抑制や時代に合わせた消費を見据え、今後は贈答品から手軽に食べられる新しい月餅が市場の更なる消費を促す方法になると予測する。健康志向が高く新しい物へのチャレンジ精神の強いZ世代は熱しやすく冷めやすい傾向にある。そして映えるデザインは自分のSNSへ投稿するうえで非常に重要なポイントだ。Z世代の心をいかに掴むことができるのか各企業は思考錯誤をしている。

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