勢いが止まらない中国の茶系飲料市場|現地人気店とトレンドの特徴とは

ビジネスニュース

お茶大国の中国では、ティードリンク店は安定的な人気を誇っており、市場規模は拡大している。流行りの移り変わりが早い中国市場で、各社がトレンドを察知し、複合的で複雑になってきている消費者のニーズに応えている。本記事では、中国人の生活とお茶事情について、現地の人気ティードリンク店、茶系飲料の現在のトレンドについて紹介する。

勢いが止まらない中国の茶系飲料市場|現地人気店とトレンドの特徴とは

   著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2024年9月9日

中国人の生活とお茶事業

(写真:上海市の広場で中国茶を販売している店)

お茶発祥の地である「お茶の国」の歴史は非常に長く、ただの飲み物としてだけでなく、薬のような役割で健康のためにも飲まれており、遥か昔から中国人の生活に不可欠な存在として親しまれてきた。

最近の中国といえば、アメリカを超えるコーヒーチェーン店舗数を誇るカフェ大国としても知られ、大都市上海の街を歩けば100m圏内にコーヒーチェーン店が何軒も並んでいる。都市部では、日常生活にコーヒーが浸透しているが、お茶はどうだろうか?

(写真:中国人の友人宅にて撮影)

お茶は年齢や性別、地域に関係なく、コーヒー以上に中国人の生活に欠かすことのできないものとして存在し続けていると感じる。

オフィスで働く人やタクシーやバスの運転手、そこら辺を歩いている人、多くの中国人がマイボトルを持ち歩き、好みの茶葉とお湯を入れてマイティーを楽しんでいる。日本茶は何度も淹れることで苦みが出てしまうが、中国茶は少しずつ味が出るため、最初は味が若干薄いが何度もお湯を淹れて長い時間楽しむことができる。

(写真:中国人が経営する会社の来客室に完備されているお茶スペース)

お茶専門店やスーパー銭湯などの商業施設、オフィス、お茶好きの友人宅にもお茶を淹れる中国独特の設備があり、おもてなしをしてくれる。中国茶をいただく際は、日本の湯呑のような大きなコップは使用せず、おちょこのような小さなコップで飲む。このような場でお茶のお代わりをもらった場合、「谢谢」とお礼をいちいち言う必要はなく、机を軽くトントン(2〜3回)叩くことが、ありがとうという意味になる。

中国でお茶に関する記憶に新しいニュースといえば、自殺をしようとした中国人の少女を一杯のお茶が救ったことではないだろうか。ビルから飛び降りようとしているところを警察官などが説得したが、少女は話を聞こうとしなかった。しかし、一杯の温かいミルクティーを用意したことで自殺を防ぐことができたというニュースはとても話題になった。

中国人にとってお茶は特別な飲み物で、普段の生活から切っても切り離せないもののひとつである。そんな中国では、ティードリンク専門店の人気も勢いが止まらない。

現在の中国で勢いのあるティードリンク店とは

(出典:大众点评 喜茶が展開する宋時代の茶文化を表現した店)

中国の茶系飲料店といえば、2012年に創業した「喜茶(HEYTEA)」は誰もが知っている有名チェーン。チーズティーの生みの親といわれており、FENDIやバービーなど様々なブランドとコラボ商品を展開するなどして爆発的な人気を誇っている。お茶をベースにしたフルーツティーや、無脂肪・無糖などカロリーの低いヘルシーなドリンクも人気で、2023年末時点で店舗数は3200店舗を超えた。今年5月には、宋時代の茶文化を表現した中国の歴史を感じるティードリンク1号店を北京にオープンさせ話題となっている。

(写真:上海市にある店舗を撮影)

2008年に成都市温江戸区で誕生した茶百道(ChaPanda)は、現在6000店舗以上を誇る業界3位のティードリンクチェーン店で、今年の4月に香港証券取引所への上場を果たした。「新鮮なフルーツと中国茶」を約束しており、原材料を厳選することでより美味しいドリンクを提供できるよう製造過程に拘っている。中国の銘茶と濃厚なココナッツミルクや様々なフルーツを融合した今時のドリンクが特に中国の若者に人気だ。客は好みのトッピングでカスタマイズできるのでマイドリンクを楽しむ人も多い。中国のSNSでは「80歳まで飲みたい!」と熱狂的なファンもいるほどで、茶百道のカップを片手に街を歩く人をよく見かけるようになった。

(写真:この1年で出店スピードを加速させる霸王茶姫。オープンしてから暫くの間は数時間待ちが当たり前だった。)

2017年に雲南省昆明市で設立された新興ドリンクチェーン霸王茶姫(CHAGEE)は、最近特に勢いのあるブランドだ。2023年1月に1000店舗だったが、現在は4500店舗を超えている。お茶の味だけでなく、中国の伝統的な何とも美しいロゴやパッケージのデザインも人気で、度々SNSに投稿されるのを目にする。霸王茶姫(CHAGEE)は世界最大のウーロン茶農園を所有しており、使用している茶葉やミルクなどは厳密に管理されているため新鮮で安心安全、高品質なことが特徴。タイやマレーシア、シンガポールなどにも100店舗以上展開しているが、今後は国外への動きにも力を入れ、東洋のスターバックスを目指すとしている。

伝統とトレンドを融合した商品が人気

(写真:霸王茶姫(CHAGEE)の洗練されたカップ)

風味が自慢の日本茶に比べ、中国茶は口と鼻いっぱいに広がる香りが特徴だ。これは茶系飲料チェーン店の商品にも共通しており、昨今は特に東洋のお茶独特の香りや風味のする銘茶とトレンドを融合して様々なニーズに応える店が増えている。

昔ながらの伝統的な雰囲気やパッケージ、茶器を使用するなど中国の文化を感じることができるスタイルや他ブランドとのコラボなどがトレンドである。こうしたスタイルは写真映えするため、客が写真をSNSに投稿することが多く自然と宣伝されるのだ。

また、数年前から続く健康志向ブームは衰えるどころか勢いは止まらず、ドリンクにおいてもその波は来ている。黒ゴマやヤマイモ、ナツメなどのトッピングを加えることができるヘルシードリンクも注目されているのだ。

チェーンストア業界団体の中国連鎖経営協会(CCFA)とネット出前サービスを手がける美団傘下の美団新餐飲研究院はこのほど共同発表した「2023年新式ティードリンク研究報告書」で、23年の中国新式ティードリンク市場の規模は1498億元(1元=約20円)に上り、25年には2千億元を突破する見通しを示した。

(引用元:AFPBB News https://www.afpbb.com/articles/-/3484469

まとめ

中国における茶系飲料市場は拡大しているが、続々と新興ドリンクチェーンが参入しているレッドオーシャンという厳しい環境は無視できない。しかし、数百円のティードリンクが消費者にハマり、億万長者になったケースなど夢のある市場でもある。

ティードリンク店が新しくオープンすると話題になることが多く、1時間待ちが当たり前でも一度は飲みに行ってみようと行動する中国人は少なくない。中国人にとって、それほど注目度とニーズが高く、安定的に人気が続く数少ない業界であることは間違いないだろう。

関連記事一覧