中国で推し活が人気 日本のIP商品の消費額が増加 

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現在の中国では、日本のアニメや漫画のキャラクターグッズ購入、聖地巡礼といった推し活がブームとなっている。中国の建国記念日である国慶節には多くの中国人観光客が日本を訪れたが、特に今年話題となった観光場所は東京や大阪、京都などの誰もが知っているエリアではなく「君の名は。」の舞台になった静岡県伊東市にある大室山だった。

中国のSNSでは日本のアニメなど、さまざまな推し活情報が発信されている。国内で開かれるポップアップショップには多くの客が足を運び、日本のIP商品は人気が高いため不景気の中でも消費額は上がっている。本記事では現在の中国における日本のアニメや漫画の反応、消費が増加する日本のIP商品について、若者の消費動向の変化などをお伝えする。

中国で推し活が人気 日本のIP商品の消費額が増加 

   著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2025年1月8日

中国人を魅了する日本の漫画・アニメ文化

(写真:上海市にある水族館の中に設置された巨大なウルトラマンパーク)

中国では日本のアニメなどのキャラクターが非常に高い知名度と影響力を持っていて、さまざまな場所で目にする。日本の国民的アニメであるドラえもんやクレヨンしんちゃん、ちびまる子ちゃんは中国でも人気で、声優のTARAKOさん、大山のぶ代さんが亡くなった際、中国のSNSでは多くの追悼の投稿がされていた。

また、中国で特に人気のキャラクターといえばウルトラマンを無視することはできない。子どもだけでなく親世代からも圧倒的な支持を得ており、日本よりも人気が非常に高い。昨年2023年には、ウルトラマンの玩具など全体の売上はディズニーを抜きシェア1位になった。

(写真:上海市を走るスラムダンクの痛車)

また、スラムダンクやハイキュー、呪術回戦、ちいかわなどのコラボ商品も注目度が高い。スラムダンクのエンディングテーマで起用された「世界が終わるまでは」は中国でもヒットしており、飲食店のBGMとして使われていたり、学校の卒業式で子どもたちが中国語の歌詞に替えて歌っている姿を目にしたときには驚いた。

井上雄彦監督・脚本による日本のアニメーション映画『THE FIRST SLAM DUNK』は2023年の中国市場で公開された海外映画における興行収入ランキングで3位にランクインするほどの大ヒット。何度も映画館に足を運ぶ人もおり、上映最終日には多くのファンが駆けつけた。

計4ヶ月、122日間に及ぶ上映期間中の観客動員数は約1817万8000人に上り、6億5900万元(約131億8000万円)を超える興行収入を上げた。大反響のため、5月12日、6月9日、7月18日と、これまでに3回、上映期間が延長されていた。

(引用元:中国国際放送局 
https://japanese.cri.cn/2023/08/28/ARTIPiW0W4AHYjGqKHR0QwEq230828.shtml

(写真:ちいかわ、ちびまる子ちゃんのグッズを飾るタクシー)

タクシーを呼ぶと、中年の男性運転手の車には日本のアニメキャラクターの商品が並び、会社に行くとオフィスのデスクにもこれまた日本のキャラクターグッズを飾っている人を多く見かける。スーパーやコンビニの飲食物のパッケージには日本のキャラクターが印刷され、商業施設には日本のキャラクターグッズが数多く売られている。

中国における日本のIP(知的財産権)商品は多種多様であり、コスパ重視の不景気な世の中だからこそ癒しや喜びを提供してくれる特別感のあるIP商品の人気は高い。

コスパ重視の中国でも日本アニメグッズ、IP商品の消費額増加

(写真:POPMARTと日本IP)

2023年1月、日本の漫画やアニメ、ゲームをメインとした専門店が入ったモール「上海百聯ZX創趣場」がオープンした。中国の秋葉原、オタクモールとも呼ばれており、日本のIP商品のきっかけとなった。また、同じく上海市にある「静安大悦城」も新しいオタクの聖地となっており、グッズを購入する人、コスプレをする人などアニメ好きの若者でいつも賑わっている。

中国では日本の漫画やアニメのキャラクターグッズの購入ブームが巻き起こり、Z世代が消費を牽引している。日本のIP商品を販売することで企業への影響は大きく、さまざまな企業がコラボ商品を販売。複合型施設では日本の有名キャラクターグッズが並んだポップアップショップを頻繁に展開するなどして多くの若い世代が集まっている。

中国の雑貨店大手の名創優品(メイソウ、MINISO)が日本のアニメちいかわとコラボした商品を販売した際、ポップアップストアにはオープンする前日から徹夜で並ぶファンなど想定を超える客が殺到し入店制限をする店舗もあった。

名創優品によれば、上海市静安区の大悦城(ジョイシティ)に開設したポップアップストアの1号店では、3月29日の開店から3日間の売り上げが800万元(約1億6752万円)を突破。平均客単価は1000元(約2万941円)を超えたという。

(引用元:東洋経済 :中国の若者が日本の「ちいかわ」グッズに長蛇の列
https://toyokeizai.net/articles/-/747406

「グッズ購入」がブームとなるにつれて、中国の多くの都市のグッズショップが商業施設や商業エリアに新しい風を吹き込み、新しい観光地となっている場所さえある。工聯CCがある杭州湖浜商業圏を昨年訪れた人の数は延べ4000万人以上、売上高は165億9000万元に達した。サブカルチャーが大衆化し、二次元関連商品市場が今、ブルーオーシャンになっている。市場調査会社・艾瑞諮詢(iResearch)の統計によると、2023年、中国の二次元業界は前年比27.6%増の2219億元規模にまで拡大した。

(引用元:人民網 :中国の若者の間で流行する「推し」のグッズ購入
http://j.people.com.cn/n3/2024/0729/c206603-20199396.html

不景気続く中国でなぜ日本のIPグッズは売れるのか

(写真:上海市に期間限定で設置されたドラゴンボールの展示場)

現在の中国は不動産バブルなどの影響により景気は弱い動きが続き、若者は理性的な消費ををする傾向にある。しかし、不景気でも日本のIP商品の消費が増えている理由は、SNSの普及による宣伝効果の他、若者の消費動向が変化していることに関係していると考える。

中国国民メンタルヘルス発展報告によると、18歳から34歳の若者の不安と憂鬱(ゆううつ)のレベルは他の年齢層よりも高く、仕事、家庭、収入、健康からのストレスが不安を招く要因となっている。これにより、若者の消費行動は機能重視から感情(エモーション)重視へと転換し、精神的な満足感を得られるかどうかは若者が商品を選択する際に重視する要素となっている。感情の要求に合致し、精神的な満足感をもたらすエモ(エモーショナル)消費が注目され、消費の拡大につながる新たな成長ポイントとなっている。

(引用元:中国国際放送 :中国の若者の間でエモ消費が流行
https://japanese.cri.cn/2024/07/25/ARTITjlR4lieLQWgMWs8kXej240725.shtml

従来型の消費とは異なり、2次元の消費には社交的という属性がはっきりと見られる。この消費者層は精神的な充足感を強く求め、情緒的価値を重視する。オンラインに比べ、実店舗で趣味を同じくする仲間と一緒に「穀子(グッズ)店」巡りを楽しむことは、若者の社交に対するニーズをより満たすことにつながり、商業施設にとっては「穀子店」を呼び込むことで集客が見込める。

上海市の商業施設「上海世茂広場」の文婧(ぶん・せい)助理総経理は「若い消費者層の台頭により、精神的な満足感を重視する『情緒的消費』が常に強調され、体験と没入感が特に重要となっている。そのため『2次元』業態の配置は、実店舗商業施設に新鮮さや新たな商業的価値をもたらすことができる」と語った。

(引用元:(引用:新華網 :「グッズエコノミー」で商業施設再生 2次元ファンが交流求め来店
https://00m.in/cYKey

自分を喜ばせるための消費をすることで、物欲が満たされるだけにとどまらず、日常生活において精神的な満足感を得られることに繋がり、日本IP商品の消費を押し上げている理由のひとつとなっているのだろう。

まとめ

(写真:中国のミルクティーブランド「檸季(Ningji)」と中国でも人気のポケモンのコラボ商品)

中国における日本のIP商品ブームは今に始まったことではなく、コロナ前から日系含め多くの企業が参戦している。一方でIP商品を販売するうえで必要になってくる授権費用やデザイン料は高額であり、人気ブランドとコラボするためのコストは無視できない。

消費者の関心は次から次に移り変わり、流行の影響を受けやすい商品であることから生産スピードは非常に重要であり、国内に工場があるか否か、工場がない場合でも国内生産を委託できるかどうかが肝心になってくるだろう。

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