いま中国のトレンドは「スマート化」:拡大するスマート家電市場

ビジネスニュース

中国では現在、生活の質を上げてくれる「スマート製品」が人気を集めている。スマート検査ロボットや、スマートホーム、スマート家電など、あらゆる「スマート化」が進んでいる。家電全体の売上はコロナ禍で低迷していたが、現在はコロナ前の水準まで回復しつつある。コロナ禍の影響を受けた家電製品市場だが、一部のスマート家電は前年同期比で大幅増となる凄まじい成長を記録した。当記事では中国におけるスマート製品市場について紹介する。

拡大する中国のスマート家電市場

   著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2022年9月1日

スマート製品市場が急成長

(出典:小红书)

炊飯器や電子レンジ、エアコン、ライト、カーテン、カメラ、テレビ、スピーカーなどなど。無数のスマート家電や設備が存在する、中国のスマート製品市場はここ数年で急成長している。

2021年の春節中、天猫プラットフォームのお掃除ロボットの売上が前年同期比で約100%増、窓拭きロボットが約300%増、床拭きロボットの売上が約1800%増を記録した。
(引用:IoTオウンドメディア https://smarthome-media.com/china/

中国のスマートホーム市場規模は、2016年の2608億5000万元(約4兆7000億円)から2020年には5144億7000万元(約9兆3000億円)に拡大し、今後3年間(2021~2023年)の年平均成長率は約38.13%になるとみられている。
(引用:36Kr Japan https://36kr.jp/171361/

中国は空気が悪く黄砂があること、家の建付けが悪かったりで窓や床がすぐ汚れる。毎日掃除機をかけていても自宅の床を水拭きすると雑巾が真っ黒になってしまい、筆者は言葉を失った。知人は自宅に床拭きロボットを導入したことで生活の質がグッと上がったこと、そして何より掃除がラクに済むことに感動していた。

使用場所は一般家庭だけに留まらず、筆者宅の近所にある小さい不動産屋や飲食店でも窓拭きロボットを使用して開店準備をしている様子をよく見かける。ここ数年でスマート製品は中国人にとってかなり身近になってきていると感じる。

家事をスマート化したい中国の若者

(出典:小红书)

中国人の若者たちの間で家事を負担に感じる層の割合が増加していると、現地ニュースが伝えた。上海市に住む20代知人は「仕事で疲れて帰宅後は家事をする気力がない。6.18のセールでは掃除機ロボットを購入した。スマホで遠隔操作が可能だから外出先でも問題なく家事ができる。あと空气炸锅(エアフライヤー)も購入して料理する手間を省いている。もちろん3食デリバリーする日もあるけどね」と話してくれた。

中国人の若者が家事を負担に感じる理由の1つに「過酷な労働状況」が関係している。現代を生きる中国の若年層は、「働きすぎ日本」出身の筆者から見てもブラック勤務体系だと感じることが多い。中国では「996」(午前9時から午後9時まで週6日間勤務)という無慈悲な労働状況を強いられることが問題となっている。

ある調査によると、中国の勤労者の9割近くが残業をしており、そのうち45.5%は週2~3日残業し、24.7%がほぼ毎日残業している。「996勤務」よりひどい長時間労働の職場もあり、「午前0時から次の午前0時まで、週7日働く」という「007勤務」という言葉もある。寝る間もなく24時間働かされるような過酷労働のたとえだ。

(引用:AFPBB News https://www.afpbb.com/articles/from-cns/3402187

最近では残業続きで過労死した若者のニュースを目にすることもある。日本の厚生労働省が令和3年(2021年)に出した報告書によると、日本人の1日平均労働時間は7時間47分。一方、中国の若者の勤務時間は10時間を超えると回答した人が40%以上となったという。

中国のスタートアップ情報サイト「36Kr」が発表した「2021若者退勤実態報告書」によりますと、午後6時前に退勤できる「幸運児」はわずか22%しかおらず、午後8時以降も残業をしている人が35%、明け方近くまで働いている人が8%を占めているとのこと。この調査は23歳~35歳のサラリーマン1009人を対象に行ったものである。

また、1日の勤務時間が8時間以下の勤労者は37.07%にとどまり、42.22%の勤労者が1日10時間以上働いている。さらに、勤務時間10時間以上の若者のうち、87%以上が北京、上海、広州(Guangzhou)、杭州(Hangzhou)、武漢(Wuhan)、成都(Chengdu)、南京(Nanjing)など大都市にいることが分かった。

(引用:AFPBB News https://www.afpbb.com/articles/-/3381224

こういった背景も理由の1つとなり、中国の若者がスマート製品の消費を牽引しているのだ。また、スマホと家電が連携しているというのは中国の若者にとってスマート家電を購入する大きな決め手である。「中国ではスマホがないと生きていけない」と、筆者は中国に来て心底思うようになった。公共交通機関や施設に入るとき、店で注文・支払いをするときなど、生活するうえでスマホは必要不可欠となっている。中国人の若者にとって一番身近で使い慣れているアイテムを使用するだけで、家事の負担を減らすことができるスマート家電は魅力的だろう。

中国の高齢者向けサービスにもスマート機能

少子高齢化が止まらない中国だが、日本のパナソニックが、中国で観光や養老事業などを展開する企業と提携し、2022年10月の入居開始に向け中国江蘇省宜興(ぎこう)市に高齢者向け住宅のショールームを開設した。

用地面積約400万平方メートル(東京ドーム約80個分)の敷地内に、パナソニックの設備を全面的に導入した住宅を集めた区画「雅達・松下社区」を整備。約30万平方メートルに計1170戸を展開する。(引用:産経ニュース https://www.sankei.com/article/20210719-ZPRTUYWH7NKJPJJA673ENQEMEQ/

座って腕を置くと脈拍などを測ることができるトイレ。体脂肪率や血圧などが自動測定され、スマホのアプリにデータが保存されるほか、その数値を基にその日に最適な健康サービスメニューを提案してくれる。また、快適な睡眠環境を作るため、カーテンの開け閉めや室内の照明などの調整が、スマートフォンでできる寝室も導入される。

(引用:FNNプライムオンライン https://www.fnn.jp/articles/-/213010

中国全体でスマート化の流れが拡大

数年前、中国国内メーカーが世界初となる「会話が可能な中国版洗濯機」を開発し、最近は中国発のスマートホームドア技術や、中国広東省第二人民医院には全国初となるスマート病室が完成。便器にマットレス、枕までスマート化していて利用者の健康状態をチェックできるという。中国の若者に売れているスマート製品だが、高齢者向けサービスへも続々と展開され、各企業が参入している。しかし、スマート化のし過ぎで高齢者がうまく扱えない機能があるなど、幅広い世代へ浸透させるには課題がまだまだ多い市場だ。

関連記事一覧