ラトビアの秋の楽しみ方

日本では年々夏の暑い時期が長くなり、暦上は秋でも気温を見ると夏、ということが頻発している。しかし欧州の北部に位置するラトビアにはしっかり秋が存在して、厳しい冬が来る前の2ヶ月間ほどを皆楽しんでいる。今回は現地の人々の秋の楽しみ方、世代ごとの楽しみ方をレポートする。
ラトビアの秋の楽しみ方
著者:ラトビアgram fellow さえきあき
公開日:2025年1月5日
ラトビアの秋の気候

(引用元:time and date
https://www.timeanddate.com/weather/latvia/riga/historic)
東欧とも北欧とも言い難い場所に位置するラトビアは北緯56度あたり、北海道よりもさらに上のカムチャツカ半島とほぼ同じ緯度に位置する。冬は長く寒い一方で、夏は毎年エアコンがいらない程度の暑さにしかならず、気温が30度に達しそうになると現地人は暑すぎる!異常気象だ!と騒ぎ出す。
9月になると暑さがひいて薄手のコートやダウンが必要になり、ここから2ヶ月ほどは「秋」といえる気候になる。この気候がちょうどいい時期にいろいろな場所へ人々は出かけていく。
楽しみ方①:秋の景勝地Siguldaへ
首都リガから車で1時間ほど北上したところにあるのが「Sigulda」という景勝地。平坦な土地が広がるラトビアには珍しく、起伏のある土地で秋色の山や森が一面に広がる形式が見られる。昔あった城やマナーハウス(荘園領主の豪華な家)が綺麗に保存されていて、秋の観光地として最も人気が高い。


歴史的な観光地を少し離れると様々なアウトドアアクティビティが楽しめる広い場所に出て、子どもと一緒に何時間でも遊べる場所になっている。筆者が訪れた週末の午後は、秋の人気スポットということもあり人気アトラクションには行列ができていた。


楽しみ方②:ハロウィーンイベントへ
10月のイベントといえばハロウィンという認識はラトビア人の中にもあるようで、お店のデコレーションがハロウィン調になったり、Facebookではハロウィン関連イベントが宣伝されている。今年はリガの中心地から車で20分ほどのところにあるLucavsala という島に、ハロウィンをテーマにした小さなテーマパークが作られた。
インスタグラムなどで宣伝が打たれて、若い子たちがこぞって訪れていた。写真映えするスポットがたくさん用意されていて、ちょうど日本のUSJで行われるハロウィンイベントの縮小版といった感じで、来訪者を怖がらせるようなコスプレをした人たちがパーク内を駆け回っていた。
パーク内には移動式のアトラクションやクレーンゲームが設置されており、ゲームセンター文化がないラトビア人にとってはかなりテンションのあがるものだったようで、ぬいぐるみを取ろうと硬貨をつぎ込んでいた。

楽しみ方③:ラトビア国立劇場へ
こちらはどちらかというと年配の方に人気。夏の期間は劇場はオフシーズンとなり、バレエダンサーやオペラ歌手たちはバカンスに入っている。新学期が始まると同時に劇場も新シーズンがスタートし、平日の夜と、土日は昼と夜の2部にわたってオペラやバレエ、子ども向けコンサートが上演される。
バレエや子ども向けコンサートは視覚的な分かりやすさから幅広い年齢層が訪れるが、オペラとなると基本的にはイタリア語の字幕を追うか、全体のストーリーを知っておく必要があるため、家族で来るということにはあまりならず、年配の夫婦やカップルが多い。
こんなに毎日のように様々な作品が上演されているのに、どの演目でも毎回ほぼ満席というのがすごいことだ。12月のクリスマスシーズンには大人気の「くるみ割り人形」が毎週のように上演されるのだが、2ヶ月前でもすでにほぼ売り切れ。ぽつぽつとひとり用の席が空いているのみである。昨今、芸術文化の分野ではプレイヤーとして活躍したい人の数が多いのに比べて、それを見たいと思う人が少ないと話題となっているが、ラトビアにおいてはその心配はなさそうである。


まとめ
ラトビアの秋は、ただ季節を味わうだけでなく、やがて来る長い冬に備えた貴重なひとときでもある。Siguldaの紅葉に包まれた山々での散策や、ハロウィンの賑やかなイベント、国立劇場での伝統的な舞台鑑賞など、それぞれの世代がこの短い季節に心を弾ませ、自然や文化を存分に楽しんでいる。限られた秋の時間を惜しむように屋外へ繰り出し、季節の移ろいを大切に過ごすラトビアの人々。その姿には、自然と寄り添いながら日常を慈しむ心が息づいている。
