IT先進国エストニアのモビリティサービスの担い手「Bolt」
日本のモビリティサービスといえば、配車サービスやフードデリバリーを総合的に行う企業としてUberを思い浮かべる人が多いだろう。
しかし、エストニアで有名なモビリティサービスの提供者といえば、ユニコーン企業「Bolt」である。日本では事業を展開していないが、エストニア発祥でヨーロッパ、ひいてはアフリカにまで事業を展開する、国を代表する企業である。当記事では、起業後10年もしないうちに大企業へと成長したエストニア発の「Bolt」について紹介する。
IT先進国エストニアのモビリティサービスの担い手「Bolt」
著者:エストニアgram fellow さえきあき
公開日:2023年2月13日
- ドナルド・トランプ前大統領圧勝!米国大統領選挙|海外の反応
- 大谷選手の活躍と初のワールドシリーズ制覇!2024ワールドシリーズ|海外の反応
- 早くも衆院解散!石破茂新首相誕生|海外の反応
- 大谷翔平 史上初の50本塁打50盗塁達成!MLB界に衝撃走る|海外の反応
Boltの歴史
2013年、Boltを立ち上げたのは起業当時19歳のMarkus Villig。兄とタッグを組んで事業を始めた当初は配車サービスのみで、サービス名も「Taxify」という、現在とは異なる名称だった。その後名称を変え、電動スクーターのシェア、フードデリバリーと事業を拡大していき、2021年からはカーシェアリング事業にも参戦した。
日本でよく見る黒い配達リュックではなく、真緑のリュックを背負ったドライバーたちを街中でよく見かける。
特筆すべきは配車サービスの普及範囲で、ヨーロッパを中心にアフリカ、アジア、ラテンアメリカなど世界の500都市以上と幅広い。このように配車サービスから始まったBoltは、今やエストニアを代表する企業の一つとなっている。
(引用:Bolt https://bolt.eu/ )
次項ではBoltのサービスの中から一つ、電動スクーターを取り上げてその使い方を説明する。
シェア電動スクーターの使い方
2019年からサービスを開始した電動スクーターシェア。日本では馴染みのないサービスだが、一体どのようにして使用するのか。
まずBoltのアプリをダウンロードし、決済方法や電話番号など必要事項を入力をする。そして、利用可能な電動スクーターの場所を地図で探す。見つけたら、スクーターが置いてある場所へ行き、車体に付いているQRコードをアプリで読み込みアンロックする。これでスクーターが使える状態となり、地面を蹴りだすと発進する。アクセル、ブレーキ、ベルの3つの要素で構成された簡単な操作だ。目的地到着後はアプリが示す駐車可能な場所にスクーターを置き、置いた場所の写真を撮り乗車終了となる。料金はアンロック費用と使用分数とで計算される。
(引用:Bolt https://bolt.eu/en/scooters/ )
この便利な電動スクーター、実はエストニアでは冬季の間サービスが一時停止する。なぜなら、エストニアはほぼ北欧といえるほどの高緯度地域に位置し、冬は降雪のない日の方が珍しいくらいの雪国だからだ。道路や歩道が凍結していてスクーターごと転倒する可能性があるため、安全上の理由から使用期間が限られている。
ちなみに、このアプリ1つでスクーター利用と配車サービスどちらもが使えるため、大変便利である。
Boltの成長理由
なぜBoltは大企業へと成長したのか。創業者はその理由を「パートナー・フレンドリーであるから。Boltで働くパートナー(運転手)は他のプラットフォームで働くよりも多くの賃金が稼げるから。」と述べている。
運転手が他のプラットフォームより賃金を稼げている仕組みは単純で、Boltが設定するプラットフォーム利用手数料は他社より安くなっている。短期的に見ると企業の利益は少なくなるが、長期的に見ると、運転手の増加→配車予約から車到着までの時間が短縮されて利便性が向上→ユーザー数増加、とリターンが大きくなる。Boltの成長は、利益とユーザーの利便性を考えるのではなく、サービスを支える運転手のことを配慮した結果なのだ。
まとめ
小国エストニア発祥の企業Boltは、創業10年も経たないうちに国を代表する大企業へと変貌を遂げた。その背景のひとつには、運転手に優しい仕組みづくりがあった。小国から生まれたユニコーン企業から世界にはばたく企業となるための秘訣が学べるだろう。今後の成長や事業の展開に注目だ。