エストニアにおける環境負荷要因

エストニア

地球環境の保護に関しては、いまや世界中でどう対処するか熟考されている重要な問題の一つである。エストニアが環境に与える負荷を、Ecological Footprint(エコロジカル・フットプリント)を用いて数値化したところ、その値はヨーロッパ諸国の平均値よりも高いことが発表された。なぜ環境負荷が他国よりも高いのか、その理由を探っていく。

エストニアにおける環境負荷要因

著者:エストニアgram fellow さえきあき
公開日:2023年3月6日

エストニアにおける環境負荷要因

個人、企業、その他活動など人間活動が地球の環境に与える影響を数値化したものが「Ecological Footprint」(もしくはEnvironmental Footprint)である。この数値が大きければ大きいほど、環境に負荷を与えていることを意味する。

エストニアのエコロジカル・フットプリントの値は3.8。ヨーロッでの平均値が2.9であるため、ヨーロッパア諸国の平均よりも大きな負荷を環境にかけていることがわかる。

この平均値の2.9という値も低いものとは言えず、科学者によるとエコロジカル・フットプリントの値が2を越えてしまうと、生活環境と自然環境の保全に大きなリスクが生じるという。

引用元:Ethical Choice https://myethicalchoice.com/journal/sustainable/ecological-footprint/
引用元:ERR News https://news.err.ee/1608889730/study-estonians-environmental-footprint-larger-than-european-average

環境負荷を高める原因

前項のエコロジカル・フットプリントの値は、様々な要因が組み合わさった総合的な値である。その値を大きくしている最大の要因は、エストニアのエネルギー・暖房の分野と食生活にあると指摘されている。これら2つの観点からエストニアが抱える問題について説明する。

エネルギー・暖房の運用

エストニアのエネルギー消費量の多さは冬が極寒で暖房の必要性が高いためだが、それに加えて暖房に薪が多く使われていることも原因である。

ヨーロッパでは一般的に、地域の複数の建物に温水や蒸気などの熱源をパイプを通して供給する、地域暖房と呼ばれるシステムが張り巡らされている。エストニアでもそのようなシステムが普及しており、アパートなどの暖房は写真の通り地域暖房を使用したパネルヒーターである。

しかし、昔ながらの一軒家では今も薪を燃やして暖を得ているケースがある。

パネルヒーターと熱を運ぶパイプ

エストニアで薪暖房を使っている人の半分が地域暖房に切り替えた場合、エコロジカル・フットプリントは0.4ポイント減少すると予想されている。

食文化に由来する環境負荷

食に関していえば、エストニアでは栄養士が推奨するよりも多くの肉が食べられており、食文化的にも魚よりも肉を使った料理が多く、年間でひとり当たり65kgの肉を食べている計算になるそうだ。

加えて、肉の中でも特に豚肉をよく食べる文化で、豚肉の生産・消費が全ての食品の中で最もエコロジカル・フットプリントの上昇に加担しているという。そのため、食品カテゴリにおいて他国よりもエコロジカル・フットプリントの値が大きくなるのだ。

引用元:Estonian Food https://estonianfood.eu/en/content/meat

まとめ

先進的なIT事業で知名度を伸ばしつつある国エストニアだが、環境負荷に対する取り組みを先陣を切って進めてきたヨーロッパ諸国の平均水準にまだ追いついていない。しかし、国土が小さく人口も少ないため、新しい取り組みを行いやすい利点がある。環境負荷軽減はどの国も抱える普遍的な問題であり、日本の取り組みが参考になる未来があるかもしれない。また、エストニアの今後の取り組みが、日本にとっての参考事例になる可能性もある。

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