スペインといえばZARA!アパレル世界最大手INDITEX
スペインのアパレルといえば真っ先にZARAを思い浮かべる人が多いかもしれない。世界中の若者に圧倒的人気を誇る、日本でも大人気のファッションブランドである。
INDITEXはスペインに本社を置くアパレル世界最大手メーカーであり、ここスペインでは、街を歩けばINDITEX傘下のブランドストアを至る所で目にする。日本にはZARA・ZARA HOME・Barshka(実店舗は2022年に閉店しECのみ)・Stradivariusの4ブランドが進出しているが、実はまだ他にも日本未上陸の人気ブランドを展開している。
本記事ではINDITEXが業界トップを維持し続けるための戦略や、これからの新しい取り組みについてお伝えする。
スペインといえばZARA!アパレル世界最大手INDITEX
著者:スペインgramフェロー 北田ミヤ
公開日:2024年3月5日
世界最大手のアパレル企業INDITEX
INDITEX (Industria de Diseño Textil, S.A.)はアパレルの世界最大手のメーカーで、世界のカジュアル衣料売り上げ第1位を誇る。
設立は1985年、本社所在地はスペインの北西部に位置する大西洋に面した緑豊かな地方、ガリシア州ア・コルーニャ県アルテイショ。
他社同様COVID-19の煽りを受けたもののデジタル戦略の実行などが功を奏し、2023年の上半期の収益報告では売上高は13.5%、利益は40%増加したと発表し、予想を上回る結果となった。同10月末までの9か月間の純利益は41億ユーロ(44億2000万ドル)に達し、前年同期から32.5%増加した。年末のホリデーシーズンには11-12月の6週間で売上高が14%増加し、株式を過去最高に押し上げた。
(参考:Inditex Sees Sales and Profits Rise in First Half of 2023 | BoF
https://www.businessoffashion.com/news/retail/inditex-sees-sales-and-profits-rise-in-first-half-of-2023/)
(参考:Inditex SA Company Profile – Inditex SA Overview – GlobalData
https://www.globaldata.com/company-profile/inditex-sa/)
(参考:Zara owner Inditex reports strong holiday sales and lifts margin outlook | Reuters
https://www.reuters.com/business/retail-consumer/zara-owner-inditexs-nine-month-profit-soars-325-sales-growth-slows-down-2023-12-13/)
主要子会社8ブランドの特徴
冒頭でも述べた通り、INDITEX傘下のブランドで日本に進出しているのはZARA・ZARA HOME・Barshka(ECのみ)・Stradivariusの4ブランドで、日本国内で圧倒的知名度と人気を誇るのはZARAであろう。
だがここスペインでは他にも日本未上陸の人気ブランドを展開している。以下、主要8ブランドの特徴を紹介する。
① ZARA
トレンドを押さえたデザインとリーズナブルな価格帯で世界的に人気のブランド。
② ZARA HOME
日常生活に洗練されたデザインを― 食器、インテリア、日用品、犬用品まで幅広いラインナップ。
③ PULL&BEAR (70か国に900店舗)
スペインはじめイタリア・ポルトガル・フランスなどヨーロッパ圏を中心に展開。最新のグローバルなアート・音楽を遊び心のあるデザインでミックスした若者向けブランド。
④ Massimo Dutti
高品質で洗練されたデザイン、ZARA世代よりも大人向けのブランド。
⑤ Bershka (75か国に973店舗)
日本では2022年よりECのみの販売となったが、ZARAの妹的なブランドで最新のトレンドを取り入れた若者に人気のブランド。
⑥ Stradivarius (62か国に915店舗)
トレンドに左右されない永続的スタイルを提案。
⑦ OYSHO
革新的デザイン、品質、SDGsにコミットしたスポーツ・レジャーのためのブランド。ルームウェアやインナーにも定評がある。
⑧ Uterqüe
スカーフ、サングラス、アクセサリーなどに特化したブランド。2021年に実店舗は全て閉鎖したがMassimo Dutti内のブランドとして残っている。
(参考:ZARA https://www.inditex.com/itxcomweb/en/brands)
加速するデジタル戦略
COVID-19による業績不振が引き金となり世界規模で小型店舗を中心とした1000店舗以上を閉鎖、日本国内でもZARAはじめ、ZARA Homeなどの店舗数が減少した。(日本国内のZARAは1885店(122店舗減)、ZARA Homeが427店(55店舗減)
しかし、そこにはマイナス要因ばかりでなくデジタル戦略の加速によるものがあると考えられる。INDITEXは2020-2022にかけて10億ユーロの投資を行い自社アプリを用いたデジタル体験の向上・デジタル化に対応可能な大型店舗の出店強化を打ち出した。
具体的には以下の通り。
◆店頭でも使えるEC機能の拡充
・店舗ごとに商品位置を検索できる「click&find」
・試着室を予約できる「click&try」
・アプリ購入後の店頭受け取り「click&go」
◆店頭業務オペレーションのデジタル化
・デジタル化に対応した店舗リニューアルの促進。
・倉庫のみならず店舗から直接顧客へ配送できるサービスをスタート。
・全商品において各国店舗とECにおける在庫一元化を実現。
筆者自宅から徒歩10分のZARAも2024.2にデジタル化に対応した大型店へリニューアルオープンしたばかりだが、早速地元の買い物客で賑わいをみせていた。
(参考:Medium https://medium.com/sfiacorporation/inditex-zara-digital-transformation)
(参考:ZARA1200店閉鎖、世界の2割弱 EC比率を25%に – 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60221280R10C20A6TJC000/?n_cid=SNSTW005)
新しい取り組み「Sustainability Innovation Hub」
業界トップ企業としてSDGsに対する社会的な注目も高まっている。
これまでもINDITEXは衣類のリサイクルをはじめ、リサイクルされた材料の使用や再生可能エネルギーの使用など様々な取り組みを行ってきた。
最近では2022年、ビル・ゲイツのブレークスルー・エナジー・ベンチャーズが率いる繊維リサイクル業者のCircによる3000万ドルのfunding roundに参加。
同4月にはINDITEXとCircによるリサイクル素材で作られたZARA Collectionを発表。
同社はまた、フィンランドに拠点を置くInfinited Fiberの今後の生産の30%を3年間で購入する、1億ユーロの取引を実施。リサイクル会社が更に技術を拡大するのに役立つことが期待されている。
これらの取り組みの背景には4年前に立ち上げられた「Sustainability Innovation Hub」がある。
さらに2040年までにネットカーボンニュートラルになることを宣言している。
(参考:Zara Owner Inditex Considers Fund to Back Environmental Start-Ups | BoF
https://www.businessoffashion.com/news/sustainability/zara-owner-inditex-considers-fund-to-back-environmental-startups)
まとめ
ファッション小売業界の競争は激化している。特に中国のSHEINはZ世代を中心に近年急成長しているアパレルブランドであり、INDITEXはじめ日本のファストリテイリングやH&Mなどのファストファッション業界に脅威をもたらしている。
ところが、ブランドの人気が高まるにつれ製造プロセスにおける労働環境の問題や製品品質への批判、サプライチェーンにおける搾取への非難やSDGsの懸念など問題視される点も多く、様々な課題をつきつけられているという側面もある。
ファッション業界を牽引する企業は、今後ますます生産及び廃棄プロセスの透明性なども含め、社会全体が注目する複雑な問題に対処していくことが求められるのではないだろうか。
(参考:Why is Shein bad? Beneath the surface of cheap fashio https://www.greenhive.io/blog/why-is-shein-bad)