朝からアルコール?!スペインの豊かな酒文化

スペイン

昨今では日本でも、Cavaやスペイン産ワイン、さらには「ビール界のドンペリ」と称されるINEDITなど、スペインのお酒を気軽に楽しむことができる。スペインはそれ以上に奥深い酒文化を持ち、さまざまな種類のアルコールが日常的に親しまれている。特に週末や祝日ともなると、街中や海沿いのテラス席で朝から人々がアルコールを楽しむ光景は決して珍しいものではない。

スペインの酒類市場は多様な製品と文化に支えられ、近年安定した成長を遂げている。本記事では、日本ではあまり見かけることのないスペインならではのアルコール類に加え、近年急成長しているクラフトスピリッツなど、スペインのお酒事情を紹介する。

朝からアルコール?!スペインの豊かな酒文化

   著者:スペインgramフェロー 北田ミヤ
公開日:2025年7月25日

スペインの酒類市場と動向

スペインは総面積約96万ヘクタール以上を誇り、イタリアやフランスを上回る世界最大のブドウ栽培面積を持つ。ワインの生産量もトップクラスであり、その豊かな酒文化が広く根付いている。また、スペイン独自のバル文化の影響もあり、ワインに加えてビールやスピリッツも日常的に楽しまれている。

酒類総市場の規模は、2030年までに年平均成長率(CAGR)3.67%で推移し、約433億7,800万ユーロに達すると予測されている。中でもクラフトスピリッツ市場の成長は著しく、2023年の収益は約5億680万ユーロに達した。2030年にはCAGR20.8%で推移し、約19億600万ユーロに達すると見込まれていて、その急速な市場拡大が注目されている。

(写真:ハウスワインは大体2~3ユーロで楽しめる)

急成長!スペインのクラフトスピリッツ

日本でも独自のボタニカルを使用したクラフトジンや個性的なクラフトウイスキーが人気を集めているが、世界的なトレンドとなっているクラフトスピリッツは、ここスペインでもその地位が確立されつつある。スペインでは伝統的なレシピを活かしながら、独自のフレーバーや製法を取り入れたスピリッツが増加しており、その存在感を強くしている。

日本同様、スペインでもクラフトジン(Ginebro Artesanal)ブームが続いており、地元産のハーブやスパイスを使用したものが人気だ。また、カナリア諸島やアンダルシア地方では、サトウキビ由来のクラフトラム(Ron Artesanal)が生産されていたり、比較的新しいウイスキー市場では、スペインのシェリー樽で熟成されたクラフトウイスキー(Whisky Artesanal)が登場し、多様なハーブや果実を使用したクラフトリキュール(Licores Artesanales)も人気を集めている。ブドウの搾りかすを蒸留したスペイン版グラッパのようなクラフトオルホ(Orujo Artesanal)は、ガリシア地方を中心に多くのクラフト蒸留所が手作りで生産している。

クラフトジンの人気を皮切りに、ラムやウイスキーなどの蒸留酒市場も拡大しており、スペインでは伝統と革新が融合した魅力的なクラフトスピリッツから今後も目が離せない。

(写真:スーパーのビール売り場)

スペインならではのアルコール類

Vermut(ベルムー)
ハーブやスパイスで風味付けされたフレーバードワインの一種。イタリアやフランスのベルモットが有名だが、スペイン独自のスタイルも確立されていて、特に食前酒として人気がある。バルでは「Vermut de grifo」(樽から注ぐベルムー)という自家製を提供する店が多い。 自家製ベルムーはハーブの香りが豊かなものが多く、特に筆者の住むバレンシアではオレンジの香りを加えたバレンシア独特のVermutも楽しむことができ、スペインに住んでからすっかり虜になってしまったアルコールのひとつだ。

Radler(ラドラー)/ Clara(クララ)
ドイツ発祥のビールをレモネードや炭酸レモンジュースで割った低アルコールのビアカクテル。日本のレモンサワーよりもさっぱりとした後味で甘味と酸味のバランスがよく、爽やかでとても飲みやすい。アルコール度数も2〜4%程度でお酒が弱い人にもおすすめだ。バルやスーパーで簡単に見つけることができ、スーパーなら350ml缶が40¢前後と驚きの価格で購入できる。

Vino con Casera(ビノ・コン・カセラ)
赤ワイン(Vino Tinto)をCasera(カセラ)というソーダで割ったカクテル。筆者の住む辺りでは午前中から飲んでいる人をよく見かけるが、バスクやカタルーニャなど、地域によってはあまり一般的ではないようだ。バレンシアでは、Caseraではなく、甘さ控えめのレモンソーダで割ったTinto de Verano(ティント・デ・ベラーノ)、その名も「夏の赤ワイン」もとても人気がある。通常のワインよりアルコールがかなり低く、軽く飲みたいときにピッタリのカクテルである。

Agua de Valencia(アグア・デ・バレンシア)
Cava・オレンジジュース・ジン・ウォッカ・砂糖などで作られる、バレンシア地方の代表的な、観光客にも大人気のカクテル。ジュース感覚でとても飲みやすい。バレンシアに滞在する際にはぜひお試しいただきたいが、アルコール度数は高めなので飲みすぎに要注意だ。

Café Carajillo(カフェ・カラヒージョ)
スペインではコーヒー+お酒の飲み物が何種類かあるが、一番有名なものがカラヒージョで、食後や朝の1杯として親しまれている。エスプレッソにブランデーやラム、アニス酒などを加えたもので地域によって作り方が異なる。カフェ文化とバル文化が融合したスペインならではの伝統的な飲み物といえるだろう。

(写真:スペイン・バレンシアの旧市街)

まとめ

リオハやリベラ・デル・ドゥエロのワイン、シェリー酒、Cavaなど、安くて美味しい地酒が豊富なスペインでは、ワイン1杯を2〜3ユーロで楽しめるなど、気軽にバル文化を満喫できる。さらに、スペインには独自のカクテル文化が根付いており、地域ごとに個性豊かなお酒の楽しみ方も発展している。

近年では、クラフトスピリッツやクラフトビールのブームに加え、自然派ワインや地元蒸留酒への関心も高まり、その市場は今後も成長が期待されている。スペインを訪れる際には、「日常に溶け込んだ楽しさ」が魅力のスペインのお酒文化をぜひ体験してみてはいかがだろうか。

※飲酒年齢は18歳以上で、公共の場での飲酒は禁止

【参考】
◇Alcoholic Drinks – Spain | Statista Market Forecast:
https://www.statista.com/outlook/cmo/alcoholic-drinks/spain

◇Alcoholic Drinks in Spain | Market Research Report | Euromonitor:
https://www.euromonitor.com/alcoholic-drinks-in-spain/report

◇Spain Craft Spirits Market Size & Outlook, 2023-2030:
https://www.grandviewresearch.com/horizon/outlook/craft-spirits-market/spain

◇Classic Spanish Cocktails & Recipes – Citylife Madrid:
https://www.citylifemadrid.com/classic-spanish-cocktail-recipes/

◇fascinatingspain.com:
https://www.fascinatingspain.com/articulo/spanish-cuisine-recipes/vermu

◇Bodegas Suau | Licormakers Spain: buy brandy, rum, gin:
https://www.bodegassuau.com/

◇Rioja o Ribera del Duero: qué diferencias hay.:
https://www.solardesamaniego.com/blog/vino-ribera-del-duero-o-rioja-diferencias

北田ミヤ

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スペイン在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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