アイルランドのお風呂事情 ”海藻風呂”が伝統?!

北米

アイルランドには謎の海藻風呂文化がある。そこから見えてくる海藻やお風呂に関する認識は一体どのようなのものか。食品以外の海藻の使い道はとてもおもしろく、美容健康グッズの先駆けとして、今後の可能性を感じる。

アイルランドのお風呂事情 ”海藻風呂”が伝統?!

    著者:イギリスgram fellow リリーゆりか
公開日:2023年11月22日

アイルランドの一般的なバスタブ事情

seaweed bath

(画像出典元:seaweed bath https://www.ospreyspa.ie/blog/2019/5/28/benefits-of-a-seaweed-bath

アイルランドには日本のような湯船に浸かる文化はなくシャワーで済ますものだと思っていたため、正直、今まで出入りした全ての家庭にバスタブがあることに驚いた。

だが、バスタブを利用している家庭はほぼない。シャワーの受け皿になっていたり、物置になっているバスタブも見てきた。

アイルランドには古い家が多く、100年選手の家などざらにある。隣の家と繋がった造りが多く、日本のように各家が独立したような造りの建物はあまり見ない。家を買う際はリフォームして住むので、古いシステムをそのまま使う家庭も多い。各家庭にはお湯を貯めるタンクがあって、一度に使えるお湯の量が決まっているのだ。約10分〜15分ほどでタンクのお湯はなくなり、沸かすのに最低10分はかかる。

そんな貴重なお湯をバスタブに貯めるなどあり得ないのである。ちなみに水道代はアイルランドでは無料だ。

シャワーが電気の家も増えている

電気のシャワーには2タイプあるようだ。

ひとつはポンプ式で、タンクのお湯を沸かして水と混ぜて供給するタイプ。お湯を沸かすエネルギーがガスか電気かの違いといったところであろう。

もうひとつは瞬間式で、日本のシャワーと同じようにすぐ使えるタイプである。こちらが圧倒的に便利なのでもっと普及したらいいのにと思うが、水圧が劣る上に費用がガスよりも割高になるようだ。

(引用元:POWER SHOWER VS ELECTRIC SHOWER – EVERYTHING YOU NEED TO KNOW
https://www.stillorgangas.ie/b/power-shower-vs-electric-shower–everything-you-need-to-know#:~:text=Your%20fuel%20type%20will%20result,showers%20while%20consuming%20less%20water.

(引用元:Pumped Showers Vs Instantaneous Showers – Ireland’s trusted solar panel experts
https://energyd.ie/pumped-electric-showers-vs-instantaneous-electric-showers/

海藻風呂って何?!

さて、気になるのはこちらの方だろう。熱いお湯の中に海藻がそのままたっぷり入っているお風呂だ。

英語ではSeaweed Bathというのだが、お風呂に海藻を入れる入浴法がアイルランドでは伝統として残っている。アイルランド西部のKerry州にあるホテルやビーチで看板を見かけた。

起源は12世紀。修道士たちが海から海藻を採取し、栄養補給のために貧しい人々に与えていた。食用に始まり長年にわたって様々な用途で使用されるようになった。20世紀初頭には全国の海辺の町に海藻浴場ができ始め、一時期300以上もの海藻スパがあったらしい。

現在は数軒ほどしか残っておらず、多くはホテルやスパでオプションとして提供されている。また筆者が見つけたKerry州Ballybunnionの海藻浴場は、かなり古い現存している数軒の内のひとつだったようだ。

(引用元:Seaweed Baths in Enniscrone: Unique Spa Experience in Ireland
https://justinpluslauren.com/seaweed-baths-in-enniscrone-ireland/#:~:text=Seaweed%20baths%20are%20actually%20a,poor%20as%20a%20nourishing%20food.

海藻風呂の効果

従来よりリウマチや関節痛などの疾患に良いと信じられてきた海藻風呂には、女性に嬉しい美肌効果もある。ビタミン・ミネラルの豊富な海藻に浸かることで保湿力を高めて肌が滑らかになり、ニキビや湿疹など皮膚疾患の治療にも役立つ。

また、筋肉痛を和らげる効果もあり、アスリートの間で特に人気があるようだ。

そして海藻に関していうと、ワカメスープのような料理を目にすることはなく、お風呂グッズやスキンケア用品として売られているのも非常に興味深い。

(引用元:Vogue :Why This Irish Seaweed Bath Treatment Should Be Your Next Beauty Ritual
https://www.vogue.com/article/irish-seaweed-bath-treatment

(引用元:Seaweed.ie :Seaweed Baths in Ireland
https://www.seaweed.ie/baths/

アイルランドにおけるお風呂についての価値観

海藻風呂という独特な入浴法が発達してきたアイルランドだが、日常生活で浴槽に浸かるという人にはまず出会わない。お風呂VSシャワーという議論も常にあるようだが、アイルランドに限らず欧米では頻繁に皮膚を水にさらすこと自体が推奨されていない。シャワーも毎日浴びるべきではないとする博士や医療関係者、美容家が目立つ。

硬水はかなり皮膚を乾燥させる。皮膚の乾燥が炎症や感染症を引き起こす可能性があるので、週に数回、5~10分のシャワーが推奨されている。この考え方から、体全身を水にさらしてしまう入浴を定期的にするのはあまりよくないとされ、お風呂はあくまでリラクゼーションのためだという位置付けなのである。

(引用元:The Irish News :Bath vs shower – which is better for your health?
https://www.irishnews.com/lifestyle/2020/05/28/news/bath-vs-shower-which-is-better-for-your-health–1954008/

まとめ

アイルランドの家の造りや水の性質などが日本と異なるため、お風呂文化が異なるのも納得がいくだろう。だが、日本人からすれば浴槽に浸かるバスタイムが非常に恋しくなる。

最近は硬水用のフィルターを導入する家庭もあり、日本のようなお風呂環境を作ることも不可能ではなさそうだ。

また、お風呂や海藻に関する価値観が日本と全く違うのも面白い。アイルランド西部を訪れた際はぜひ、海藻風呂を温泉のように利用するのも悪くないかもしれない。

リリーゆりか

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アイルランド在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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