アジア経済の未来図:マレーシア・シンガポールSEZが示す新たな協力モデル

マレーシア

マレーシアとシンガポール、世界で最も交通量の多い陸上国境を持つ両国が、画期的な経済協力へと踏み出す。東南アジア初となる国境を越えた特別経済区(SEZ)の開発合意が間近に迫る中、両国の深い歴史的つながりと現代の経済関係を紐解く。イスカンダル計画を超える新たな経済協力モデルは、アジア経済の未来をどう変えるのか。
この記事では、ますます深まりつつあるマレーシアとシンガポールの関係について、あらためて解説します。

シンガポールとの経済特区に関する合意間近か  

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年8月29日

世界で最も交通量の多い陸上の国境

マレーシアとシンガポールは幅わずか1キロ余りのジョホール海峡をはさんで対面していて、国境にかかる2つの橋を渡って毎日40万人以上の人々が行き来する、世界で最も交通量が多い陸上の国境です。

毎朝通学出勤時間前後は、国境の橋を渡るだけで2~3時間かかるほどの大渋滞です。

非常に密接な関係性

マレーシア、特にジョホールバルとシンガポールとの関係は長い歴史を持ち、経済的、文化的、社会的に非常に密接な関係を築いてきました。

➀ 19世紀から20世紀前半( 英国の領植民地時代)
シンガポールは1819年に英国の東インド会社の支配下に入り、ジョホールもその経済的影響圏に組み込まれました。シンガポールは港湾都市として発展し、アジアとヨーロッパを結ぶ重要な都市として発展し、ジョホールのプランテーションからとれるゴムやパームオイルなどの農産物がシンガポール港を経由して輸出されました。

② 20世紀中盤から後半
1957年にマラヤ連邦が英国から独立し、その後1963年にシンガポールがマレーシア連邦に参加しました。しかし政治的な対立から、1965年にシンガポールはマレーシアから分離独立しました。シンガポールの分離独立後もシンガポールとジョホールの経済的な結びつきは継続しました。

③ 1960年代から1980年代
この時期にシンガポールは急速な工業化と経済発展を遂げ、ジョホールはその一部としての役割を果たしました。シンガポールの産業の一部は、ジョホールバルに製造施設を設けることでコスト削減を図りました。

④ 1990年代以降
2006年に開始されたイスカンダル計画はジョホール州を経済的に活性化させるための大規模なプロジェクトで、シンガポールから多額の投資を引き込みました。イスカンダルは、商業、住宅、教育、医療などの多岐にわたる開発を推進し、ジョホールバルの経済成長を促進しました。

切っても切れない関係

シンガポールはマレーシアの主要な貿易パートナーであり、2021年にはマレーシアの輸出総額の14.1%を占め、輸入総額の11.3%を占めています。

現在も推進中のイスカンダルには、約40%の投資がシンガポールからのものです。

さらに、シンガポールの労働力も多くはマレーシアに依存していて、その多くがジョホールバルから通勤しています。

まさに切っても切れない関係性を築き上げているのです。

さらに強固な絆で結ばれる

マレーシアとシンガポールの経済的な結びつきは、歴史的な背景と現代の経済開発プロジェクトによって強固なものとなっています。関係は今後もさらに発展し、両国の経済成長に貢献するでしょう。

そして地域全体の経済発展と持続可能な開発が促進され、アジアの経済的未来に対しても大きな影響を与えることが期待されます。

さらに、経済協力のモデルとして、インフラ開発の推進、投資の誘致、地域経済統合の促進、持続可能な開発の成功例となり得ます。
これらの要素が世界中で採用されることで、隣接した数カ国間の経済的な結びつきの成功例ができ、グローバル経済の発展や安全保障体制、環境保護の両立が実現される可能性が高まるでしょう。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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