伝統×革新で年商100億円!瓶詰野菜の躍進|スペイン

スペイン

日本で瓶詰の野菜を目にすることはほとんどないように思うが、スペインのスーパーではこんなものまで?!と驚くほど多種多様な野菜が瓶詰めされて売られている。それには文化的、歴史的な背景が関係しているようだ。本記事では国際市場で強い競争力を持ち、地元産業の発展にも寄与しているスペインの瓶詰野菜についてお伝えする。

スペインの瓶詰野菜

   著者:スペインgramフェロー 北田ミヤ
公開日:2024年9月20日

スペインで瓶詰の野菜が多い理由

スペインは地中海性気候で、夏が長く乾燥しているため、傷みやすい野菜や果物の保存方法として古くから瓶詰が活用されてきた歴史がある。瓶詰野菜は常温での長期保存を可能にする。1年中新鮮な野菜を楽しめるため、様々な食材を使うスペイン料理、特にタパスなどの小皿料理では瓶詰の野菜がよく使われている。

また、生鮮食品のように早く消費しなければならないというプレッシャーが減り、保存期間が長い瓶詰野菜は世界中で問題となっている食品ロスの削減にも一役買っている。

様々なメリットが組み合わさり、瓶詰野菜は一般家庭〜レストランまで幅広く利用されている。

(写真:瓶詰めオリーブ)

多種多様な瓶詰野菜・品質と安全性

スーパーで売られている主な瓶詰の野菜には以下のようなものがある。

トマトきゅうりにんじんもやしビーツ
なめこじゃがいもオリーブ小玉ねぎアーティチョーク
赤ピーマンブロッコリーカリフラワーグリーンビーンズ
ホワイトアスパラベビーコーン

瓶詰野菜は品質や安全性が確保されやすい。収穫直後に瓶詰めされるため、ビタミンやミネラルも失われず栄養価が保たれている。現代では食品加工技術の発展により、以前にも増して新鮮な状態を保ったまま長期保存できるようになった。

多くの製品はEUの食品安全基準を遵守しており、有機認証やPGI・PDO(地理的表示)などの認証を取得して、消費者に高品質で安全な製品を提供している。

国際市場での需要も高い瓶詰野菜

スペインの瓶詰野菜産業は農業部門および食品加工業の重要な一部を構成しており、多くの雇用を生み出している。現在では瓶や缶などによる保存野菜の総生産量の約41%が輸出されていて、輸出による外貨獲得にも貢献している。

主要輸出国のひとつとしてスペインの瓶詰野菜が高く評価されるのは、その品質と多様性だ。主な輸出先はEU各国、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、中南米などが含まれる。特にEU内では自由貿易が促進されているため、輸出が盛んである。

中でも人気のある野菜は、オリーブ・アーティチョーク・赤ピーマン・グリーンビーンズ・トマトなどで、サラダ、ピザ、パスタ、タパス料理などに広く利用されている。

近年では健康志向の高まりにより瓶詰野菜の需要が増加していて、特に添加物や保存料を使用していない製品や、低塩・低糖の製品が人気となっている。

(写真:春から初夏にかけて短い期間に旬を迎えるホワイトアスパラも年中楽しめる)

まとめ

長年にわたる品質技術の進歩にもかかわらず、スペインの瓶詰め野菜のプロセスの基本は1880年に国内初の野菜保存工場が開設されて以来、実質ずっと同じである。地元の食品保存の伝統に強く根ざしながらも、製品ライン、包装、製造方法の革新にも投資していて、この業界にはまだイノベーションの余地があるといえる。

同様に、瓶詰製品はスペインの美食の伝統の中で愛され続けると同時に、前衛的な料理のシェフたちの間でも足場を固めている。その品質は国際市場でも地位を確立し、サステナビリティへの注目も高まる昨今、需要は今後も高まっていくことが期待されている。

【参考】
◇Canned and Bottled Vegetables: an excellent taste of Spain:
https://www.foodswinesfromspain.com/en/food/articles/2019/march/preserving-the-seasons-canned-and-bottled-vegetables-provide-a-taste-of-spain-year-round

北田ミヤ

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スペイン在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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