人口880万人の巨大市場へ!クアラルンプールで起きる3つの構造変化|マレーシア

マレーシア

東南アジア有数の経済都市として躍進を続けるクアラルンプール首都圏。2024年には人口880万人を突破し、マレーシアのGDPの40%を生み出す一大経済圏へと成長しています。急速な都市化と多民族社会の変容は、どのようなビジネスチャンスを生み出すのでしょうか?
本コラムでは、2030年に向けて年率3.2%で成長を続けるこの巨大市場の実態と、日系企業が狙うべき成長機会を、現地での取材と最新データを基に検証します。
都市開発、消費市場の変化、そして多文化共生という観点から、これからのASEANビジネスの展望が見えてきます。

クアラルンプール首都圏の人口  880万人を超える見込み  

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年10月3日

小さな都市に人口集中

首都クアラルンプールは、東京23区の4割程度の大きさの243平方kmという割合と小さな都市で、人口も180万人程度に過ぎません。

しかし、隣接しているセランゴール州の8区を含める「クアラルンプール首都圏」としては、年率で3.2%、毎年20万人以上人口が増えており、2030年頃にはクアラルンプール首都圏は人口が1,000万人になると推定されています。

人口増の理由としては、自然増もありますが、地方からの人口流入が多くなっています。

経済の中心地

2023年時点で、クアラルンプール連邦直轄領はマレーシアの総GDPの約15.9%を占めています。マレーシア全体ではセランゴール州の25.9%をに次いで、2番目に大きな経済貢献度です。

クランバレー(Klang Valley)はマレーシア全土の経済の中心地で、そのGDPの割合は非常に高く、マレーシアの総GDPの約40%を占めています。クランバレーが経済の中心地として多くの機会や資源を提供し、他の地域と比べて著しい経済活動が集中していることを示しています​。

人口の不均衡による未開発の危険

クアラルンプールを中心とする都市部へのインフラや公共施設が集中することで、一部の農村地域が未開発の危険にさらされています。

マラヤ大学の都市・地域計画の専門家であるリム博士は、不均等な発展は、世界的にも一般的であるものの、政府は早急にこの問題に対処する必要があると述べています。

彼女はさらに「人々が都市部へ移住し、地方で働きたい者がいなくなると、さまざまな分野で何を計画しても灰になってしまうだろう。」と危惧しています。「人口不足により農村部が未開発になることに加え、人々が都市部に集まりることで、公共施設や設備、アメニティ、インフラなどを多くの人で共有しなければならず、過重な負担をかけることになる」と、人口の少ない地域の開発の必要性を訴えています。

多民族社会の変容

人口の増加と都市部への偏重により、異なる民族がより密接に交わる機会が増え、文化的な融合が進みやすくなります。クアラルンプールでは、近年は多民族社会の一体感が強まる傾向があり、異なる民族が共同で行うイベントや祝祭が増えて、異文化間の理解を深めています。

アイデンティティの変容

都市化が進むとともに、若い世代の間では民族的アイデンティティの変容が起こり始めています。都市部では、伝統的で民族的な価値観よりも現代的でグローバルな価値観が重視される傾向があり、若者の中には、自分の民族的なルーツよりも都市生活における共通のアイデンティティを持つことに魅力を感じる人が増える傾向にあります。

社会的緊張と調和のバランス

都市部に人口や経済力が集中することで、資源の競争が激化する可能性が強まっています。

住宅や教育、医療といった基本的なサービスに対する需要が増えることで、民族間での競争が生まれる可能性は少なからずあります。これが社会的緊張を引き起こす要因となる可能性もあります。

クアラルンプールのような多文化都市では、政府が多文化共生を促進しながら地域社会の調和を保つための施策を講じることが、より重要になっています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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