マレーシア近代化の父 マハティール・ビン・モハマド氏 97歳に  

マレーシア

2022年7月10日、マレーシアの元首相マハティール氏が97歳の誕生日を迎えました。
2021年末に体調不良で入院、心疾患の集中治療室で治療を受けていましたが、無事退院され、最近では「ルックイースト政策」の40周年記念ウェビナーで講演したりと健在ぶりを示していました。
今回の記事では、前回首相時には「世界最高齢首相」としても有名になったマハティール氏について解説します。

マレーシア近代化の父 マハティール・ビン・モハマド氏 97歳に

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2022年7月xx日

近代化の父

1981年7月にマハティール氏は首相に選出され、マレーシアでは初めての王族以外、平民出身の首相となりました。
1981年~2003年の間首相を務め、日本の経済成長に学ぶ「ルックイースト政策」を提唱し、マレーシアに高度経済成長をもたらした「近代化の父」と呼ばれています。

▶︎ルックイースト政策とは?
日本人の労働倫理、学習・勤労意欲、道徳、経営能力などが日本の発展の原動力であるとの考えの下、これらを日本から学ぶことで、マレーシアの経済・社会の発展を目指そうという試みです。

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マレーシア「ルックイースト政策」の40年

開発独裁

マレーシアは、マレー人と華人などの民族対立を抱えていたために、シンガポール、インドネシア、フィリピンなどに見られる「開発独裁」といわれる開発主義がとられ、1971年にマレー人優遇策(ブミプトラ政策)と同時に20年間の新経済政策がはじまったことで本格化しました。
開発独裁を進めた他の国の政権の多くは、その強権的体質が国民的な支持を維持できず退陣に追いこまれました。しかしマハティール氏は、隣国シンガポールのリー・クアン・ユー氏とともに例外的に暴力的な政権交代にならず、2003年に退任するまでマレーシアの工業発展を推進してきました。植民地時代のゴム、スズ、パーム油などの一次産品産業に加えて重化学工業を興し、農業国から工業国に転換させました。その結果、マレーシアは当初の深刻な民族対立にもかかわらず、東南アジアでシンガポール、ブルネイにつぐ、1人あたりの国民所得の高い国となっています。

アジア通貨危機を独自の方法で克服

1997年7月、タイの通貨バーツの暴落から始まったアジア通貨危機がマレーシアにも及び、経済の急成長はストップしました。マハティール氏はその原因をアメリカのジョージ・ソロフなどのヘッジ・ファンドと呼ばれる海外投資家による過剰な投資にあると厳しく批判。IMFによる通貨管理を拒否、投機取引規制や為替相場に対する管理強化などの独自の方法で危機を乗り切りました。

92歳、世界最高齢で首相に返り咲く

マハティール氏は2003年に政界を引退しましたが、その後与党連合の改革の遅れや政権の腐敗などが続き、急速に国民の支持を失っていました。一方、野党は引退したマハティール氏の担ぎ出しをはかり、与党を脱退したマハティール氏はマレーシア統一プリブミ党(PPBM)を結成し、野党連合の希望連盟(PH)に加入、2018年5月には野党統一候補として立候補して当選します。希望連盟も多数議席を獲得し、マレーシア発足以来初めての政権交代が実現しました。マハティール氏はすでに92歳になっていましたが、推されて首相の座に返り咲いたことになります。これは選挙で選ばれた政権では最高齢での就任であり、世界中を驚かせました。

引退声明

15年ぶりに政権に復帰したマハティール氏は、当時すでに92歳。すぐにその後継問題が表面化しました。マハティール氏はかつての宿敵アンワル氏を後継に指名していましたが、与党内で禅譲を批判する声が強まり、2020年2月にマハティール氏は混乱の責任をとって国王に辞表を提出。首相の座を反対派のムヒディン氏に譲りました。同年8月には新党を結成して現政権を追及するという姿勢を見せましたが、翌9月の記者会見で次の総選挙での不出馬と政界引退を公言しました。

選挙出馬示唆

マハティール氏はこのほど、来年9月までに行われる次期下院選挙に出馬する可能性を示唆しました。イスラム教徒のみならず中国系の国民からも相変わらず人気のあるマハティール氏だけに注目が集まります。

「日本人よ、成功の原点に戻れ」
マハティール氏の書いた書籍「日本人よ、成功の原点に戻れ」では、氏が日本再生の処方箋を語っています。
米国の大国主義に異議を唱え、経済危機も独自の手法で脱し、アジアの意志の代弁者とも言われる氏が、方向性を失った日本人に自信を与え危機脱出の方法を語っています。
マハティール氏は、自分の国に何が必要か、国にとってベストなシステムは何なのかということを常に見極め、それを選択することが重要だとしています。日本人が日本に自信をなくし、外国のシステムに同調することで自らを救おうとしていることこそが、日本にとっての最大の脅威、危機なのではないかと熱く語っています。
氏のこの書は、ぜひとも一読いただきたいです。


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