Grabに追いつけ!マレーシアの配車サービスの今 

マレーシア

10年前に筆者がマレーシアに赴任した時、クアラルンプール郊外の街でアポがあり、その帰りにタクシーがつかまらず炎天下の街中を2時間歩き回ったことがあります。
熱中症になっていたようで、その後3日ほど寝込みました。
あれから10年経ち、クアラルンプールの交通事情は大きく変わりしました。
タクシーはもちろん走ってますが、多くの人が配車サービスを利用して移動をするようになっています。
今では配車サービスがなければ都市生活は考えられないほど身近な存在です。
そこで今回の記事では、マレーシアの配車サービスの現状について紹介します。

Grabに追いつけ!マレーシアの配車サービスの今   

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2022年12月15日

成長の凄さ

マレーシア、いや今やアジアの配車アプリの雄「Grab」がマレーシアで配車サービス(My Teksi)をスタートしたのが2012年。それからたったの10年!
あらためてアジアのメガベンチャーの成長の凄まじさに驚愕します。
あの配車サービスの「Uber」をわずか5年でアジアから蹴散らしました。
現在では単なる配車アプリではなく、欠かすことのできない生活インフラとして機能し始めています。

成長市場から市場飽和へ

マレーシア国内の配車サービス市場はほぼ「Grab」の独占状態に近いですが、これを打破しようとこれまでに新たに配車アプリが続々登場しています。
「Uber」撤退後、「MyCar」がUberの元ドライバーの受け皿としてアプリを立ち上げました。
また、Uber撤退前からある「EzCab」も利用者数は数十万人程度あると思われます。
その後も、「JomRides」や「MULA」「Dacsee」「diffride」「CALLme」といった配車アプリが参入しています。
LCCの「エアアジア」も、コロナ禍の従業員救済の意味も含め市場に参入しています。
まさに戦国時代に突入し、配車サービス市場は完全に飽和状態にあると思われます。

ここにもウクライナ戦争の影響

市場飽和の中でも着実に成長している配車サービスですが、今年のウクライナ戦争の影響を受け、
Grabなどの配車サービスの運賃が高騰を続けており、ピークアワー時にはタクシーの乗客が40%増えています(2022年5月現在)。
配車サービスは国から運賃規制を受けておらず、ラッシュアワー時には「需要が高い」との理由で通常時の2倍以上の金額になることがあります。このため配車サービスを諦めてメーター制のタクシーに乗る人が増えているということです。

新たな動き

オンライン配車サービスの乗車料金が高騰し、社会問題となっている中、ジョホール州発の乗り合いバンサービス「クンプール」は、他の配車サービス料金の半額程度を“ウリ”に首都圏でサービス拡大を目指し進出しました。公共交通機関と住宅地を結ぶ「ラストマイル」の移動手段として、物価上昇に悩む市民の注目を早くも集めています。
クンプールは、ジョホール州最大のバス事業者であるコーズウエーリンクの子会社で、2020年1月に地元ジョホールバルで乗り合いバンサービスを開始しました。その後順調に利用者を増やしており、アプリのダウンロード数は1万件を超えての首都圏進出です。
クンプールは、路線バスと配車サービスの中間のような仕組みで、1台当たりの営業エリアは最大10キロメートル圏内に設定し、200カ所程度の停車場所を設けています。料金は他サービスと同様に距離に応じて加算されますが、複数人で利用するほど安くなり、配車サービスの半額程度で利用できます。

配車アプリを超えて

マレーシア、シンガポール、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピンのASEAN主要6カ国における配車サービス市場は、2016年から2021年にかけて年平均6.5%で成長し、2021年に279億ドルに達しています。
しかし、Grabの成功とその後の市場の飽和状態を見ると、やはり配車アプリの次の打ち手が重要なのだと思います。
Grabがコロナ禍の中でフードデリバリーサービスで新たな市場を切り開いたように、マレーシアやアジアの市場の特有性を見て、社会問題の解決できる様々なサービスを展開していけば、スーパーアプリへと展開していける市場だと強く感じています。

規制緩和

Grabの配車アプリから超スーパーアプリへの展開を見ていると、当初は既存の業界や担い手と大きな問題を起こす可能性はあるが、現在社会が持っている問題点や課題解決の足掛かりになることは間違いないと確信します。
日本にとっては「ルックアジア」が今こそ必要ではないかと痛感します。

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