マレーシア西武が開業
そごう・西武は2023年11月29日、マレーシアで初となる「西武百貨店」を首都クアラルンプールに開業しました。
高級ブランドや日本産の食品を幅広く取りそろえて、マレーシアで増えつつある高所得者層の消費をターゲットにしています。
今回の記事では、今、マレーシアで最もホットな話題である「西武百貨店」のオープンについて紹介し、あわせて、東南アジアで苦戦が続いている日本の百貨店事業について解説します。
マレーシア西武が開業
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2023年11月11日
「トゥン・ラザク・エクスチェンジ(TRX)」
今回西武が出店したのは、マレーシア政府がクアラルンプールに国際金融地区として開発中の「トゥン・ラザク・エクスチェンジ(TRX)」です。
TRXとはクアラルンプールの中心部にある、マレーシアで一番高いタワーです。
マレーシア政府が国家プロジェクトで約15年をかけ開発した、主に国際金融とビジネス向けの施設となります。
「トゥン・ラザク」とは、マレーシアの第2代首相「トゥン・アブドゥル・ラザク」にちなんで名付けられました。
証券取引所がメインとなり、その他にモール、オフィス、住宅、ホテル、そして文化施設があります。
マレーシア西武
2万平方メートルの商業エリアの中に400店舗が入居しており、その中でもアンカーテナント(施設の核となる店舗)となるのが、今回マレーシア初出店となる日本の西武百貨店です。
西武の店舗面積は4フロアで2.5万平方メートルあり、100の新ブランドを含む400ブランド以上の商品を取り扱う予定で、その中で110が日本ブランドです。また西武とともにマレーシア市場に初進出する100以上のブランドに注目が集まっています。
西武は、いわゆる「デパ地下」をマレーシアで初めて取り入れて、多くの日本食の販売も行っています。また、ラーメン、寿司、和牛、そして日本酒バーなど、さまざまな日本料理の店舗が入居しています。
今回西武は自社で直接運営をせず、現地企業に商標を貸すことでライセンス収入を得る仕組みとなっています。
日本の小売りの全盛期
1980年代、多くの日本の小売業が東南アジアで高まっていた「日本に学べ」という機運とともに、積極的にアジア展開を行っています。
アジアに積極的に進出を行った、日本の小売業界の風雲児「ヤオハン」は、シンガポール、マレーシア、そしてブルネイ、香港とアジアを席巻し、しっかりと地元に根差すことで大成長を遂げました。
初めてシンガポールを訪れたときのヤオハンの大盛況ぶりは今でも忘れることはなく、静岡出身の私としても、とても鼻が高かったです。
伊勢丹の進出も早く、シンガポール、マレーシア、バンコクと、買い物と言えば「伊勢丹」と、現地の人の間でも圧倒的な人気と信頼を誇っていました。
ショッピングモールで敗退した日系百貨店
しかし、日本国内での「百貨店不況」が影響しだしてからは撤退に次ぐ撤退で、残念ながら東南アジア地区の日本の百貨店はショッピングモールの戦いに完全に敗退した形となってしまいました。
また、地元の新興企業の若くみなぎるパワーに押しまくられた側面もあります。
お隣のシンガポールでは、一時期先行したヤオハンと伊勢丹の他にも、東急、西友、パルコ、名鉄など、多くの百貨店や小売店が出店していましたが、今では伊勢丹とタカシマヤを残すのみとなってしまいました。
日本百貨店の再チャレンジ
マレーシアなどの東南アジアの国々では、中間層や富裕層が増加しており、小売市場は成長基調にあります。
今回の西武のように、撤退の苦い経験を糧にして新たな形での再チャレンジが、その他の百貨店や小売店でも湧き上がってくることを強く期待させます。