地元農家 30 by 30政策の推進に挑戦

地元の農業技術会社「トマトタウン」の創設者であるタム氏が、日本企業と提携して日本のミニトマトや伝統品種のトマトを収穫することを目指している、という記事が地元紙で紹介されました。
シンガポールでは最先端の屋内水耕栽培農場や垂直農場などが2000年代から登場しており、さまざまな取り組みが進められています。
今回は、「30 by 30政策」を紹介しながら、その可能性について深掘りしようと思います。
地元農家 30 by 30政策の推進に挑戦
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年 2月12日
日本企業と連携

タム氏はトマトベース食品や野菜ジュースを製造している日本企業の協力を得て、日本のミニトマトや伝統的なトマトの品種を収穫することを目指しています。日本企業の農業が有している専門知識を活用し、耐熱性のある特別な品種を使用することで、シンガポールの高温多湿の気候に耐えられるトマトを栽培したいと考えています。11月にはこの日本企業と正式契約を結ぶ予定です。
通年で安定した生産を目指す
トマトタウンで収穫されたミニトマトは地元のイタリアンレストランに供給されていますが、スーパーマーケットの棚に並べるためには年間を通じてより安定した供給をする必要があり、今回の提携に至ったとのことです。タム氏は「まずは10月から1月の涼しい時期に約3トンのミニトマトを生産し、その後通年生産することを目指している」と語っています。
生産コストを抑える
タム氏は生産コストを低く抑えるため、屋内のLEDライトと室温25℃の管理された環境で苗を栽培し、ある程度の大きさに達すると害虫やその他の環境ストレスの影響を受けにくくなる屋外に移し、収穫できるまで育てると説明しています。
コスト圧力の高まりや需要の欠如もあり将来は不透明ですが、国際的な協力を促進し、道を切り開いていくと将来を語っています。
30 by 30政策
シンガポールの「30 by 30」政策は、2030年までに国内で消費される栄養価の30%を地元で生産することを目指す取り組みです。
この政策は2019年に発表されました。国土が限られているため食料自給率が10%と低いシンガポールは、食料のほとんどを輸入に依存している状況にあり、特にコロナ禍の供給の混乱が食料安全保障の必要性を強く認識させたという背景があります。
シンガポールは技術革新による解決を目指して、垂直農法や制御環境農業、アクアカルチャー(養殖)といった新しい農業技術を積極的に導入しています。
直面する課題
革新的な技術が導入されているにもかかわらず、地元の農場は収益を上げるのに苦労しています。労働力とエネルギーの高い運用コスト、限られた土地が大きな障壁となっているからです。地元の垂直農場の多くは、これらの費用が利益を上回っているため、閉鎖の危機に直面しています。さらに、地元で栽培された野菜や魚介類の割合は、2019年のプログラム開始以来減少しています。輸入食品は依然として安価で、地元で生産された高価な商品への需要が弱いためです。
政府の支援と持続可能性の問題
今後の展開としては、さらに多くの技術革新や国際的なパートナーシップが進み、都市農業の生産性が向上すると考えられます。
シンガポールが30%の自給率目標を達成できれば、他の国々にとっても都市農業のモデルとなるでしょう。また、食品生産技術の輸出や他国との技術協力を通じて、シンガポールはグローバルな食品安全保障の強化にも貢献する可能性があります。
政府の効果的な支援で持続可能性が向上することが、喫緊の課題となっています。