シンガポールの医療制度|世界が注目する”3Ms”の革新性

シンガポール

シンガポールの医療制度は、国民皆保険ではなく個人の強制積立金による「Medisave」など3つの方式「3Ms」が特徴です。個人負担が大きいものの、少子高齢化の影響が小さく財政面の制約も少ないため、高水準の医療サービスを提供できています。政府は”医療は産業”と位置づけ、医療ツーリズムにも力を入れており、質の高い医療で富裕層を受け入れています。一方で現地在留の日本人は任意保険加入が必須です。自助と公助を両立した革新的な制度で、シンガポールの医療水準の高さが注目を集めています。

そこで今回の記事では、シンガポールの医療制度について解説します。

医療費の自助と公助、シンガポールの両立する仕組みとは

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2024年 5月24日

国民健康保険制度が無い

WHOが公表した2015年医療制度世界ランキングで、シンガポールが6位、アジアでは1位となっています。にもかかわらず、国の医療費は日本ほど負担になっていません。

シンガポールが医療費負担を低く抑えられている理由は、日本と違って「国民皆保険」の医療保障制度がないためです。

医療費の政府負担割合は、日本の84%に対してシンガポールは42%にとどまっています。国民皆保険の日本は高齢化の中で医療費抑制が迫られています。シンガポールは日本同様かそれ以上に少子高齢化が進んでいますが、医療積立金制度を採用して個人の強制貯蓄による自助を基本としているため、財政面での制約が限られています。

世界でも高評価のシンガポールの医療保障制度

シンガポールには日本の医療保障制度のような社会保険制度がありません。

政府による医療保障制度は主にMedisave, Medishield, Medifundという3つの方式がとられていて、これを3Msと呼んでいます
Medisaveは、CPF(中央積立基金)という政府による強制積立貯金制度、いわゆる日本でいう年金制度ですべての被雇用者に適用されます。給与から差し引かれ(雇用者と被雇用者が月々被雇用者給与の6~8%に相当する金額を拠出)、政府からの利子がついた形で個人貯蓄口座に毎月積み立てられていきます。個人が持つ口座内の積立金を当人やその家族の医療費の一部に充てることができ、使わなければそのまま資産にできるため、健康を維持しようとする個人責任がさらに徹底されます。

重病や難病を患い高額な治療が必要な場合、Medisave だけでは治療費や入院費をカバーしきれない可能性があります。そこで適用されるのがMedishieldです。Medishieldは重病医療費保険制度であり、Medisave加入者すべてが対象となる強制的な制度です。国が指定した重病など、ごく稀な状況でしか適用できないため、保険金自体は比較的安いです。

Medifundは政府が出資して立ち上げた医療基金で、MedisaveやMedishieldを使用しても医療費が支払えない低所得者への支援を目的としています。

ただ、年々入院や手術などの医療費が高額になり、社会保障だけではまかないきれなくなってきているため、多くのシンガポール人は任意の医療保険に加入しているようです。

シンガポール在留中の日本人の保険

シンガポールに限らず海外では医療費が超高額になることがあるので、海外旅行や駐在の際には必ず海外旅行傷害保険に加入することをおすすめします。

シンガポールでは外国人居住者には公的保険制度は適応されないので、任意保険に加入して対処する必要があります。

日本から派遣された駐在員の場合は、企業が社員とその家族のために日本の海外旅行傷害保険に加入していることが多いかと思います。

日系クリニックや日本人がよく受診する病院などでは、病院と保険会社が提携していてキャッシュレスサービスが受けられます。

日本で発行されたクレジットカードに海外旅行保険が付帯している場合もあります。しかしながら多くの場合、有効期間は出国後3ヶ月程度です。

住民票が残されていれば、現地でかかった医療費を日本の健康保険(社会保険の一部で企業を通じて加入)や国民健康保険に請求し、還付を受けることもできます。ただし、例えば本来自己負担は3割であっても、海外での医療費は日本のそれに比べて高い傾向があるので、実際にはかかった費用の3割以上を支払うことが多いです。提出用の書類を作成する必要がありますので、詳しくは企業や自治体に確認してください。

世界の富裕層を呼ぶ、シンガポールの高い医療レベル

シンガポールは世界でも有数の医療先進国です。質の高い医療サービスに加え、多民族国家ならではの言語、文化、慣習面での外国人への柔軟性が富裕層の医療ニーズに適合しています。政府も「医療は産業」という観点で、国外からの外来・入院患者を獲得するいわゆる「医療ツーリズム」を政策として掲げています。

先進かつ質の高い医療技術を更に発展させて外国人患者の受け入れを可能にし、これにより得た利潤をもとに医師が専門分野の研究を行い、更なる医療技術の向上が図られるという好循環により、シンガポールの医療の向上は図られています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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