中国のBYD シンガポールの自動車販売のトップに 

シンガポール

中国のBYDが2024年にシンガポールで6,191台の自動車を販売し、トヨタやBMWを上回って最も売れた自動車ブランドとなったと報道されました。

シンガポールの自動車市場において、EVメーカーであるBYDがトヨタやテスラを抑えて販売トップに立ったというニュースには少なからず驚かされました。

そこでこの記事では、BYDの成功要因について解説しようと思います。

中国のBYD シンガポールの自動車販売のトップに   

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2025年 5月2日

販売台数が4倍に!

BYDの2024年の販売台数6,191台は、前年から4倍以上の増加です。世界最大の自動車メーカーであるトヨタの5,736台を上回り、テスラやベンツの販売台数も上回り、シンガポール市場で14%のシェアを獲得しました。

マレーシアでもBYD社の車は激増していて、BYDの人気がシンガポールやアジアで急上昇していることは現在東南アジアで起きている大きな変化を象徴しています。

シンガポールの自動車市場の現状

シンガポールの自動車市場は独特で、政府の厳格な車両所有規制や高額な車両登録証(COE)制度があるため、自動車の所有にかかる費用が世界で最も高い地域のひとつです。他国と比べて新車販売台数が限られています。

2024年のEV登録台数は14,448台で、自動車登録台数の33.6%を占めています。2023年のEV登録台数は5,467台(登録台数の18%)で、これも2倍以上に急増しています。

2024年に登録されたEVの70.7%は、BYD、テスラ、BMWの3社でした。

このような背景の中でBYDはEV市場でトップの座を獲得しました。

市場環境の変化

シンガポール政府は2030年までにガソリン車の新規購入を停止する方針を掲げており、税金の還付やEV充電ステーションの拡張などの政府の取り組みも進んでいるため、EVの需要が高まっています。

BYDの成功要因

BYDがシンガポール市場で成功を収めた主な要因として、以下が挙げられます。

①政府のEV推進政策と適合:
シンガポール政府のEVの推進政策と合致した戦略を展開し、税制優遇やインフラ整備の恩恵を最大限に活用しています。

②価格競争力:
車両登録証(COE)の高騰により、車両本体の価格が購入者の負担感を増しています。BYDはコストパフォーマンスに優れたEVを提供し、購入コストを抑えることで消費者の関心を引きつけています。BYDのEVはテスラなどの競合他社と比較して価格が競争力に圧倒的に優れており、シンガポールの高い車両税制下でも消費者にとって手頃な選択肢となっています。

③製品ラインアップの多様性:
BYDは多様なモデルを提供し、多様な顧客層のニーズに応えることに成功しています。また主力ブランドに加えて、ヤンワン(Yangwang)やデンツァ(DENZA)などの新ブランドを展開し高級車市場への進出を図り、シンガポールの特殊な市場でのプレゼンスを強化しています。加えて、販売・サービスネットワークの構築を充実させています。

④各国市場への適応と現地生産体制の構築:
BYDはアジア各国の市場特性や需要に応じた戦略を採用しています。

インドネシアでは2025年末までに10億ドルを投じて年産15万台規模のEV製造工場を西ジャワ州スバンに建設中です。現地生産体制の構築により各国の需要に迅速に対応し、コスト競争力をさらに高めています。

EV市場は成長が予想

BYDのシンガポール市場での成功は、同社の戦略が現地の市場動向や政府の政策と適切にマッチした結果といえます。

シンガポールのEV市場は今後も成長が予想されており、各メーカーはEVのラインアップ拡充や価格競争力の強化、充電インフラの整備など、戦略的な取り組みがさらに求められるでしょう。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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