世界企業が集まるシンガポール |優れたインフラと業務効率が評価される

シンガポール

国際経営開発研究所が発表した「世界競争力ランキング」で、シンガポールが4年ぶりに1位に返り咲きました。経済状況、インフラ、ビジネスの効率性、政府の効率性といった指標で高い評価を得たシンガポールは、小国ながらも世界をリードする競争力を誇っています。
その要因は、低い法人税率や規制緩和など、ビジネス環境の優位性と、世界最高水準のインフラやロジスティクスの充実にあります。しかし一方で、高すぎる物価や生活コストが懸念材料にもなっています。
シンガポールは、今後も世界的な競争に晒されていくことから、さらなる成長と競争力強化のために、この物価高の課題に取り組む必要があるとみられています。ビジネスにとって魅力的な環境を維持し続けるシンガポールの戦略に注目が集まっています。

今回は、なぜこんなに小さな都市国家が、常に世界のトップであり続けているのかについて、再びとり上げようと思います。

シンガポールが世界競争力ランキングでトップに返り咲く位

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2024年 8月9日

67カ国・地域中で首位

この調査は世界の67ヶ国や地域を対象に競争力を評価しています。

「経済状況」「インフラ」「ビジネスの効率性」、そして「政府の効率性」の4つのカテゴリー、それぞれ5項目の評価項目で各国を評価しています。

シンガポールは経済状況では世界3位でしたが、インフラは4位にランクアップし、「ビジネスの効率性」は2位、そして「政府の効率性」でも2位で、全20項目中の16項目でトップ10に入っています。

日本は38位

世界2位はスイス、3位はデンマークでした。

アジアでは、14位に中国がランクインしており、その他、20位に韓国、25位にタイ、インドネシアが27位、お隣のマレーシアは7つランクを下げて34位でした。

日本も順位を下げており、38位にとどまっています。

ビジネス効率面で際立つシンガポール

シンガポールは、ビジネス効率の面で他国よりも際立って高く評価されています。

「労働市場の基礎的要素」ではトップの座を獲得していて、「態度や価値観」では12位ランクアップ、さらに、「経営慣行」の面でも第2位と急上昇しています。

また、技術インフラでは突出していて首位を獲得し、総合インフラ部門でも4位に入っています。政府の効率性では、「社会基盤」が11位、「公共財政」も4位となり、首位返り咲きに貢献しています。

専門家は、シンガポールの伝統的な強みは「効率的な政府、ビジネスのしやすさ、世界クラスのインフラ」であると指摘しています。

シンガポールの弱点

一方、シンガポールの弱点としては、「価格」が62位となり、「雇用」も5位にとどまっています。シンガポールの生活費の高さは懸念される分野で、あり、67ヶ国中で62位となっています。

特に「賃貸料、輸送費、報酬、医療費」で、シンガポールの弱点が明らかになっています。

競争力が強い理由

競争力ランキングのさまざまな指標で、シンガポールが上位を占める大きな理由を2つ紹介します。

① ビジネス環境の優位性
 シンガポールは法人の設立が非常に簡単で、「ビジネス環境ランキング」においても長年トップの地位を保持しています。法制度が安定していて腐敗もほとんどなく、透明性が極めて高いのが魅力です。加えて税制も魅力的で、法人税率は17%と日本の税率の約30%とよりも低く、スタートアップや中小企業に対する税制優遇措置も豊富です。

② インフラとロジスティクス
 世界で最も効率的な港湾や空港と評価されていて、優れた物流ハブとなっています。インターネットや公共交通機関も高度に整備されており、ビジネス活動が円滑に行えます。同様にインフラが発達してる日本に比べても物流コストの安さは圧倒的で、ビジネス活動の効率性にも大きく影響を及ぼしています。

価格とコストの高騰が懸念材料

シンガポールの物価の高さについて専門家は「土地の少ない国なので当然のことだ」としながらも、価格とコストの高騰は、シンガポールの競争力を圧迫するだけではなく、国民の経済に対する信頼にも大きく影響を与える面がある、と警告しています。

世界経済は容赦なく前進を続け、シンガポールも現状に甘んじることはできないので、コスト高は最大の課題となっていくでしょう。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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