2024年の成長率 4.4%に上方修正

シンガポール

シンガポールの貿易産業省(MTI)が2024年の経済成長率は4.4%で、これまでの予測の4%を上回ったと発表しました。

今回は数十年にわたり経済成長を続けるシンガポールの秘密と、そこに死角はないのかについても深掘りして解説します。

2024年の成長率 4.4%に上方修正  

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2023年 7月5日

成長の牽引部門

貿易産業省は、「2024年全体のGDP成長率は4.4%となり、2023年の1.8%の拡大よりも早いものとなった」と述べました。

そして今年の成長は主に卸売業、金融・保険業、製造業の各部門によって牽引されたと発表しました。

2025年の見通し

貿易産業省は、2025年の国内総生産(GDP)の成長率予測は1~3%のままであると述べました。ただ、予測されている成長の鈍化は、賃金や失業率などの雇用には大きな影響を与えないとされ、さらに「比較的回復力は維持されており、急激な落ち込みというわけではない」とも語っています。

シンガポールの独自性と優位性

シンガポールは小さな国土で資源も限られているにもかかわらず、数十年にわたり持続的な経済成長を遂げており、1人当たりのGDPでは日本を上回る水準に達しています。

その独自性と優位性は、以下の通りです。

1高付加価値産業への注力
エレクトロニクスや化学関連、バイオメディカルなどの製造業や金融サービス業などの高付加価値産業を積極的に育成しています。 これらの産業の発展により、1人当たりのGDPは2024年に90,689ドル(約1,364万円)に上りました。

安定した政治体制
シンガポールは建国以来、強力なリーダーシップによって安定した政治体制を維持しています。これにより投資家や企業は安心して経済活動に投資でき、経済の活性化につながっています。

貿易ハブとしての役割
東南アジアの中心に位置するシンガポールは、その地理的優位性を活かして貿易ハブとして成功し、それが経済成長につながっています。

シンガポールに死角はないのか

シンガポールは近年、堅調な経済成長を維持していますが、今後の成長にはいくつかの懸念材料が指摘されています。

1外需の不透明感
主要な貿易相手国の経済動向や世界的な需要の変動は、輸出主導型のシンガポールの経済に影響を及ぼす可能性が指摘されています。

2地政学的リスクと貿易摩擦
紛争や米中の貿易摩擦の激化は部品価格や生産コストの上昇に結び付き、政策の不確実性を招くリスクがあります。

3.民族対立の増加
SNS上では民族や宗教をめぐる議論が炎上しやすく、2020年にはヘイトスピーチ関連の事件が複数報告されました。マレー系住民の平均世帯所得は中華系より低く、格差が社会的不満につながる可能性があります。

また、人口の約40%が外国人で、特に建設・製造業の低賃金労働者や、IT・金融業界の高技能労働者が多くを占めています。こうした外国人労働者は経済に貢献する一方で、地元住民との間に摩擦を引き起こすことが危惧されています。

4.急速な少子高齢化と人口減少
シンガポールは出生率が著しく低く、2023年の合計特殊出生率は過去最低の1.04に落ち込みました。高齢化も急速に進んでいて、経済成長の鈍化リスクになっています。

リスクを乗り越えられるか?

シンガポールはこれまでも多くの課題を克服してきましたが、少子高齢化や外国人労働者の問題は長期的にも影響が大きく、社会的な不満を招きかねません。

これらの喫緊の課題に適切に対応できるかが今後の安定的な成長のカギであり、シンガポール政府の手腕が問われるところとなりそうです。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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