シンガポール総選挙   与党が議席9割獲得で勝利 

シンガポール

シンガポールは去る5月3日に総選挙を実施し、与党の人民行動党(PAP)による連立政権が継続されることになりました。

新首相下での初めての選挙で、世界的な貿易戦争による経済の混乱に備え、国民の支持を試す場となりました。

今回の記事ではこの選挙の意味合いについて深掘りします。

シンガポール総選挙   与党が議席9割獲得で勝利  

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2025年 7月29日

与党 大差の勝利

画像出処:PAP(人民行動党)HPから

与党人民行動党が97議席のうちの87議席を獲得し、1965年の独立以来の政権を維持しました。得票率は65.57%で、前回の2020年の選挙時の61.2%を上回ったことで、昨年就任したローレンス・ウォン首相は国民の強い負託を得ました。

経済的なリスク

ウォン首相は、米国の高関税が引き起こす貿易戦争による景気後退と失業のリスク、さらに生活費の高騰などの諸リスクと取り組まなければなりません。

シンガポールは世界で最も物価の高い都市のひとつで、貿易依存型の経済のため大きな打撃が心配されています。

ウォン首相は有権者に「強い信任に改めて感謝している」と感謝の意を表し、さらに「責任を果たしていく」と述べました。

安定志向

今回の選挙では、与党が議席の約9割を占めました 。

これはリー・シェンロン前首相からウォン首相が政権を引き継いでから初の総選挙であり、新首相のリーダーシップに対する国民の信任を示すものです 。

ウォン首相は、米国の関税政策などによる世界経済の不確実性の中で安定した政権運営を訴え、国民の支持を得た形となりました。

経済政策の継続と課題

ウォン首相は貿易依存度の高いシンガポール経済を安定させるため、既存の経済政策を継続する見込みです。

しかし、生活費の高騰や住宅不足など、国民生活に直結する課題への対応が求められています。特に若年層を中心に経済的格差や社会的自由に対する関心が高まっており、これらの声に応える政策が必要とされています。

国民生活への影響

与党の圧倒的な勝利により、短期的には政治的安定が続くと考えられます。

しかし、貿易問題などによる生活費の上昇や住宅問題、社会的自由の制限など、国民が抱える不満は依然として存在します。特に若年層を中心に、政治的多様性や表現の自由を求める声は日に日に高まっており、政府はこれらの課題に真摯に向き合う必要があります。

アジア地域への影響

シンガポールの政治的安定は、アジア地域全体の安定にも寄与します。特に、米中間の緊張が高まる中で、シンガポールは中立的な立場を維持し、地域のハブとしての役割を果たすことが期待されています。また、米国との強固な関係を維持しつつASEAN諸国との連携を強化することで、地域の経済発展と安全保障に貢献する可能性があります。

一党優位体制のリスク

PAPによる長期政権は、シンガポールの経済発展と政治的安定を支えてきました。

しかし、一党優位体制が続くことで、政策の多様性や革新性が損なわれるリスクも指摘されています。野党の発言力が制限されることで、国民の声が十分に反映されない可能性もあります。今後、政府は多様な意見を取り入れる姿勢が求められます。

残る多くの課題

今回の総選挙の結果は、シンガポールの政治的安定とウォン政権への信任を示すものでした。しかし、国民生活の質の向上や社会的自由の拡大など、解決すべき課題も多く残されています。政府はこれらの課題に真摯に取り組み、国民の多様な声を政策に反映させることで、持続可能な発展を実現することが求められています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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