四半期黒字で証明、Grabの収益モデルの確立に一歩前進
シンガポールの配車・デリバリーの最大手「Grab」が2023年第4四半期で初の黒字化に成功した。売上高は前年同期比30%増の6億5,300万ドルに拡大。宅配事業が20%増収と好調だった他、主力の配車部門も26%増収となった。通期でも売上は前期比65%増の23億5,900万ドルと大幅伸長。最終損益は赤字幅が前期から72%縮小した。
収益改善の背景には、1,000人超の人員削減によるコスト削減と、配車・デリバリーサービスが低迷から脱した点がある。Grab最高財務責任者は「黒字は投資家への大きなアピール。次はキャッシュフロー黒字化」と意気込む。同社は、手頃な価格での高付加価値サービスで顧客満足度を高め、金融事業も取り込んだ持続的成長を目指す。
顧客第一、ハイパーローカル戦略で黒字化に成功したGrab
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年 4月26日
売上が拡大
Grabの発表によると、2023年の10~12月期の純利益は1,100万ドル(約16.5億円)で、売上高は前年同期比で30%増の6億5,300万ドル(約980億円)に拡大しています。
宅配を中心とするデリバリー部門が3億2,100万ドル(約480億円)と、前年比20%増と好調だったのが決算に影響し、主力の配車サービスなどのモビリティー部門も26%の増収となっています。
また、2023年の通期の決算でも売上高は前期比で65%増えて23億5,900万ドル(約3,540億円)で、最終損益では赤字幅が前期から72%縮小され、4億8,500万ドル(約727億円)でした。
コスト削減で収益改善
収益が改善された背景としては、収益性とコスト管理に重点を置き、2023年6月には1,000人を超える人員を削減しています。
また、配車サービスの伸びもパンデミック前の水準に達していて、宅配サービスもロックダウン中の宅配の大きなブーム後の低迷から回復しています。
収益改善を加速
Grabのピーター・オイ最高財務責任者(CFO)は、「黒字の達成は、投資家にGrabは利益を出せることを証明する上での大きな一歩。次の目標はキャッシュフローの黒字化で、収益の改善は『一段の加速』を見込んでいて、2024年末までに達成予定だ」とインタビューで語っています。
高付加価値のサービスを手頃な価格で
アンソニー・タン最高経営責任者(CEO)も「Grabは、手頃な価格で高価値のサービスを享受できる利便性を通じてユーザーとの関わりを深め、さらに金融サービス事業を成長させながら、持続可能で収益性の高い成長に向け前進を続けていきます」と述べています。
ハイパーローカル戦略
以前の記事でも紹介しましたが、Grabはそのサービス内容を進出した国の社会の実態に合わせる、徹底した「顧客至上主義」を実行しています。
市場のニーズをより正確に知り、自社のサービスを迅速に適応させることで、時間が経つにつれ競合他社がアクセスできない強固なサービスに変えていっています。
迅速性
また、事業開始時から大企業と競争するために、 ハイパーローカルな問題を迅速に緊急に解決することで消費者の信頼を獲得し、事業を拡大してきました。
迅速でハイパーローカルな戦略は、アメリカなどの巨大企業と競争する新興企業としての防御戦略として非常に有効でした。
収益モデルを確立できるか
収益性が改善され四半期でも赤字から脱却できたことで、市場からの厳しい見方についても緩まりつつあります。
東南アジアの3大ネット企業である「Grab」、中国の「テンセント」が出資するシンガポールの「Sea(シー)」、インドネシアの「GoTo(ゴートゥ)」は、いずれも上場後に株価を大きく下落させています。
Grabはいち早く「収益モデル」確立への確かな道筋を市場や投資家に明確に示すことができなければ、彼らの信頼を勝ち取るのは難しいと思われます。
マレーシア発でシンガポールに拠点を置くスーパーアプリ「Grab」は、2024年、本当の正念場を迎えるようです。