ファミリーオフィス vs. プライベートバンク|資産運用の新たな
シンガポールがファミリーオフィスの新たな拠点として急成長中です。ファミリーオフィスとは、富裕層の家族の資産を管理し、多岐にわたるサービスを提供する組織のこと。
この記事では、ファミリーオフィスとプライベートバンクの違い、シンガポールでのファミリーオフィスブームの背後にある理由、そして香港との競争について探求します。シンガポールの利点は政治的・経済的な安定性、税制優遇措置、さらに多言語対応が挙げられ、これらの要因が富裕層の注目を集めています。
また、日本も国際金融センターを目指す中で、シンガポールの成功から学ぶべき点が多くあります。ファミリーオフィスとは、資産運用の新たな中心地としての存在感を高めています。
シンガポールで広まるファミリーオフィスについて
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2023年 11月3日
- シンガポールを拠点とするリゾートホテルグループ 日本初進出
- 月餅をお供えして神に感謝する「中秋節」 |中国
- シンガポール 「超熟練」家事労働者の賃金が増加
- 新鉄道開通で2300億円損失?シンガポール小売業界の危機と対策
ファミリーオフィスとは?
ファミリーオフィスとは、資産が一定額以上の富裕層の家族の財産の管理・運用、さらにファミリーにとって有益なサービスを提供するために設立された組織を指します。
では、日本でも多少知られている「プライベートバンク」との違いはどこにあるのでしょうか?
プライベートバンクとの違い
プライベートバンクでは、一族の資産管理を任せることになります。つまり、それぞれの顧客である一族に合わせた資産運用のサポートをする組織ということになります。
ファミリーオフィスの場合は、資産管理以外の課題に対しても、それぞれの専門家が専属で問題解決を行います。
したがって、一族のための”究極のプライベートバンク”のような存在が、ファミリーオフィスなのです。
ファミリーオフィスの設立急増
シンガポールでは、近年ファミリーオフィスの設立が急増しています。2020年だけで実に400ものファミリーオフィスが設立され、翌2021年には700社へと急増しています。
その理由としては、シンガポールが政治的、経済的に非常に安全していることがまず挙げられます。それに加えて、政府と金融当局が共同で「ファミリーオフィス開発チーム」を立ち上げ、富裕層のための国際的な資産管理、シンガポールをファミリーオフィスのハブとするべく競争力を強化することに努め、あわせて専門人材の育成・開発に取り組んでいることが理由に挙げられます。
さらに、税制上の優遇措置があり、利子・配当・売却益などファンドが稼得した所得が法人所得税の免税扱いの対象となっており、これらのインセンティブを通じて、ファミリーオフィスの誘致を強化しています。
もう一つの金融センター・香港は?
かつてはシンガポールをも上回る国際的な金融センターであった香港は、2020年の香港国家安全維持法の施行後、「資産を差し押さえられるのでは」との不信感が広がり、富裕層が資金を海外に移動させる動きが加速しており、凋落傾向にあります。
富裕層は、いかに長期的に資産を保全するかというサステナビリティを重視しており、サステナブルな投資への関心をより一層高めており、そうした中、シンガポールと香港では、サステナビリティの面で大きな差が出てしまった形になっています。
言語の面でも優勢なシンガポール
日本も国際金融センターを目指し、海外の金融機関や人材、富裕層の誘致に力をいれていますが、大多数の富裕層の言語である英語と中国語の両方が通用するシンガポールに比べると、日本の劣勢は否めません。また、上述のように、シンガポールは税制面でも優位で、贈与税・相続税がかからず、株の売却益などに対するキャピタルゲインや、配当などに対するインカムゲインも非課税となっているため、日本を含めた多くの富裕層をひきつけているのが実情です。
資産運用の中心地に
シンガポールで運用される資産は、2021年には、前年比で16%増の5兆4000億シンガポールドル(約5787億円)に上っており、実にそのうち4分の3以上が、シンガポール国外からの流入資金で、3分の1弱が他のアジア諸国からの資金になっています。
戦略的な地理に位置しており、数多くの税制面での優遇措置もあり、さらに資産の流入がシンガポールの金融部門や、多くのスタートアップ企業のサポートとなっており、新たな「豊かなサステナビリティ」を生み出しています。