シンガポール:オーチャードロードの百貨店閉店相次ぐ
7月初め、シンガポールの老舗百貨店のOGは、18年間営業したオーチャード・ポイント店を今年10月に閉鎖する計画を発表しました。
オーチャードロードといえば、今や世界有数の人気ショッピング街で、ほぼ全体がショッピングに特化した通りで、何千ものショップや施設が並び、旅行者にも地元の人々にも至高のライフスタイルを提供しています。
そんなオーチャードでも最近では百貨店の閉店が相次いでいます。
今回の記事では、シンガポールのオーチャードロードの百貨店の閉店について紹介し、コロナ禍での消費行動の変化について解説します。
シンガポール:オーチャードロードの百貨店閉店相次ぐ
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2022年8月25日
相次ぐ百貨店の閉店
OGの閉店は長期的な戦略の一環で、郊外の顧客の近くにもっと店舗を開くことを検討していると述べ、オーチャード・ポイントの店舗があった場所は生鮮食品と食料品を扱う地元企業が引き継ぐと発表しています。
また、ロビンソンズは2020年12月にThe Heeren、2021年1月にはRaffles Cityの2店舗をそれぞれ閉店しました。その理由として、消費者の購買パターンの変化や家賃の高騰、パンデミックの影響で営業が悪化したことなどを挙げています。英国植民地時代の1858年にシンガポールで産声を上げたロビンソンズは、オーチャードロードなどで大型店を展開し地元に深く根付いたブランドでしたが、近年は販売が低迷しており、シンガポール事業は2014年から6期連続で赤字を計上していました。既存の2店を閉店し廃業することにより、160年以上続いた看板を下ろしました。
メトロは1950年代に創業したインドネシア発のブランドで、5年間営業したCentrepointの6階建ての旗艦店を2019年9月に閉店しています。
ジョン・リトルは2016年12月に基幹店であるPlaza Singapura店を閉店しています。シンガポールで174年続く最も古い百貨店であり、長年にわたりシンガポールの他地域でも店舗を構えていました。
オーチャードロード
オーチャードロードは長さ 2 km 以上あり、ドビーゴート、オーチャード、サマセットという 3 つの MRT(シンガポールの地下鉄:Mass Rapid Transit)の 駅があり、モールやショッピングセンターやブティックを見ながら歩くだけでもシンガポール旅行の楽しい思い出になる、世界でも有数のショッピング街です。
オーチャード・ロードの始まりは古く1830年代初頭までさかのぼります。当時は果樹園やナツメグのプランテーション農園が広がる名もない通りでしたが、1958年、地元の商人であるC.K.タンがオーチャード・ロードに最初のデパート、Tangs(タングス)を創立し、オーチャードはシンガポールで最も愛されるショッピング街への第一歩を踏み出しました。
消費行動の変化
オーチャードロードは、近隣諸国などからの買いもの客で潤っていましたが、近隣諸国でも次々とショッピングセンターがオープンしていきました。シンガポールでのショッピングの魅力が低下しだし、それと同時にE コマースの台頭があったため、ここ数年「デパートは時代遅れ」と認識され、デパート業界は苦戦していました。
オンライン化は、最近では日用品の購買にとどまらず、さまざまな新しいサービスにも広がりを見せており、エンターテイメントやウェルネスの分野が大きく成長しています。
また、シンガポールは早くから郊外地区の再開発が進み、ファミリー層をターゲットとした集客をしており、街の中心部オーチャードまで出ていく必要がなくなっていました。
コロナで加速する消費行動の変化
物理的に顧客が足を運ぶ「店舗」が必要とされず、オンラインでの消費を積極的に行い新しいモノやサービスを試すことに抵抗がなくなっている一方で、今回のコロナ禍を経験し、予測不能の将来に向け、多くの人々が貯蓄を増やしたいと考えています。不要不急の買い物は避け、「本当に価値のあるもの」の購入志向が強くなっています。
大手オンライン販売サイトの「ラザダ」 傘下の食品専用サイトの「レッドマート」では、シンガポー ルのロックダウン中の利用者数が前年比50%増で、「ラザダ」への出店者数も大幅 に増加し、 例年6 月~8 月にかけて行われる恒例の「グレート・シンガポール・セール」 も開催され大盛況でした。
ショッピング先進国シンガポール
コロナ禍を経験し、シンガポールの小売業者はデジタル化や収益源の多様化、ブランドの海外進出で、進化し続ける消費者の好みに対応するために新しい事業形態を開拓し始めています。
百貨店など従来の販売形態での経営は厳しくなっており、時代に合わせ、いかに消費者の心を掴むアイデアを生み出すかがカギとなっているようです。
店頭販売への逆風が強まる中で、チャンギ空港にオープンして好調なJewel Changi Airportなどの新しいショッピングモールがどういった戦略をとっていくのかも注目です。