2024年貨物取扱量 過去最高を記録

シンガポール

シンガポールの港湾運営会社の大手「PSAインターナショナル」の2024年の貨物取扱量が過去最高を記録しました。

紛争や貿易紛争、経済的な困難といった課題があるにもかかわらず、驚異的な取扱量を達成しています。

今回はこの記事をもとに、世界のハブとしてシンガポール港の強さについて深掘りします。

2024年貨物取扱量 過去最高を記録

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2025年 4月2日

世界でも過去最高を記録

PSAインターナショナルの発表によると、2024年は年間取扱量が前年比で5.6%増え、世界全体で初めて1億TEU(20フィートコンテナ換算の数量)を超えを達成しました。

シンガポール港のコンテナ取扱量は、2023年は年間で3,901万3,000TEUで、前年と比べて4.6%増加し過去最高を記録しました。 また2024年1~10月の取扱量も前年同期比で6.2%増加して順調に推移し、すでに約4,000万TEUに達していて過去最高を更新しています。

海洋技術のスタートアップハブとして成長

コンテナの取扱量の増加傾向は、シンガポールが世界的な物流ハブとしての地位を強化していることを示しています。

シンガポールには200社近くの国際海運グループがあり、主要な国際海事センターとして機能しています。去年は海運や船舶仲介、海洋技術の分野で30社以上の海事会社が、シンガポールで事業を設立または拡大しています。

取扱量増加の要因

シンガポールのコンテナなどの取扱量が増えている要因としては、以下の理由があります。

①積替え拠点としての役割:
シンガポールは主要な航路の交差点に位置しているという地理的優位性があるのに加え、アジアを含む世界中の航路設計やコンテナ船の運行管理の中心地となっていて、積替え貨物の取扱量が非常に多くなっています。

②港湾インフラの拡張と近代化:
政府はトゥアスに新港の開発を進めていて、取扱能力を増強する計画を立てています。2040年代の完成時には年間取扱能力が 6,500万TEU まで拡大する予定で、これは現在のシンガポール港全体の取扱量の約4,000万TEUを大幅に上回ります。より多くの積替え貨物を取り扱うことで世界最大級のハブ港としての地位を強化し、近隣のライバル港との差をさらに広げる可能性があります。

③デジタル化と自動化による効率向上
PSAインターナショナルはAIやIoTを活用したスマートポート化を加速しています。

AIを活用して最適な貨物管理を可能にし、貨物の滞留時間を短縮して予測分析することで港湾の混雑を回避しています。さらに自動運転技術を導入することで、深刻な労働力不足の解消を可能にして、労働コスト削減と作業スピード向上により、さらに優位性を強化しています。

地政学リスクとシンガポールの戦略

シンガポールは東南アジアの安定したハブですが、地政学的リスクが今後の港湾運営に影響を与える可能性もあります。

マラッカ海峡の安全保障問題は、貨物の輸送ルートを変えなければならないリスクを含んでおり、シンガポールは海上交通の安全確保のための国際協力を強化する必要があります。

米中の貿易摩擦が長引けば中国経由の貨物が減少し、インドやASEAN向けの取扱量の増加が見込まれるため、航路の変化の必要性も出てきます。

今後も世界のハブとしての地位を強化

シンガポールの港湾は地政学リスクはあるものの、トゥアス新港開港による取扱能力の拡張やAIによるデジタル化や自動化の推進を通じて、引き続き 「世界の物流ハブ」 としての地位を維持し、さらに強化していくことが予想されています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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