シンガポールのテレワーク事情!アジアで最も浸透している国とは

シンガポール

日本では5月8日にコロナが5類のインフルエンザと同じ扱いになり、入国の規制も撤廃され、徐々に日常を取り戻しつつあります。

コロナ禍で普及が進んだテレワークの実施率は、2022年の後半以降じりじりと低下しており、2022年10月に「日本生産性本部」が発表した「 働く人の意識調査」によると、テレワーク実施率は17.2%となっています。

今回は、テレワーク先進国のシンガポールの現状を解説したいと思います。

シンガポールのテレワーク事情!アジアで最も浸透している国とは

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2023年 6月30日

シンガポールの浸透率は圧倒的

コロナ禍を機に、アジア企業の間ではテレワークを導入し「働き方改革の一環として」勤務体系を見直す動きが広がっています。

アジア太平洋16カ国の日系企業の駐在員を中心に実施された調査によると、「出社とテレワークを組み合わせたハイブリッド勤務」の回答は、シンガポールがそれ以外のアジアの国よりも高く64.5%と突出しています。
(出展:共同通信社グループ 株式会社NNA 4月21日から27日の調査)

ハイブリッド勤務の割合は、オーストラリアが63.9%とシンガポールに次いで高く、以下、韓国41.2%、インド31.0%、マレーシア25.9%となっています。  

政府も後押し

調査によるとコロナ禍を過ぎてもハイブリッドな働き方を望む国民は多く、「ハイブリッド勤務をポスト・コロナのニューノーマルとするのが望ましい」と答えた人の割合は、常に半数を占めているとの結果が出ています。
(出展:リー・クアンユー公共政策大学院の政策研究所(IPS)調べ)

また、政府も国民の声を尊重し、人材省と全国労働者組合会議(NTUC)が中心となって組織された「政労使パートナー」は、雇用主に対して「ハイブリッド勤務を今後も継続的にすすめ、恒久的なものにする」ように提言しており、ガイドラインを2024年までに発表する予定になっています。

ラッシュ緩和

先日、シンガポールに出張しましたが、コロナ前に比べると出勤ラッシュ時間でも市街地に向かう高速の渋滞はそれほどではなく、通勤の足MRTも混雑は少なかったです。

私のシンガポールの姪っ子夫妻は弁護士とエンジニアですが、お互いに週1~2回はテレワークを続けており、小さな子どもがいるため、非常に助かっているようです。

人材の引き留め策に

ハイブリッド勤務を企業が継続する背景には、コロナの感染状況が沈静化し景気の回復に向かい、求人数が過去最高レベルに上昇し人材獲得が厳しくなっている中で、必要な人材の引き留めを図りたいという思惑もあるようです。

また、ジェトロの調査では、在宅勤務導入には「新規雇用の機会を増やすため」や「従業員の転職を思いとどまらせる一定の効果があるため」という切実な理由もあります。

人材ソリューション会社のランドスタッド社の調べでも、シンガポールで働いている人の実に41%が、「ボーナスが増えるのよりも、リモートワークを続けたい」と回答していることが分かりました。

先述の私の姪っ子も、リモートを含む働きやすさで転職し、以前よりも充実した生活ができているのを肌で感じました。

日本での導入の困難さCOMPASS

日本でテレワークやハイブリッド勤務が進まない理由として、日本は製造業や卸売・小売業、運輸業など現場での業務を必要としテレワークを導入できる業種が少ない点はもちろんですが、中小企業が多く、設備やツールを整えるのに多大なコストがかかるのもあります。

しかしテレワークには経済効果も見込まれ、主に通勤時間の削減は注目されており、実際に公共交通機関を利用して通勤している平均時間の84分の経済や機会損失があり、テレワークで経済にプラスの効果があるとされています。

日本でも、みずほ総合研究所2018年の調査では、テレワークにより通勤時間を削減することで、GDPを約4,300億円押し上げる効果があると推計されています。

コロナを機会ととらえ物事を変革していくことも重要だと、シンガポールにいると実感します。

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