イタリアの子育て支援は充実している?少子化に歯止めをかける策を探る①
働き盛りの女性たちにとって、少子化問題は現実の課題です。経済的不安やキャリアへの悩みが子育てを消極的にする要因となります。本記事では、イタリアの現状と経済的支援策に焦点を当て、少子化問題に取り組む取り組みを紹介します。イタリアの子育て支援策の一部として、児童手当や保育費補助などの経済的支援が存在します。これらの政策を活用することで、女性が安心して子どもを産み育てる環境が整っていると考えられます。少子化対策の重要性と、イタリアがどのような環境を提供しているのかを探ります。
イタリアの子育て支援は充実している?少子化に歯止めをかける策を探る①
著者:イタリアgram fellow Nakamura Hiromi
公開日:2023年5月30日
データで見る、少子化が進むイタリア
多くの先進国で少子化が進み、各国でさまざまな対策が講じられていますが、イタリアにおいても少子化問題は他人事ではありません。2022年の総人口はおよそ5900万人、うち510万人が外国人です。出生数はおよそ40万人、2021年と比べて1.9%の落ち込みが見られました。合計特殊出生率は1.24と、日本の1.27と比べても大きな差はありません。
参考出典
◇Il Sole 24 Ore:
https://www.ilsole24ore.com/art/istat-nascite-2022-ancora-calo-19percento-popolazione-sotto-59-milioni-aumenta-l-arrivo-immigrati-AEmV8C7C)
◇ISTAT: https://webpub.istat.it/progetto/storia-demografica-italia/documento
◇ISTAT: https://www.istat.it/it/files//2023/04/indicatori-anno-2022.pdf
◇東洋経済オンライン: https://toyokeizai.net/articles/-/641143
イタリア版子育て支援策とは?
現在イタリアには、子どもを持つ家庭を対象にさまざまな経済的支援が存在します。その中で、実際に筆者が恩恵を受けているものを挙げてみました。
・Assegno unico e universale (児童手当)
日本にも存在する、いわゆる「児童手当」のことです。1人当たり最低54.1ユーロ(約8100円)、そして189.2ユーロ(約28300円)を上限とし、子どもの人数や経済状況により増減します。障害児を持つ家庭や4人以上の子を持つ家庭、1歳未満の子どもを持つ家庭、母親が21歳未満の家庭などで、支給額が増える仕組みになっているのが特徴的です。
具体例を挙げると、筆者は毎月659.50ユーロ(約98900円)の手当てを受け取っています。わが家には3歳以上中学生未満の子どもが3人いますが、これを日本の政策に当てはめると、受け取れる金額は35000円で約2.8倍の開きがあります。
(参考出典:内閣府 https://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/annai.html)
・Bonus asilo nido (保育費の補助)
こちらは、3歳以下の子どもを対象とした保育園費用の補助支援です。重度の慢性疾患のため通園ができない子どもを自宅保育する場合にも適用されます。
年間3000ユーロ(約450000円)を上限とし、保育費を納めたのちに返還されるものです。核家族の経済状況を示すISEE(Indicatore della Situazione Economica Equivalente)と呼ばれる書類を提出することで、それぞれに見合った返金額が決定します。わが家の場合は、上限3000ユーロを11ヶ月(8月は対象外)で割った月額上限272.72ユーロ(約40900円)が返還の対象となっています。
・Nidi Gratis(保育園費の無償化)
上記のBonus asilo nidoと併用することで、保育園費を無償化させる政策です。Bonus asilo nidoでカバーしきれない月々の差額を、国が負担してくれます。例を挙げると、毎月の保育費が350ユーロであるとして、請求上限はBonus asilo nido適用でのちに返還される272.72ユーロまで。つまり、実質0ユーロとなるわけです。
しかし、希望すれば誰でも受けられるわけではありません。支援をより必要とする家庭を優先するため経済状況を示すISEEの提出が必須で、その上限額も設定されています。
身近には感じられない少子化の波
筆者には現在3人の子どもがおり、それぞれが保育園、幼稚園、小学校に通っています。同級生は、兄弟がいる家庭が大半を占め、ひとりっ子は実は少数。さらに、子育てをしている友人の多くが2人以上の子を持ち、筆者の周りを見る限りでは、本当に少子化が進んでいるのだろうかと疑問に思うことが多々あります。たまたま筆者の周りにひとりっ子が少ないだけなのかもしれませんが、そこまで少子化が深刻であるような実感がないのが正直なところです。
まとめ
イタリアの子育て支援政策の一部をご紹介しましたが、これらはすでに子どもを持つ家庭が対象です。
少子化を食い止めるために必要なことは、やはり出生数を増やすこと。まずは、子どもを望むカップルが安心して妊娠・出産を選択できる社会づくりが大事なのではないでしょうか。
イタリアには経済状況や婚姻関係に関わらず、子どもを産み育てることができる環境があると、筆者は考えています。次回はその理由についてお話します。
※1ユーロ150円で計算