家庭教師費用が月50万円を超える?!

先日、朝日新聞デジタルの世界の教育熱についての記事で、シンガポールの家庭のケースが紹介されていました。記事によると月額で50万円を超えるケースもあるとか⁉
そこで今回は、シンガポールでの教育熱について、できる限り詳しく解説しようと思います。
家庭教師費用が月50万円を超える?!
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年 2月14日
教育熱心なシンガポール人

シンガポールの子どもの教育費は非常に高額ですが、2018年の家計の支出データを見ると、教育費用は5.7%と家計に占める割合は増加しており、ひと月当たりの教育費用の平均は339シンガポールドル(約3.8万円)となっています。
また、シンガポールの家庭の約82%が家庭教師を利用しており、この費用も教育費の大部分を占めています。
シンガポールの教育制度の特徴
シンガポールの教育制度は非常に厳格で、世界的にも高い水準を維持しています。国際学力調査などの国際テストでもシンガポールの学生は常に上位に位置しています。
ストリーミング制度
ストリーミング制度は、学生が小学校から中学校に進学する際に学業成績に基づいて異なる学習グループ(ストリーム)に振り分けられるシステムです。
シンガポールではストリーミング制度が40年以上にわたり実施されていて、小学校の段階で将来の進路が左右されてしまいます。
このため親たちは子どもの成績向上に大きなプレッシャーを感じており、それが塾や家庭教師への依存を高めています。
ストリーミング制度の功罪
この制度の利点としては、学力に応じて適切な教育内容を提供することで、全ての学生にとって最適な学習環境を整えることを可能にしています。優秀な学生はより高度な内容を学び、進度が遅い学生は基礎的な学習を強化できます。
また、特に優秀な学生がエクスプレスコースを経て大学や専門学校への進学準備を早期に始めることができ、進学率向上に貢献しています。
一方、12歳という若い段階で学力に基づいて将来が大きく決まってしまうという懸念が古くからあり、成績が芳しくない学生が早い段階で「劣等生」というレッテルを貼られてしまい、学習意欲が低下するリスクが指摘されていました。さらに、学力だけでなく家庭環境や経済状況によっても進路が左右され、その結果として教育格差が生じてしまう可能性が指摘されていました。
過熱化した競争の背景
シンガポールでは教育が社会的ステータスやキャリアの成功に直結すると考えられています。特にエリート職に就くためには優れた学業成績や名門校への進学が重要視されるので、親たちは子どもに多大な投資を行います。
さらに、東アジアの文化圏に見られる「学歴主義」も影響していて、中国系住民が大多数を占めるので、伝統的な儒教的価値観から教育を通じて成功を収めることが重要視されています。
格差の是正をどうしていくのか
現在のシンガポールでは、高額な家庭教師を雇える裕福な家庭と、そうでない家庭との間に教育格差が広がって競争の激化が生じています。
ストリーミング制度は徐々に廃止されていくことが決定しましたが、塾や家庭教師に対する依存度が高まるにつれて、経済的な背景による教育格差はさらに広がり、これがシンガポールの社会問題として注目されています。
今後もオンライン教育やデジタル技術の進展が教育環境を変えることが予想されている一方で、競争激化や格差拡大は続いていくと予想されます。
政府がどのように対処していくのかを見守っていきたいと思います。